旧統一教会、元信者ら3人に解決金約5,000万円を支払うことで初の調停成立

 韓国で旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の韓鶴子総裁が尹前大統領夫人などへの金品提供の容疑で逮捕され韓国政界を揺るがす中、日本においても動きがあった。

 教団の献金被害に取り組んでいる全国統一教会被害対策弁護団は2日、損害賠償や慰謝料を求め東京地裁に集団で申し立てを行った調停が、初めて成立したことを明らかにした。教団側が元信者ら3人に対して計5千数百万円を支払うという。

 弁護団は2023年から、教団に対して献金や印鑑・つぼなどの購入に要した金銭の返還を求める集団交渉を行ってきたが、教団側が応じないため、調停となった。現時点で194人の被害者が参加しており、総請求額は、約60億円に上る。

 被害者には高齢者も多く、教団への多額の献金で生活に困窮する状況のなか、早期の解決が望まれていた。今年4月に裁判所より調停案が示されたが、教団側との間で金額が折り合わず、協議が行われてきた。今回の解決金の金額は、教団側が受け取ったと証拠などから認定できる金額を裁判所が提示した金額で、元信者・教団双方が受け入れた。

 旧統一教会をめぐっては、東京地裁が3月に解散命令を出し、教団側が即時抗告を行ったことで現在東京高裁において審理が続いている。なお所管する文化庁は旧統一教会を対象とした「指定宗教法人」の清算に関する指針案を有識者による検討会がまとめており、今月、正式に発表されることとなっている。

 危機感を強める教団は先月15日、福岡市内で田中富広会長が出席して、解散命令に反対する集会とデモ行進を行うなど「国による宗教弾圧」という認識で戦う姿勢を明らかにしている。

 問題は、仮に解散命令が確定した場合、他の宗教法人などへの財産移管、隠匿の恐れがあり、元信者が被害を申し立てても補償を受けられない可能性がある点だ。また、今回、教団が裁判所の提示に応じた背景には、高裁での解散命令確定が近いとの見方があり、対外的に誠実な姿勢を示したい意図があるとの指摘もある。

 教団の動向に注目が集まるなか、今回の調停成立によって被害救済の進展が期待される。

【近藤将勝】

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