自民党総裁選、高市早苗氏を新総裁に選出 「自身のワークライフバランスを捨てる」と覚悟示す

 石破茂首相の辞任にともない後継を選ぶ自民党総裁選は4日午後、投開票が行われた。5人の立候補者のうち上位2人による決選投票となったが、高市早苗元総務大臣が小泉進次郎農林水産大臣を破り、第29代自民党総裁に選出された。1955年の結党以来、女性が総裁となるのは初めて。

今回も多かった党員支持

 今回の総裁選は、自民党内の代理戦争の様相もあったが、動向が注目された麻生太郎最高顧問は、決選投票で高市氏が残った場合、高市氏を支持するよう同派議員に伝えていたという。小泉氏の陣営には麻生氏との折り合いがよくない議員がいることや、保守色の強い高市氏を総裁にすることで新興政党に流れた保守層の支持を取り戻す狙いがあったとされる。

 決選投票での獲得票数は次の通り。高市氏は185票、小泉氏は156票。また全国都道府県の地方票は、福岡をはじめ高市氏が多かった。

 投票結果発表後行われた両院議員総会において新総裁に選出された高市氏が挨拶し「人数も少ないですから全員に馬車馬のように働いてもらう。私自身もワークライフバランスという言葉を捨てる」と訴えた。また「嬉しいよりこれからが大変で、全世代総力結集で、全員参加で頑張らなければ立て直せない」と少数与党の状況の厳しさを語った。

 時代に一見逆行しているようにも見える高市氏の発言であるが、国のトップとして国家・国民のために私心を捨てて取り組む覚悟をもたなければ、政治の信頼回復は覚束ない。

現実的な外交となるか

 高市氏は松下政経塾出身で、英国初の女性首相マーガレット・サッチャーを尊敬していることでも知られる。8月15日に靖国神社に閣僚として参拝するなど保守色の信条が強い。決選投票の演説でも国益を守ることを力説し、討論会において地元奈良で保護されている鹿が「外国人観光客に蹴られている」と発言し物議を醸した。外国人政策の厳格化を今後進めるとみられる。一方で外交面は、台湾や東南アジア諸国をはじめとするインド・太平洋地域の自由主義陣営との連携を進めるとみられるが、自身の保守的政治信条を抑制しつつ、高市氏の政治信条を警戒する中国や韓国との対話も行うことになるだろう。

 高市氏を支持してきた福岡市内の自民党員は「久しぶりに胸のすく思いがした。自民党が左寄りになっているが、ぜひ高市さんの信念を貫いてほしい」と語った。

 高市氏は、先月28日に元フジテレビキャスターの反町理氏のYouTube番組に出演し、参政党など保守系新党との政策協議に前向きな姿勢を示しており、今後の政権運営も注目される。

 今後、党役員人事や連立枠組みの拡大、組閣人事が焦点となるが、幹事長ポストをどうするのか。小泉氏の他、加藤勝信財務大臣、萩生田光一氏らの名前も取りざたされている。高市氏の当選に力を借りた麻生氏の意向も無視できないだろう。いずれにしても石破執行部(政権)とは異なる陣容になることが予想される。

 今後のスケジュールは次の通り。10月6日に党役員人事、これに並行して連立の枠組みの協議も想定される。15日臨時国会を召集し、総理指名選挙が行われ、組閣人事が行われる。今月27日を軸にトランプ大統領の来日も予定されており、新総裁となった高市氏は休む間もない日々となる。

【近藤将勝】

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