立憲・野田代表「高市氏は積極財政」と、自身の財務省寄りの姿勢を表明

立憲民主党タウンミーティング

 立憲民主党の野田佳彦代表は5日夜、福岡市内で開催された同党のタウンミーティングで講演し、自民党総裁選で派閥単位の動きが表面化したことについて、「解党的出直しと言っている割に、解党的な動きではまったくない」と指摘した。

 野田氏は7月の参院選に言及し、「福岡県は野田国義さんが立候補して皆さまにもご支援いただきましたけれども、残念ながら定数差のなかの当選圏に入ることができなかった。痛恨の極みだ」と述べ、支持者らを前に党勢拡大の必要性を訴えた。

 自民党総裁選で高市早苗氏が総裁に選出されたことについては、「高市さんが自民党の総裁になられた。自民党の総裁としては初めての女性であり、ガラスの壁は破ったので党内改革に力を尽くしてほしい」とエールを送りつつ、鈴木俊一氏を幹事長に任命する話が浮上していることについて、麻生氏の名前を出したうえで「高市さんは後ろの大物を気にしながら物事を進めることができるのか。とても心配だ」と語った。

 高市氏の総裁選勝利に保守層の投票行動が大きく作用したことについては、「世の中は、90万人の世論とは違う。平和を志向し、格差を是正してほしいという中道のほうが多いのではないか」と述べ、右寄りに傾斜する傾向を牽制した。

 政局的な話題だけでなく、政策面についても話がおよび、物価高に対して与党が何ら対策を講じないことについて「食卓インフレという状況に3カ月も何もやらない。こういう政治を許してはいけない」と強調した。

 タウンミーティング後、野田氏は記者団の取材に応じ、「給付付き税額控除について与党との協議会で協議していきたい」と述べる一方、「高市さんの場合はね、積極財政論なので、給付付き税額控除でも食料品ゼロ税率でも、赤字国債でいいと言われてしまったら、それは我々とは立場が異なる」と述べ、立憲は財務省寄りの立場にあることを鮮明にした。

立憲民主党 野田佳彦 代表 今回の野田氏の講演は、立憲民主党福岡県第1区総支部の主催で行われた。総支部長・丸尾圭祐氏が繰り上げ当選したことを受けて行われたが、気になる点が複数あった。

 野党第一党の立憲民主党の代表が、財務省の金融財政政策に近い立場を明らかにしたことで、自民党内の積極財政派ばかりでなく、積極財政論を唱える参政党や国民民主党の党勢が勢いづくのではないだろうか。財務省解体デモに象徴されるように、減税を求める多くの国民の声を「右のポピュリズム」と呼ぶ野田氏の姿勢からは、民に寄り添う姿勢が薄いように感じられた。

 もう1点気になったのは、地元記者よりも東京から同行してきた野田氏の番記者の質問が多かったことである。政治家の発言を拾って報じ、政局を追うことが政治部記者の仕事とされているが、国家・国民のために報道の役割とは何かを、今一度考えるべきではないだろうか。

 派閥温存や麻生太郎氏の動きを挙げて、自民党の解党的出直しはまやかしだと批判した野田氏であるが、立憲民主党こそ解党的出直しを求められている。

【近藤将勝】

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