共同代表を辞任した維新・前原氏と、立憲・城井氏の出処進退の違い

 先月20日の参院選は、ほとんどの既存政党にとって厳しい結果となった。新興勢力の参政党と国民民主党が躍進した一方で、自民党から、共産党に至る既存政党は大きく得票数を減らした。野党の日本維新の会と立憲民主党も低迷したが、共通点の多い2人の政治家の責任の取り方は似て非なるもののようだ。

潔く代表代行から降りた前原氏

前原誠司氏
前原誠司氏

 与党・自民党内では「石破おろし」が起こり、先日の両院議員懇談会は2時間の予定が4時間半の長丁場になった。石破茂首相を支える森山裕幹事長による水面下の工作で、沈静化が図られたものの、いったん広がった流れはそう止まるものではないだろう。権力の座を握る一点で思想の異なる政治家が合体した自民党は分裂の方向に向かっている。

 こうした状況において、2010年代「第3極」として、もてはやされた日本維新の会も、参院選では地盤の関西以外で議席を獲得できなかった。議席数としては7議席を獲得し、目標の「改選6議席以上」をかろうじて達成した。しかし比例票は前回の約784万票から約437万票に減らした。

 その責任を取るかたちで、前原誠司共同代表らは、4日夜、党の非公式幹部会合で参院選の結果を受け、引責辞任する意向を吉村洋文代表(大阪府知事)に伝えた。岩谷良平幹事長、青柳仁士政調会長らも退任するという。

 前原氏は、「人心を一新して、もう一度挙党態勢をつくるということが大事であるという思いに至りました」と述べたが、前原氏は旧民主党からの移籍組であり、旧執行部の馬場伸幸氏らとは折り合いがよくなかった。

 後任を決める共同代表選は8日に行われるが、前幹事長・藤田文武氏が立候補の意向を固めたようだ。藤田氏と馬場氏は近く自民党とのパイプもある。現在の吉村=前原体制は、非自民野党で、これに対する不満がくすぶっており、前原氏の辞任は、そうした不満を抑える狙いもあるのだろう。

 いずれにしても己の立場に固執し、だらだらと続ける政治家が多いなかで、前原氏の姿勢は政治家としてまっとうなものだ。

野党第一党にあぐらをかいた結果

城井崇氏
城井崇氏

 前原氏とかつて旧民主党でともにし、松下政経塾出身という共通点があるのが、立憲福岡県連の前代表・城井崇氏である。参院選の結果を受けて引責辞任するという点は共通するように見えるが、県連内では「9月の総括も待たずに辞めるのは無責任だ」との声が上がっている。

 福岡県第2の都市・北九州市において野党議席を守っている(9区は無所属で旧民主出身の緒方林太郎氏)ことは、城井氏に信頼を寄せる地元有権者がいるからで、市議会では多数を握る自民党もなかなか攻め込むことができないでいる。このことの意味は大きく、福岡県が自民党一強とはいえないのは北九州市の国政議席が9区・10区とも非自民であるからだ。

 しかし、県全体となると立憲の影響力がおよばない地域もある。実際、県内各議会をみると立憲議員ゼロの議会が多い。2017年の結党からの8年間いったい何をしてきたのだろうか。国政選挙での実働部隊を担う地方議員をつくれず、労働組合や反自民の風に頼ったことこそ誤りだろう。

 城井氏は、元八女市長・野田国義氏であれば、地方議員がほとんどおらず地方組織が脆弱(ぜいじゃく)な県南地域は何とかなると考えていたのだろう。

 今回の参院選で敗れた理由を社民党が擁立したことに求め、日教組の票が社民に流れたからなどと責任転嫁する者がいるようだが、複数区の福岡に候補者を擁立する権利は社民党にはある。

 何よりも、福岡の社民党の関係者には立憲への不信感が根強く残っている。連合議員団の一員でありながら、まともに発言権もない状況に置かれている。かつては炭鉱労働運動を背景に、平成初期まで革新知事を輩出し、「社会党王国」と呼ばれた意地がある。同党は比例区にラサール石井氏を擁立して辛くも政党要件を維持した。まさに「生死をかけての戦い」であった。社民と同程度の必死さが立憲にはあったのだろうか。そのことこそ問われるべきものだ。

 党内外の右にも左にも配慮し中途半端な対応をしてきたのが立憲であり、野田氏の3選を認めたのは他ならぬ城井氏である。一昨年から当社では、野田氏の3選に疑問を呈する問題提起を行い、立憲内部からの多くの声を紹介した。だが城井氏は黙殺した。

 もちろん城井氏1人のみの責任ではなく、これまでの組織体質の結果であるが、自己総括も曖昧なまま代表から降りるのは、問題の根っこは残ったままになる。選挙後、立憲の若手議員を中心に強い危機感の声を聞いた。

 城井氏の辞任を受け、代表代行を務めるのは、前原・城井両氏と同じく松下政経塾出身の稲富修二氏である。今後の取り組みに期待したい。

 松下幸之助氏は「政治家は、国家国民、世界人類の幸せを実現せんといかん。そういう尊い使命がある」と塾生らを前に語ったという。このことを忘れた政治家は、国政・地方問わず政界から去るべきである。

【近藤将勝】

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