河村たかし氏、日本保守党に分党を要求~百田尚樹代表との泥沼の対立

 元名古屋市長の河村たかし衆議院議員が率いる地域政党「減税日本」が、日本保守党から通告された「特別友党関係」の解消を決定した。減税日本は9月30日、「通告は一方的だ」として保守党に抗議しており、河村氏は保守党共同代表を退任する。今回の顛末の背景には何があるのか。

SNSでの情報拡散が対立を助長

 保守党において百田尚樹代表と河村たかし氏は、党運営をめぐって対立してきた。特に政党交付金の配分問題が大きな要因だったとみられる。こうした党内の対立がSNS上で拡散され、さらに対立を煽る一因となったことは否めない。

百田代表(左)と有本事務総長(右)
百田代表(左)と有本事務総長(右)

 百田氏と河村氏の対立は離党者を出すまでに発展した。
 保守党の竹上裕子衆議院議員(比例東海)は先月24日に記者会見を開き、離党する意向を表明した(9月19日離党届提出)。竹上氏は河村氏に近い。竹上氏は「公設秘書が指示に従わなかった」などと述べたが、その秘書は党が任命した人物だった。

 百田氏は9月30日の会見で竹上氏の議員辞職を要求。「筋として党がとった議席であり、離党するなら議席を返すべき」と主張。「有権者の気持ちも踏みにじるもので人として間違っている」と強く批判した。

 百田氏の主張にも理はある。竹上氏は小選挙区ではなく、政党名を記載する東海ブロック比例代表で当選している。「比例名簿1位であった竹上氏は日本保守党で当選したのだから議員を辞職するのが筋ではないか」というのはもっともである。

 現時点で保守党は離党届を正式に受理していないという。河村氏の動きは竹上氏の離党に連動したものであり、河村氏も離党を示唆している。さらに百田代表に対して文書(PDF)で保守党の「特別友党関係」の解消などに反論する通知を行った。

百田尚樹氏宛の河村たかし氏の回答書
百田尚樹氏宛の河村たかし氏の回答書
※クリックで全文表示(PDF)

 日本保守党はその名の通り保守主義を掲げ、安倍晋三元首相の事件後に「自民党が左傾化した」として、いわゆる岩盤保守層を取り込んで拡大してきた。しかし最近では、『WiLL』や『月刊Hanada』といった保守系論壇誌で批判記事が相次いでいる。有本香事務総長は、8年におよんだ『月刊Hanada』での連載を打ち切っている。両誌は以前、百田氏や有本氏と近い関係にあり、安倍政権時代にはインタビューや論考を多く掲載していた。保守党結成時も両誌が後押ししたといえる。

減税日本離脱の保守党への影響

 内紛はどの組織でもあることだが、意見対立をSNSや動画で外部に明らかにしてしまったことが問題をこじらせた。7月の参院選で百田氏が博多駅前で行った演説は歯切れがよく、多くの支持を集めていた。一方で、内部に対して攻撃的な言動も見られ、河村氏が「関係継続は困難」と判断したのだろう。

 問題は、減税日本が愛知県を中心に東海地方で勢力を有し、保守党にとって痛手になりかねない点である。減税日本は保守党の地方組織の拡大に寄与していた。新興政党は自民党や立憲民主党といった既成政党と比較して地方組織が脆弱である。社民党が今回も辛うじて政党要件を維持できたのは、旧社会党時代からの地方組織と地方議員の存在が大きい。選挙実働は一般ボランティアだけでは難しく、地域に根差した地方議員や支部の活動が不可欠である。

 河村氏は今回の対応について、減税日本所属の愛知県議や名古屋市議らと協議したうえで結論を出している。離党ではなく、分党による政党助成金の分割を求めていくようだ。河村氏の思想や旧民主党出身という経歴を踏まえると、同じく東海地方に強い地盤を持つ国民民主党との連携も視野に入るかもしれない。

 河村氏の貢献を百田氏が評価していれば、おそらく今回の泥仕合ともいえる決定的な対立には至らなかったのではないか。

【近藤将勝】

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