福岡県議会・田川用地取得問題で香原・吉松両元議長が再発防止を要望

 福岡県の出先機関である田川県土整備事務所が、県道整備にともなって必要とした土地を不適切な価格で地権者から取得した問題について、9月24日に開催された福岡県議会県土整備委員会において複数の議員から質問が行われた。県側は再発防止について「職員の士気にかかわる問題であり、本庁と一体となって取り組む」などと答弁した。

 香原勝司県議(自民党県議団・直方市)は「県土整備部としてしっかり反省をしてもらう必要がある」と指摘し、「知事答弁もあったように職員さんの士気が低下し、やる気をなくすことが問題で、心身の負担も大きい。職員さんが仕事をやりやすくする環境づくりが必要ではないか」と述べた。

 香原議員の質疑に対し、担当課長は地権者の理解を得られない状況があることを説明し、「早く事業を進めなければならないとのプレッシャーが常にある」と、聞き取りに基づく職員の声を述べた。

 続いて、吉松源昭県議(自由と繁栄の会・糟屋郡)も質問に立ち、「新聞報道によると『政治的有力団体』の幹部だったと報道があり、そういったことも合わせて県民はやはり忖度があったのではないかと疑念を抱かれる。そういう疑念を抱かれることがないようしっかりとやっていただきたい」と述べたうえで、「今回、不法ではなかったのですぐ報告がなかったというが、速やかに関係委員会に報告いただきたい」と要望した。

 また、「道路開通による地価の上昇が予想され、現時点での価格では売却したくないとの地権者の思いも理解できる」とし、「将来価格が上がった場合、還元する契約や制度設計が現行法の下ではできないのか」と質問。これに対し県側は、国の規定に基づくもので県独自では難しいと答弁した。

 なお、吉松県議が述べた政治的有力団体とは部落解放同盟のことで、当該事案を最初に報じた毎日新聞は、地権者が同団体の幹部を務める人物であると報じていた。

 長年の差別解消の活動を通じて生活環境の向上が進み、日本社会の人権意識が向上してきた。一方、一部であるが、さまざまな事業をめぐる問題などもあったことも事実だ。こうした問題は、長年の取り組みに水を差すことになりかねない。服部誠太郎知事も「忖度はなかった」と述べているが、今回の件にとどまらず、疑念をもたれないよう行政の主体性を発揮した対応が求められる。

【近藤将勝】

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