山田工務店(福岡市博多区)が『建築ボリューム検討アプリ』を無償公開

誰でも使える建築アプリを無償公開

 福岡市博多区の建設会社・(株)山田工務店(山田邦彦代表)が、建築可能な建物のボリューム(規模)を簡易的に検討できる『建築ボリューム検討アプリ』の無償提供を11月10日からはじめた。

 アプリはGoogleのAI「Gemini」を活用して開発されており、Googleアカウントさえあれば特別なソフトのインストールなども不要で、初回だけ山田工務店のホームページから利用申請を行えば、その後はインターネットでアプリのページを開くだけでいつでも利用することができる。

 建築プロジェクト初期の「ボリューム検討」は、土地の条件や建築基準法を踏まえて、建物の最大規模を算定する必須工程だ。従来は建築士など専門家の知識を要したが、このアプリを利用すると、敷地情報を入力するだけで3Dモデルが自動生成され、誰でも簡単に建物の規模感をつかむことができる。建ぺい率や容積率、道路斜線規制など基本法規に対応しており、面積や階数などの数値はリアルタイムで更新できる。また、結果をCSVやDXF形式で出力して利用することもできる。

建築ボリューム検討アプリの画面
建築ボリューム検討アプリの画面
(株)山田工務店の代表取締役社長でアプリ開発者の山田邦彦氏
(株)山田工務店の代表取締役社長で
アプリ開発者の
山田邦彦氏

 アプリ開発の動機について山田邦彦代表は、専門知識をもたない営業職が苦労しているのを見て開発を思い立ったという。開発したのは山田氏本人。山田氏はプログラミングの知識をまったくもたないが、AI・Geminiとのチャットを通して、試行錯誤を繰り返しながら独力でアプリの開発を行った。

 また、開発したアプリを無償公開することについて山田氏は、「中小企業の人手不足解消のために有効な手段となる、AI活用の容易さを体感してほしいとの思いから無償提供を決めた」と語る。アプリは専門知識がなくても直感的に利用できることから、学生や子どもに遊び感覚で利用してもらい、建築に興味をもつきっかけになればと考えている。英語表示にも対応しており、今後、日本での活躍が見込まれる外国人材の利用も想定する。

アプリはダウンロード自由、業務利用自由、開発自由

 さらに本アプリについて、山田氏は無償公開するだけでなく、ダウンロードも、業務上での利用も、開発も制限なく配布することに決めた(ただし、アプリそのものを有償販売することは認めていない)。

 山田氏は「勝手に使って、好きなように開発してほしい」と語る。このような判断をした理由は、ユーザーの自主的な開発を促すことで、ユーザーコミュニティによる継続的な改善を期待するためだ。そのうえで、立ち遅れている日本の建築・建設業界のDXに対する心理的ハードルを下げる一助になればと山田氏は考える。プログラミング経験のない山田氏自身が、AIとの対話だけでアプリをつくり上げた実例が示す通り、専門知識がなくても開発に参加できる時代への転換を、業界関係者をはじめ多くの人に知ってほしいと山田氏は考えている。そして、かつて無償JW-CADが普及を後押しした歴史になぞらえて、多くのユーザーが簡単に建築DXに触れて、DX促進につながっていくことを期待している。

<アプリの概要>
〔名称〕
建築ボリューム検討アプリ
〔提供元〕
(株)山田工務店
〔提供形態〕
無償
〔主な機能〕
敷地情報・法規制入力、3Dボリュームの自動生成、建築面積・延床面積・建ぺい率・容積率等のリアルタイム分析、CSV形式でのレポート出力機能、DXF形式での3Dビュー出力機能
〔注意事項〕
本アプリで表示される分析結果や3Dボリュームは、あくまで概略検討であり検討時の補助的な役割を目的としたものです。実際の設計・申請にあたっては、必ず建築士などの専門家による詳細な確認と検討を行ってください。

<アプリの利用申請>
山田工務店「お知らせ」からリリース発表のページをご覧ください。

<アプリについての問い合わせ先>
(株)山田工務店
福岡市博多区対馬小路10-22
TEL:092-271-2706
メール:kunihiko.yamada@yamada-corp.net
山田工務店HP:https://yamada-corp.net/

【寺村朋輝】

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