【クローズアップ】FIT終了後を見据えた「発電所再生ビジネス」へ 芝浦グループが描くメガソーラーの未来戦略

芝浦グループホールディングス(株)

 総出力約115MWのメガソーラー実績で業界にたしかな存在感を示す芝浦グループホールディングス。太陽光発電事業において電力供給という社会的責任をはたすことを目的に、蓄積されたノウハウをベースに能力低下が予測される発電所の再生を図り、保有・管理する発電施設の能力向上に取り組んでいる。一方、FITに頼らないNon-FIT・FIP案件においても、社会状況の変化を見据えた新たな事業展開を進めている。

既存発電所を磨き上げる
再生経営モデル

 FIT制度の満了期が控える今、FIT終了後の太陽光発電事業の在り方が模索されている。土地の価格や建築費、金利が高騰するなかで、芝浦グループは将来を見据え、再生に重きを置く方針だ。新しい施設を増やすよりも、すでに持つ発電所をどれだけ活かせるかという「既存経営資源の高度利用化」に基づき、運転・改修・資金のサイクルを計画的に設計し、発電所の価値を長期的に高めていく。

 中心となるのは、パワーコンディショナの計画的なオーバーホールや機器の入れ替えである。設備を順次更新していくことで、安定した運転と発電量の維持を実現。資金の面では返済計画を柔軟に設計し、運転後期には新たな改修や再投資につながる余力を確保。その循環を通じて、発電所を「磨きながら使い続ける」仕組みを築こうとしている。

 新地洋和社長はいう。「メンテナンスと改修を事業の中心に据える。FITが終わっても、運転と手入れ次第で長期運用を目指す」。その言葉の通り、同社の掲げるこの目標は単なる理想ではなく、耐久性を高めた設計、精密な点検、資金計画のバランスといった、複数の実務レイヤーの積み上げで成立する“運用モデル”だ。

劣化を再生へ
発電所を蘇らせる技術力

代表取締役社長兼CEO 新地洋和 氏
代表取締役社長兼CEO 新地洋和 氏

    太陽光発電業界は今、出力抑制、保険料高騰、廃棄費用積立、異常気象などの問題に直面している。運転開始からおよそ10年が経過した発電所ではこの負担が一気に表面化し、十分なメンテナンス体制が確保されていなかったことによって、故障の見落としや出力低下を招くなどの悪循環が起きる。実際に発電量の低下が目に見えて進むケースも少なくない。

 芝浦グループでは自社メンテナンスチームが蓄積した技術と経験を基に、劣化発電所の診断・改修・再稼働を一貫して担う。さらに、雷など突発的な事故やトラブルにも迅速に対応し、安定稼働の早期復旧を実現している。

 主な再生メニューは、①雷など突発停止に強い設備への改修更新、②配線や接続部の詳細診断によるロス除去、③劣化度に応じた投資計画の最適化など。こうした取り組みで培ったノウハウを、自社が管理運営する太陽光発電所にとどまらず、他社発電所や地域のエネルギー基盤の再生にも広げていく。

 “再生の力”を通じて、国内の再エネインフラを次世代へつなぐ持続可能な循環モデルの実現を目指している。

制度依存を超える多層的運用構想

 次に芝浦グループが見据えるのは、FIT依存からの脱却だ。市場価格と連動するFIP制度は収益変動が大きく、安定運用には知見が求められる。新地社長は「拙速な全面展開は行わない」と明言し、段階的な学習投資を通じて市場動向を見定めながら、次の事業展開に向けた方向性を慎重に描く姿勢を示している。

 第一歩は九州の自社発電所での実証導入だ。FIP+蓄電池を試験運用し、価格シグナルに応じた充放電制御などを定量的に検証する。「採算のものさし」を社内で共有し、今後の事業展開に向けた基準づくりを進める。

 並行して、制度に頼らないNon-FIT電源の開発も視野に入れる。再生した発電所の安定出力に、市場対応力(FIP)と環境価値(Non-FIT)を重ね、制度変更や価格変動に左右されにくい次世代の運用モデルを見極めようとしている。

 また、必要な点検や部品更新を確実に実施できる体制を整えることも重要だ。実際、雷被害によって数カ月以上の停止を余儀なくされ、月々の返済に対して売上がゼロとなった市場の事例もある。

 こうしたリスクを未然に防ぐためにも、適正なメンテナンスの維持こそが発電所を守る最善策であり、結果として長期的な安定収益につながる。

多角展開の先に描く
持続可能な成長戦略

 家電販売から始まり、太陽光、不動産、ホテル、農業へと事業を広げてきた芝浦グループ。いま同社は、新地社長のもと「既存経営資源の高度利用化」を旗印に、再エネ産業の変革期を次なる成長へと転化している。

 発電所の長寿命化と再生による資産価値の最大化、そしてFIP・蓄電池・Non-FITを組み合わせた多層的な運用戦略。芝浦グループが描くのは、持続可能な発電所経営の実務モデルであり、FIT終了後を見据えた現実的な成長の道筋である。

【児玉崇】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:新地洋和
所在地:福岡市中央区那の津3-9-1
設 立:2009年3月
資本金:7億450万円(資本準備金を含む)
売上高:(25/7単体)63億6,300万円

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