【新春トップインタビュー】音楽家から産婦人科業界の変革者へ 出生減少時代を見据えた支援のビジョン

(株)シンフォニア
代表取締役社長 亀山みゆき 氏

 サウンドデザインを祖業とし、特許技術を武器に産婦人科という専門領域で支援事業を展開してきた(株)シンフォニア。産婦人科業界で独自の地位を築いてきた亀山みゆき氏に、音楽家を起点とする異色のキャリアの背景にある経営哲学と、事業の本質をうかがった。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役社長 緒方克美)

音楽制作から始まった
理想の分娩室づくり

 ──現在も音楽家として活動を続けておられますが、そのなかでなぜ産婦人科業界で事業を展開しようと考えたのでしょうか。

 亀山みゆき氏(以下、亀山) 32年前に夫である亀山真吾とともに創業し、当初は音楽制作やサウンドデザインを中心とした仕事を手がけていました。大きな転機となったのは、私自身の妊娠・出産の経験です。主治医に、自分が思い描く理想の分娩室のイメージを伝えたところ、「その分娩室を、あなた自身の手でかたちにしてみてはどうか」と提案されたのです。この一言が、現在の主力事業が生まれるきっかけとなりました。

 ──そのようにして誕生したのが、事業の核となる「バースサポートシステム(BSS)」なんですね。

 亀山 「BSS」は、母親の陣痛と連動し、出産に必要な呼吸法を支援する、私たちが特許を取得したシステムです。胎児の心拍や母親の陣痛などのバイタルデータをリアルタイムで取得し、それに合わせて照明と音楽を自動で制御します。このシステムを通じて、これまでに約160万人の出生に携わってきました。

相談される存在になる
現場の声から生まれるビジネス

バースサポートシステム(BSS)
バースサポートシステム(BSS)

    ──BSS以外にも多くの製品を開発され、音楽とは直接関係のない領域にまで取り組まれています。

 亀山 BSSもそうなのですが、私たちは製品の企画に際して、「売ること」を第一に考えて企画した製品は1つもありません。呼吸法のイメージトレーニングに活用できる音楽教材や診療支援ソフト「Eveforma」、さらには設計やインテリアコーディネートやHP制作に至るまで、すべて現場から寄せられた「こんなものをつくれないか」という相談に応えるかたちで開発してきました。

 ──商品そのものの評価にとどまらず、「相談したい」と思われるご自身への評価が、事業拡大を後押ししているように感じました。

 亀山 私は病院にうかがった際、まず院内を徹底的に観察し、課題を見つけ出すことから始めます。そのうえで、医師に対して「私に何かできることはありませんか」と問いかけ、自身の知恵やアイデア、人脈を提供します。そうして、まず売り手ではなく、かけがえのないパートナーとしての信頼関係を築くことを大切にしています。すると、自然と相手が私に相談してくださるようになる。この関係性こそが、私たちのビジネスを支えています。

 ──御社の提供するサービスは長年にわたり支持を集めてきました。多くの企業が淘汰されていくなかで、事業を継続し、成功している企業にはどのような違いがあると考えますか。

 亀山 まず何よりも「信念」だと思います。その次に挙げられるのが「環境」です。私が事業を始めた当時、福岡の産婦人科は医療レベル、ホスピタリティの両面で日本一といわれるほど高い水準にありました。その厳しい環境のなかで、先生方に徹底的に鍛え上げられたからこそ、全国でも通用する製品を生み出すことができたのだと思います。そして最後が「人間性」です。短期的に成功することはできても、自分を優先する姿勢では長続きしません。結局のところ、事業の成否は「人」で決まるのだと感じています。

女性の一生に寄り添う
出産後を見据えた新たな挑戦

(株)シンフォニア
代表取締役社長 亀山みゆき 氏

    ──2025年を振り返って、どのような1年でしたか。

 亀山 少子化の根本要因である未婚率の上昇に対して、私たちに何ができるのかを考え続けた1年でした。そのなかで痛感したのは、女性がもっと学ぶ機会をもつ必要があるのではないか、という問題意識です。

 そこで、政治経済や医療、経営などを学ぶ場として、「ウーマンリーダーズサロン」を立ち上げました。私は、男女がそれぞれの得意分野を生かし、協力し合うことが重要だと考えています。女性がしっかりと学び、男性と支え合いながら並走していく。その大切さを、改めて体得した1年でした。

 ──26年はどのような1年にしたいと考えますか。

 亀山 今年の計画は明確です。日本人女性の婦人科検診受診率の低さは、看過できない課題だと考えています。そこで、出産を終えた女性たちが、産後もかかりつけの産婦人科で継続的に健康管理や検診を受けられる仕組みを推進するため、「レディースケア協会」を立ち上げます。

 この構想には、全国の著名な教授をはじめ、業界の重鎮の方々にもご賛同いただいています。少子化の影響で収入が減少傾向にある産婦人科に新たな収益源を提供すると同時に、業界全体の活性化につなげていくことが狙いです。

 これまで培ってきた人脈やノウハウを、クライアント個々の課題解決にとどめるのではなく、業界全体をより良くしていくために活かしていく。それもまた、これからの私にとって大切な「仕事」だと考え、取り組んでいきたいと思っています。

【文・構成:岩本願】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:亀山みゆき
所在地:福岡市中央区清川3-28-8
設 立:1996年4月
資本金:1,000万円
売上高:(25/7)2億1,500万円


<PROFILE>
亀山みゆき
(かめやま・みゆき)
1958年3月21日生まれ。福岡市出身。福岡県立香椎高校卒~山口芸術短期大学音楽科卒。78年、ヤマハ音楽講師を経て、85年に独立・起業。93年に亀山真吾氏と結婚して、音楽事務所シンフォニアを創業。96年、(株)シンフォニアに法人化。98年、分娩支援システムをリリース、音楽制作スタジオが完成。2007年、自社屋が完成。音楽療法研究所を設立。08年、真吾氏の急逝のため、代表取締役に就任。

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