住宅の価値を上げる効果に着目 スマートホーム、本格普及へ

 今年は、スマートホームの本格普及元年になるかもしれない。日鉄興和不動産(株)は、東京都心の賃貸住宅で、一般住戸より家賃が高いスマートホーム住戸を設けた。三菱地所(株)は、スマートホームサービス提供会社を新設。全国の賃貸管理会社や不動産会社、工務店などに対してスマートホームを提供する。これらの動きに共通するのは、スマートホームの物件価値向上効果だ。

全自動のビルトイン型

 東京・西麻布に日鉄興和不動産(株)が新築した賃貸住宅「リビオメゾン西麻布」は、総戸数52戸のうち15戸をスマートホーム化した。スマートホームを導入した2LDKの部屋は、玄関、リビングと移動していくと自動で照明が付き、エアコンが稼働する。各所に設置したセンサーにより、時間帯や生活シーンに合わせた状態にしてくれる。家のなかでアプリを操作する必要はない。アプリは、外出先での操作や自動設定を自分好みにカスタマイズするときに使う。

「リビオメゾン西麻布」では、外出先での操作やカスタマイズのときに専用アプリを使う
「リビオメゾン西麻布」では、外出先での操作や
カスタマイズのときに専用アプリを使う

 同社によるスマートホームの導入は、生活の質を高めることが目的。ハンズフリーな暮らしを通じて、家時間の質を高めることを可能にした。技術と住まいの融合による新しい価値創出であり、多様化するライフスタイルに応える住環境を提供するという。

 スマートホームを提供したのは、シリコンバレー発のスタートアップ・HOMMA Group(株)。同社のスマートホームは、住宅の設計段階からセンサー、照明、シェード、空調、オートロックなどの配置を一体的に計画する、ビルトイン型という特徴がある。HOMMA Groupの本間毅CEOは、「米国では6~7%程度家賃が高い」とし、スマートホームが賃貸住宅の経済的な価値を高める効果を日本でも期待する。日鉄興和不動産によると、平均賃料は1坪あたり約2万4,000円。スマートホームシステムを導入した住戸は、通常住戸と比べて月額で約1万円賃料を高く設定した。

国内成長率は年10%超に

 日本国内のスマートホーム市場は成長市場だ。(株)マーケットリサーチセンターによると、日本のスマートホーム市場規模は25年に90億米ドル(約1兆4,200億円、1ドル158円換算)と推計。34年までに227億米ドル(約3兆6,000億円、同)に成長すると予測され、26~34年にかけての年平均成長率は約10.9%と高い成長率を見込んでいる。

 三菱地所(株)は4月8日、スマートホームの新会社・(株)HOMETACTの設立を発表した。「HOMETACT」は、複数の機器や家電を1つのアプリでコントロールする統合プラットホームサービス。21年11月からスタートし、LIXILやパナソニックなど30社・200機種以上と連携している。

都内にある「HOMETACT」ショールームでは、不動産会社や工務店などへの説明ができるスタッフを配置。施工上の留意点などの技術的な相談も可能
都内にある「HOMETACT」ショールームでは、
不動産会社や工務店などへの説明ができるスタッフを配置。
施工上の留意点などの技術的な相談も可能

 「HOMETACT」は、三菱地所グループ以外の外販も積極的に行っている。「資産価値を上げるスマートホームを掲げ、不動産事業に貢献するスマートホームを明確にした。とくに、築年数が経過するにつれて物件の価値が下がっていくという常識を、テクノロジーの力で転換できる」((株)HOMETACTの橘嘉宏共同COO)と強調。ソフトとハードの両面で入居者の体験を向上させることによって、物件価値を向上させるとしている。「HOMETACT」の導入は26年度に契約戸数1万戸、32年度には契約戸数20万戸、売上高100億円を目指すとしている。

九州でも効果に着目

「HOMETACT」のデモでは、スマホでさまざまな操作が可能。自室だけでなくエントランスとの連携も可能
「HOMETACT」のデモでは、
スマホでさまざまな操作が可能。
自室だけでなくエントランスとの連携も可能

    三菱地所によると、過去の実績から最低でも5%~30%の賃料がアップした事例や、空室期間を半減~3分の1程度まで短縮するといった事例も出ている。これらは都市、地方といった地域に関係なく、効果が見られるとしている。また、賃貸住宅以外の注文住宅や地方の分譲平屋戸建住宅においても、「HOMETACT」が上昇する取得価格に対する付加価値として購入者から評価されているという。

 九州においても、賃貸住宅の価値向上効果にすでに着目していた会社がある。住宅設備機器商社である(株)デンヒチ(北九州市八幡西区)は、25年に九州初の「HOMETACT」取扱店になった。家賃保証大手のジェイリース(株)(大分市/東京本社:東京都新宿区)は、「HOMETACT」の販売代理店契約を締結。ジェイリースが協定している全国3万社の賃貸管理会社に、「HOMETACT」の導入を働きかけている。

 今後は、ホテルや介護施設、病院・クリニックなど住宅以外にも広げていく方針だ。「各業界の困りごとを解決する新たなソリューションとして提案していく」(橘氏)という。


<プロフィール>
桑島良紀
(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。

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