高すぎる不動産が阻む韓国の経済発展(前)
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韓国では専門職、公務員、大手企業の正社員など安定した職を持っている人であっても、一部を除いては、住宅に関する出費により生活は楽ではない。特に若い人たちにとっては、住宅問題はなおさらである。その理由は、高すぎる住宅価格、生活を圧迫するほどの家賃、それから教育費の負担があるからだ。いい会社に就職していても、給料から家賃と教育費を払えば、手元に何も残らないのが現実だからである。大学を卒業し、皆から羨ましがられる会社に入ったとしても、親から家を買ってもらっていない場合には、生活が厳しいのは同じである。
韓国の住宅がどれほど高いかをちょっと触れて見よう。韓国の若い夫婦に一番人気のある住宅地は河南(ガンナム)地域である。この河南地域の小型マンション(専用面積59㎡)を全貰(ジョンセ・月々の家賃の支払ではなく、一括で物件の価値の半分程度の保証金を預ける方法。大家は預かった保証金を運用して利益を得る。退出時には返金される)で借りる場合、2010年の初め頃は2億5,000万ウォン(16年1月現在、1ウォンは約0.1円)ほどであったが、11年になると3億ウォンに上昇し、11年の年末には3億5,000万ウォンになった。それから、この価格は上昇を続け、14年の年末には5億ウォン、15年7月頃には6億ウォンになっていた。年平均7,000万ウォンずつ上昇し、5年間で3億5,000万ウォンも上昇したことになる。
住宅の価格も、この全貰の価格と軌を一緒にしている。1年間で7,000万ウォンも住宅費用の負担額が増えるということは、一流会社で年俸1億ウォンの人にとっても、耐えられない状況である。その結果、お金の用意ができなくなると、ソウルに住むのを断念し、ソウルの郊外に引越しをするようになる。このような状況下では、もともと財産を相続しているとか、医師または弁護士のような専門職の人ではない生活は立ち行かなくなる。
韓国の不動産ブームは、1970年代の河南開発が発端となっている。1980年代末と1990年代初頭は、新都市開発でそのブームが続き、2000年代の中ごろには再建築、ニュータウン開発などで、不動産ブームはピークを迎えた。韓国ではアジア通貨危機直後を除いて、不動産価格はいつも上がり続けていた。1966年江南地域の開発計画が発表された当時のマルジュクコリの地価は、1坪当たり200ウォン~300ウォン程度であった。それが今は坪当たり5,000万ウォン以上になっているので、50年間で20万倍の地価上昇ということになる。
このような不動産ブームは、不動産を所有している人には、資産を増やす絶好の機会となっているが、韓国経済自体にはいろいろな弊害をもたらしている。韓国では汗水たらして一所懸命に仕事をするよりは、不動産に投資した人や、親から不動産を相続した人が成功している社会となっているのである。不動産を持っていると価格が上昇し、資産の価値が増加するだけでなく、賃貸収入も増加し、たやすく財産を増やすことができた。その反面、庶民の住宅にかかる費用は上昇し、その負担に耐えられなくなり、何も間違ったことをしていなくても、資産が目減りするという経験をしている。
こういった社会構造は、勤労の意欲を鼓舞するより、不動産への関心と投資に人々を向かわせる。それに加えて、韓国では不動産関連の賃貸所得、譲渡所得に対する税金も少ないので不動産が一番有利な投資対象になっている。また不動産のこのような状況は、韓国経済の消費を抑制する方向にも働いている。住宅費用を賄うだけで精一杯になると、他のところには消費はできなくなる。消費の抑制は、経済成長の鈍化をもたらし、自営業者などが苦境に陥るようになる原因にもなるのである。
(つづく)
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