北九州・再開発の現在地 人口減の政令市の生き残り策とは──(前)

旦過市場
旦過市場

前途多難な旦過市場再整備

 “北九州の台所”として知られる小倉北区の「旦過市場」では現在、「旦過地区土地区画整理事業」として再整備が進んでいる。

 同土地区画整理事業は、旦過地区における浸水被害や老朽化した建物などの防災面の課題を解決することを目的に、2021年2月に事業計画を決定。24年1月に第一回計画変更を行いながら、これまでに調査設計や移転補償、立体換地建築物整備を進めてきた。このうち、新たに開発される商業施設「旦過市場いちばん館」(立体換地建築物)の建築工事は、25年3月から本格的な工事(基礎工事)が開始していた。

 旦過市場いちばん館は、敷地面積約2,835m2に建つS造・地上4階建で、延床面積は約8,257m2(概算)。1・2階部分は商業フロアとなり、1階に生鮮等のテナント30~40区画が入居するほか、2階には飲食店などが入居する予定で、3・4階および屋上には約130台分の駐車場が整備される計画となっている。

 当初は、2階部分を旦過市場の関係者が取得する計画だったものの、資金不足を理由として断念。そのため、2~4階部分をまとめて売却する方針となり、25年11月から公募を行っていた。同公募に対しては、民間事業者1社が応じる意向を示していたが、物価高騰などを背景として「安定的な収益確保は困難」だとして、今年2月に撤退を決定。そのため市は、売却価格などの公募条件を見直し、改めて公募を行うとしていた。

旦過市場いちばん館、旦過市場青空市場

 そして26年4月20日から、改めて「旦過市場いちばん館(2階から4階)集約売却公募型プロポーザル」が開始された。最低売却価格は8億510万円(税込)で、前回公募の最低売却価格12億3,800万円から約4億円引き下げられた。主な建物活用の条件としては、商業フロア(2階)は新たな旦過市場を象徴するような、北九州のさまざまな食を堪能できる店舗が集積し、足を運びたくなるような空間とする飲食を中心とした商業フロアとなることのほか、同フロアは26年度内を目標として、可能な限りそろって開業することが望ましいとされている。5月20日の公募期限までに複数の事業者が公募に応じる意向を示したとされ、今後は提案書の受付やヒアリング等を経て、市は6月末までに優先交渉権者を決定。年度内の開業を目指す方針としている。

 ただし、旦過市場の再整備をめぐっては、北九州市と地権者を含めた市場関係者との間で、これまでにも協議が難航。とくに、旦過市場いちばん館に入居する際の費用的な問題については、トラブルも聞かれていた。そうしたなか、当初は旦過市場いちばん館への入居を予定していた地権者のなかからも、入居費用の高額さや自身の高齢などを理由に入居をあきらめ、閉店や事業を廃業するケースが散発。旦過市場の再整備の今後には、暗雲が立ち込めている。今後、市側と市場関係者側とがうまく歩調を合わせながら、旦過市場を再構築していけるか──。引き続き動向が注目される。

都心部再開発PJ 第3弾はさぎんビル

JR小倉駅
JR小倉駅

 北九州市の中心市街地と位置付けられている小倉駅周辺および黒崎駅周辺では現在、市が主導する再開発プロジェクト「コクラ・クロサキ リビテーション」が進行している。

 21年9月に発表されたコクラ・クロサキ リビテーションは、まちづくり構想の実現に向けて、北九州の都心である小倉地区と、副都心である黒崎地区を対象に、都市機能の更新とさらなる魅力向上を目指すプロジェクトである。プロジェクト名に付けられた「リビテーション」とは、「リビルド(Rebuild/建替え)」と「インビテーション(Invitation/引き込む)」を掛け合わせた市独自の名称。補助金などの支援策や各種規制の緩和などにより、民間開発を誘導して老朽化ビルの建替えなどを促していくもので、対象地区は小倉駅および黒崎駅それぞれの周辺概ね半径1kmのエリア内で、27年3月末までに着工するビルが対象となる。

 そのコクラ・クロサキ リビテーション第1弾となった「BIZIA(ビジア)小倉」は、魚町3丁目の旧・西日本シティ銀行北九州営業部が入っていたビルの解体・建替えを行ったもので、事業主は地場不動産会社の(株)ミクニ(北九州市小倉北区)。S造・地上13階建のオフィスビルの施工を清水建設(株)が担当し、24年7月に竣工。24年12月にグランドオープンを迎えた。同ビルは北九州市内の民間オフィスビルとして初となる、市内でつくられた再生可能エネルギー100%の電力(地産地消再エネ)を導入し、市の推進する快適性・省エネ・企業価値向上に寄与する「グリーンスマートビル」の普及など、市が取り組むSDGs未来都市の実現に寄与。また、公開空地を設けて、地域のビジネス・交流拠点としての役割も担うとしている。

(左)BIZIA小倉/(右)小倉京町センタービル
(左)BIZIA小倉/(右)小倉京町センタービル

 そして24年12月、第2弾となる「小倉京町センタービル」が着工した。同ビルは、JR小倉駅から徒歩5分の京町3丁目にあった京町センターパーキングおよび五十鈴ビルディングの跡地で計画されているS造・地上11階建のオフィスビルで、敷地面積1,244m2、延床面積7,974m2。縦スリットを採用したスマートな外観のビルは最新設備を備え、基準階は約170坪の無柱空間となり、入居企業に合わせた分割対応が可能。時代が求める「新たな働き方」を実現できるワークプレイスや、オープンスペースの創出により、市民の憩いの場となるようなオフィスビルを目指すとしている。事業主は地場不動産開発の中西興産(株)(北九州市小倉南区)で、施工は積水ハウス建設中国四国(株)CRE事業部が担当し、26年8月の竣工を予定している。

 そして現在、第3段プロジェクトとなる「さぎん北九州ビル」の開発が進んでいる。
 同ビルは、(株)佐賀銀行の旧小倉支店跡地において、銀行店舗を併設したS造・地上11階建のオフィスビルを建設し、同行の小倉支店を新築移転する計画。地域に根ざし、まちの賑わい創出に貢献するため快適な空間づくりに配慮した整備を行い、1階部分にカフェ等の商業施設、2階に銀行店舗、3~11階に賃貸向けオフィスフロアを併設した複合ビルとしていく予定だ。

さぎん北九州ビル
さぎん北九州ビル

    同ビル周辺の小倉エリアでは、安全安心で魅力ある市街地環境の形成、若者に好まれるIT企業の誘致など、SDGs未来都市の実現につながるまちづくりを目指しており、同ビルもコクラ・クロサキ リビテーションに賛同するほか、銀行店舗を併設したオフィスビルを建築することにより、官民連携で地域の活性化に取り組んでいくとしている。同ビルは今年2月に着工し、竣工は27年7月、開業は27年9月を予定している。

 ただし、さぎん北九州ビルを加えても、コクラ・クロサキ リビテーションのプロジェクトはまだ3件。北九州市によるコクラ・クロサキ リビテーションの公式HPの更新は止まっているようだが、今後新プロジェクトが次々と打ち出されるのか、それとも鳴かず飛ばずで終わってしまうのか、依然として動向が注目される。

空き店舗へのテナント誘致
黒崎・テナントリーシング

 前述のコクラ・クロサキ リビテーションは、小倉地区だけでなく黒崎地区も対象エリアとなっているが、小倉地区とは違い、黒崎地区では目立ったプロジェクトが動いている様子はない。その代わりに現在、北九州市が黒崎地区で注力しているのが、商店街空き店舗へのテナント誘致だ。

 北九州市では、中心市街地エリアの価値向上を目指し、小倉・黒崎地区の大規模空き店舗をまちの「資産」と捉え、テナント誘致のため官民連携した実行委員会を立ち上げ、大型空き店舗へのテナント誘致を進める「テナントリーシング事業」を推進。26年4月には、黒崎地区の魅力や住民ニーズ、募集物件を整理した出店提案書を公表した。そこでは黒崎が「人口増加エリア・新興ファミリー層が集うまち」として描かれている。

(左)JR黒崎駅/(右)黒崎駅前の商店街には、閑散とした雰囲気が漂う
(左)JR黒崎駅
(右)黒崎駅前の商店街には、閑散とした雰囲気が漂う

 この黒崎地区におけるテナントリーシング事業には、北九州市の現実的な都心政策が表れている。黒崎を小倉と同じ広域都心として競わせるのではなく、生活圏型の副都心として再定義し、周辺住民の日常需要を確実に取り込む方向へ商業を再編集するのである。提案書では、毎日の食卓を豊かにする店、親子でくつろげる場、日常に特別感を加える体験型店舗などが求められている。つまり黒崎再生の軸は、かつての大型商業の復権ではなく、暮らしに根差した商業の再構成なのである。

 さらに北九州市は、商店街テナントリーシング実行委員会が推薦する事業に対し審査を行い、開業にともなう改装費用の一部を補助する制度「大きなシャッターヒラクプロジェクト」を26年4月23日からスタートさせた。同プロジェクトの補助率は改装費用の2分の1で、補助上限は1,000万円。空き店舗問題は需要不足だけでなく、初期投資の重さと情報不足によっても固定化されるため、市場情報の可視化と出店コストの軽減を行政が担うことで、既存ストックの再流通を促そうというものだ。黒崎地区における北九州市の試みは、再開発ビル偏重ではない、地方都心再生のもう1つの現実的な解決策として注目に値するだろう。

(つづく)

【坂田憲治】

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