21日召集の臨時国会で、自民・維新による高市政権発足へ

 自民党と日本維新の会は、20日午後に予定される政策協議で合意する見通しとなった。高市早苗自民党総裁と吉村洋文日本維新の会代表(大阪府知事)が政権合意書に署名することになる。これにより、臨時国会初日(21日)に行われる首相指名選挙で、維新は高市氏に投票し、高市氏が憲政史上初の女性首相に選出される。

維新は閣外協力に限定

 自民党は、昨秋の衆院選と今夏の参院選で衆参いずれにおいても少数与党となっている。さらに公明党が連立から離脱したことで、新たな連立パートナーの確保が必要となった。そこで日本維新の会や国民民主党に白羽の矢が立ったが、国民は、支持団体の連合の反対もあり連立参加は難しい。一方、維新は特定の支持団体をもたず、自民に近い政策も少なくない。

 維新は19日、党本部で常任役員会を開き、自民との連立政権樹立に向けて協議を行った。反対意見はなく、吉村代表らに対応を一任した。

 自民党会派の衆議院議席は196議席で、維新の35議席が加わると231議席となり、過半数の233議席まで残り2議席となる。

 ただ、自民・維新の間には温度差がある。高市氏は新政権の基盤を固めるため、維新に対して「閣内協力」を提案した。連立に入った以上、公明同様、与党として一蓮托生であってほしいというのが本音だ。

 しかし維新では自民と合意した場合でも、合意が順守されるのか見極める必要があるとして、閣外協力とすべきとの声が多い。維新は支持者に反自民層もいる。自民と連立を組んだ新自由クラブや保守新党、旧社会党のようにいずれ消滅する可能性も秘めており、世論の反応含めて慎重に判断したいようだ。

 維新は閣僚や副大臣・政務官は出さず、遠藤敬・国対委員長を首相補佐官と兼務させる人事を検討している。遠藤氏は与野党双方にパイプがあり、与党と官邸をつなぐ調整役として期待されている。

議員定数削減に与野党反発

 自民と維新の協議のなかで、維新が要求した12項目のうち、企業・団体献金の規制強化や食料品の消費税ゼロに自民が応じないなか、国会議員定数削減を吉村代表が条件とした。自民は受け入れる方針だが、野党だけでなく自民党内からも反発が出ている。

 自民党の逢沢一郎・選挙制度調査会長は16日、自身のX(旧・twitter)を更新し、維新が政策協議のなかで求めている国会議員定数削減について「論外」と批判した。

 吉村氏は、衆議院定数の約1割に当たる50人の削減を主張しているが、公明党をはじめ多くの野党にとって死活問題となるため、維新が求める年内実現は容易ではない。

 自民にとって維新との連立成立のためにある程度要求を飲まざるを得ないが、議員定数だけでなく、何かと要求のハードルを上げて、連立離脱をちらつかせて圧力をかけることが予想される。高市氏は総裁選勝利で力を借りた麻生氏だけでなく、維新にも気を遣う場面も出てくるだろう。

 高市政権の発足はほぼ確実とみられるが、岸田・石破両政権によるリベラル路線に不満を持つ保守層は歓迎ムードだ。

 本日午後6時半より東京・永田町にある星稜会館において保守系グループ主催による「高市早苗総裁就任記念国民の集い」が開催される。呼びかけ人はジャーナリストの櫻井よしこ氏や、元内閣官房参与の藤井聡京都大学大学院教授、谷口智彦日本会議会長らで、フィクション作家の門田隆将氏がお祝いのスピーチを行うほか、国会議員などの挨拶も予定されている。

 保守層待望の高市政権であるが、物価高対策や外交など国内外の課題は山積しており、難しい舵取りが求められることは間違いない。

【近藤将勝】

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