【新春トップインタビュー】子育てのあらゆる課題に向き合い「保育」×「看護」で社会に貢献
(株)Branches
代表取締役社長 権藤光枝 氏
「子どもたちに愛情を」「保護者に安心を」「社員に働く歓びを」という経営理念のもと、育児と仕事の両立を支援する(株)Branches。「保育」と「看護」の分野から、誰もが夢をあきらめず自分らしく生きられる社会の実現を目指す同社は今年創業30周年を迎える。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役社長 緒方克美)
創業の原動力は
シングルマザーとしての経験
代表取締役社長 権藤光枝 氏
──2026年、創業30周年という節目を迎えられます。
権藤光枝氏(以下、権藤) 1996年に創業し、現在は直営の保育園が14カ所、委託運営の保育園や放課後等デイサービス、グループ法人の施設などを含めると、30カ所を超える事業所を展開しています。グループ全体の従業員数も約400人まで増えましたが、振り返れば本当にあっという間の30年でした。
──もともとは美容師をしていたとうかがいました。
権藤 私の創業の原点は、自身の苦い経験にあります。美容学校を卒業して就職した後、20歳で結婚・出産しましたが、すぐに離婚を経験しました。21歳のときには、当時の夫がつくった約300万円の借金を抱え、シングルマザーとして子どもを育てる生活が始まりました。当時の労働環境は厳しく、23時過ぎの帰宅が当たり前でした。
また、保育園は延長保育などのサービスが十分ではなく、仕事と育児の両立は極めて困難でした。借金返済のため夜も働かざるを得ず、決して良いとはいえない環境の託児所にやむなく子どもを預けていた時期もあります。冬の寒い夜、迎えに行くと子どもが震えていて、自分のコートで包み込みながら帰ったことは今でも忘れられません。「私のようなシングルマザーが安心して子どもを預け、働ける場所をつくりたい」。その思いが創業の原動力となりました。
──そこから、どのように事業を拡大してきたのでしょうか。
権藤 大きな転機は、2015年施行の「子ども・子育て支援新制度」です。小規模保育事業が認可事業となり、地域密着型の少人数保育が広がりました。とくに0~2歳児の受け入れ先不足という社会的課題もあり、この制度を追い風に拠点を増やしていきました。
──拠点拡大にともなう人材育成は大きな課題だったのでは。
権藤 スキルやカリキュラムも大切ですが、私が最も重視しているのは理念への「共感」です。保育事業の場合、全園共通の「保育理念」と会社全体としての「経営理念」「ビジョン」をスタッフに共有しています。
たとえば、新しい保育園をつくる際には、自社で育ち、私たちと同じ方向を向いているスタッフを登用しています。理念が浸透している人間がトップに立つことで、運営がスムーズになり、組織としての綻びが出にくくなるのです。また、スタッフには主体性をもってほしいと考えています。会社のビジョンを理解したうえで、考え、価値を生み出していく。その主体性を育むための基礎となるのが、理念への共感と会社が示す明確なビジョンだと私は考えています。
──産休・育休の取得率、復帰率が100%という点も印象的です。
権藤 私自身が苦労したからこそ、スタッフには楽しく働いてほしい。この思いは創業当初から変わりません。現在ではライフステージの変化を受け入れる文化が根付き、園長の職にあっても育休や時短勤務が可能です。近年はDX化を進め、事務負担を減らし、子どもやスタッフ1人ひとりと向き合う時間を増やしています。
「優しさ」と「強さ」で
すべての人へ幸福を
リトルワールドちくし保育園
──貴社のビジョンと今年の抱負について聞かせてください。
権藤 私たちが現在定めているビジョンは「すべての人が優しさと強さに包まれ、愛情に満ちた世界へ」というものです。このビジョンの実現のため、保育だけでなく、医療的ケアが必要な子どもたちのための訪問看護や、障害児通所支援、さらには産後ケア事業など、福祉の領域を広げています。また、グループ法人である(福)たかとり福祉会では、就労継続支援B型事業所として障害を持つ方々が焙煎するコーヒー販売なども行っています。
この30年を振り返ると、人との縁の大切さを実感します。「人を大切にする」という考え方を、組織全体にさらに浸透させたいですね。すべての人に幸福を届け続けられる企業を目指して、今年は社内の土台を再整備し、社会のお役に立てるよう邁進してまいります。
【文・構成:若松大生】
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<COMPANY INFORMATION>
代 表:権藤光枝
所在地:福岡市博多区祇園町2-11
設 立:2006年3月
資本金:1,000万円
売上高:(25/3)約18億円(グループ合計)
<PROFILE>
権藤光枝(ごんどう・みつえ)
1973年8月生まれ、兵庫県出身。当時3歳の長女を育てながら24歳で最初の保育園を立ち上げる。全国商工会議所女性連合会が主催する第8回女性起業家大賞で最優秀賞・日本商工会議所会頭賞を受賞。








