アビスパ福岡、「塚原アビスパ」の現在地 首位神戸戦の敗戦、その先へ

 5月23日、ベスト電器スタジアムで行われた百年構想リーグWEST最終節。アビスパ福岡は首位突破を狙う神戸に0-1で惜敗。勝てば8位浮上、敗れれば最下位の可能性という大一番で、課題と収穫を残した。

神戸戦に映し出された現在地

 蒸し暑さが残るベスト電器スタジアムに、異様な熱気が渦巻いていた。明治安田J1百年構想リーグWEST最終節。1位・ヴィッセル神戸を迎えたアビスパ福岡にとって、それは意地を懸けた90分だった。勝てば8位浮上の可能性を残し、敗れれば最下位の可能性もある。ゴール裏を埋めたサポーターは、試合前から大声援で選手たちを押し出していた。

 その期待に応えるように、福岡は立ち上がりから神戸に真っ向勝負を挑む。椎橋慧也が中盤を締め、見木友哉が前を向き、ロングスローとセットプレーで相手ゴールへ迫った。シュート数は神戸の5本に対して福岡は9本。数字上でも、王者を押し込む時間はたしかに存在していた。だが、サッカーは一瞬で流れが変わる。前半アディショナルタイム。ロングスローの流れから、神戸DFマテウス・トゥーレルにヘディングを叩き込まれ、痛恨の失点。福岡は後半、碓井聖生らを中心に猛攻を仕掛けたが、最後まで神戸ゴールを割れなかった。

 0-1。無念の敗戦。そしてWEST最下位確定。それでも、スタンドから最後まで響き続けた拍手と声援は、今季積み上げてきたものが決して消えていないことを物語っていた。

負けない価値を持つ百年構想リーグ

 J1百年構想リーグは、EASTとWESTの2地区制で行われ、それぞれホーム&アウェー方式で順位を争う特殊なレギュレーションを採用している。最大の特徴は、90分で決着がつかない場合にPK戦を実施する点だ。90分勝利は勝点3、PK勝利は勝点2、PK敗戦は勝点1、90分敗戦は勝点0。そのため、負けないことにも大きな価値が生まれるリーグとなっている。リーグ終了後には、EASTとWESTの同順位同士によるプレーオフを開催。福岡はWEST最下位となり、EAST最下位のジェフ千葉と対戦する。ホーム&アウェー方式で行われ、第1戦はベスト電器スタジアム。リーグ戦の順位だけでは終わらない、最後の戦いが待っている。

アビスパ始動は異例の船出、そして6連敗

塚原監督    今シーズンのアビスパ福岡は、異例のスタートだった。塚原監督が急遽チームを率いることになり、十分な準備期間を確保できないままシーズンイン。戦術浸透、選手との関係構築、チームづくり。そのすべてを走りながら進めるような船出だった。

 苦しさは結果にも表れた。開幕から7節まで90分勝利なし。第1節・岡山戦では、特別指定選手として途中出場した前田快がプロデビュー戦で同点ゴールを決め、鮮烈なインパクトを残した。ホームのサポーターを沸かせ、PK戦勝利にはつなげたものの、その後は6連敗。攻守が噛み合わず、「チームとして同じ絵を見られているのか」。そんな空気も漂った。

椎橋加入で変わった中盤の景色

 だが、転機となったのが8節・ホームガンバ大阪戦だった。PK戦ながら勝利をつかむと、そこから3連勝。4月に入り、ようやくアビスパらしい粘り強さと一体感が見え始める。

 その中心にいたのが、3月末に加入したMF椎橋慧也だった。4月5日のアウェー広島戦で移籍後初先発。決勝点につながるワンタッチパスを送り、チームを今季初の90分勝利へ導いた。椎橋は加入当初を「ところどころの厳しさとクオリティーが足りなかった」と振り返る。プレーだけでなく、要求する姿勢でもチームを変えた。とくに大きかったのが、見木友哉とのダブルボランチだ。椎橋が守備強度とバランスを整えたことで、見木がより前向きにプレーできるようになり、中盤全体が機能し始めた。

若き力が支えたシーズン

 そして、苦しいシーズンのなかで若手も育っていった。

 右サイドで存在感を放った橋本悠。対人の強さと落ち着いた配球で最終ラインを支えた辻岡佑真。アビスパを引っ張るという強い信念が表に溢れ出る北島祐二。さらに、シーズン後半にかけてゴールを量産し、攻撃の軸へ成長した碓井聖生。苦しい時間が長かったからこそ、彼らは実戦のなかで鍛え上げられていった。さらに、サニブラウン・ハナンの存在も、このチームの未来を感じさせる。まだ粗削りではあるが、そのスピード、推進力、身体能力には大きな可能性が詰まっている。経験を積めば、来季以降のアビスパを象徴する存在になるかもしれない。守備陣の安定感も忘れてはならない。塚原アビスパはワンチームになりつつある。

未来へ進めるチームになれるか

 終盤戦は再び苦しんだ。13節・広島戦から16節まで4試合連続PK戦。接戦には持ち込める。しかし、勝点3を積み切れない。あと一歩届かない試合が続いた。そして迎えた最終節・神戸戦。福岡は最後まで食らいついたが、結果は敗戦。他会場の結果も重なり、WEST最下位でリーグ戦を終えることになった。それでも、このシーズンが“何も残らなかった”わけではない。塚原監督の下で、チームは確実に“戦う形”を築き始めている。

 次に待つのは、EAST最下位・ジェフ千葉とのプレーオフ。ホーム&アウェー方式で行われ、第1戦はベスト電器スタジアムだ。最下位同士の戦い──。響きは決して明るくない。だが、このプレーオフは単なる順位決定戦ではない。
 塚原アビスパが、未来へ進めるチームなのかを示す戦いになる。

【森田みき】

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