在庫管理をスマホで革新 「らくらく塗装屋さん」アプリ全国に広がる

らくらく塗装屋さん

 「塗料が足りん。同じ色は倉庫にあったかな」。出先で作業中の塗装職人がスマホを取り出し、アプリを開く。検索欄にメーカー名と色番号を打ち込むと、瞬時に「8.2km(20.5m2)」と表示された。塗装可能な面積まで即座にわかる。塗料の残量は、使用後に倉庫の電子はかりに缶ごとのQRコードを読み込むだけで自動更新される──。

 このアプリこそ、福岡県鞍手町の塗装専門会社・(株)フクモト工業が自社開発した在庫管理アプリ「らくらく塗装屋さん」である。塗料の残量をスマートフォンで確認できる仕組みで、現場の“勘と経験”に頼ってきた塗装業界に新風を吹き込んでいる。

 同社は1959年創業、従業員23人の中小企業だ。これまで塗料の種類や残量管理は職人の記憶に頼る部分が多く、在庫切れや余剰在庫が頻発していた。塗料は開封後約1年で固まるため、使い切れずに廃棄することも少なくなかった。年間300万円分が廃棄されることもあり、福本満壽男代表は「無駄をなくす方法はないか」と思案を重ねた。

 そんな折、滋賀県のIT企業と連携し、塗料缶にQRコードを貼り付けてスマホで読み取るだけで在庫量を把握できる仕組みを構築した。2021年、アプリ第1弾が完成。約8,500色におよぶ塗料情報を1缶ずつ入力するという地道な作業を経て、使いやすさを追求した力作だ。

 導入後、効果はすぐに表れた。23年の売上は前年より約2,300万円増加し、塗料購入費は69万円減少。24年のアプリ検索数は年間600回を超え、在庫の再利用や倉庫までの移動時間、廃棄量の削減などによって、計314万円分のコスト削減につながったという。倉庫整理の手間も減り、現場の作業効率は飛躍的に向上した。

 アプリを使えば、離れた現場からでも必要な塗料の残量が一目でわかる。出先で在庫を確認する時間も無駄も減り、顧客に対しても「在庫使用分は料金から最大5%引き」といった還元を行うようになった。

 この取り組みが評価され、同社は24年12月、経済産業省の「DX認定事業者」として筑豊地区で初めて認定された。現在、「らくらく塗装屋さん」は全国33社に広がり、コスト削減と業務効率化に成果を上げている。

 利用者からは「作業現場の無駄が減り利益率が上がった」「従業員教育にも役立つ」といった声が寄せられ、展示会や口コミを通じて導入企業が増加中だ。福本代表は「導入100社を目指し、業界全体のデジタル化を進めたい」と意欲を語る。

 アナログな現場に画期的なアプリを持ち込み、現場力とデジタルを融合させたフクモト工業の挑戦は、地域中小企業のDXモデルとして注目を集めている。

【松本悠子】


<INFORMATION>
らくらく塗装屋さん

H  P:https://www.rakuzai.com/
TEL:0120-932-190
(提供:(株)フクモト工業)

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