賢明なお方と思いきや、世間様同様に晩節を汚した
蔵内勇夫氏が、これほどの権力亡者であるとは知らなかった。これまで「気配りとバランス感覚に富んだ政治家」として評価してきただけに、残念である。歴史上の典型的な権力亡者へと転落してしまった。結論からいえば、「もう政治家から足を洗ったら」と勧告する。それはなぜか。長く権力の中枢に座り続けた者は、やがて自分の影響力を当然のものと思い込み、周囲の声にも県民の視線にも鈍感になるからだ。そうなった政治家は、自ら身を引く決断をしにくい。だからこそ、権力の座から一度遠ざかることが本人のためでもあり、県政のためでもある。「県政の帝王になった」と慢心しているから、世間を騒がす羽目になったのである。「県民はどうにでもなる」と高をくくるようになったのであろう。
この県政シリーズは10回企画している。まずは結論から述べよう。「早く政治家から足を洗う(来年地方選挙への立候補断念を公にする)ことを宣言しなさい」。ああ、もったいない。福岡県政に燦然と輝くはずであった経歴が、「悪辣な権力の権化であった」という印象とともに県民の脳裏に残ることが確定したのだ。以下では彼の経歴を検証しながら、論を展開する。
まず第1の点は称賛すべき点だ。蔵内氏は2010年、九州大学大学院博士課程を修了し、農学博士学位を取得している。周囲の県議会議員は蔵内氏が勉学に励んでいることを誰も知らなかったという。政治家であるから、宴会にも頻繁に参加していたであろう。同議員たちを取材してみたところ、「いやあ、宴会の序盤で『用があるから』と帰っていった。今から思えば、学習をしていたのであろう」というコメントを得た。
もちろん、蔵内氏は将来のことを見通していたはずだ。日本獣医師会会長に就任することを考えていた。だから「九州大学大学院卒ぐらいの学歴が必要」とターゲットを絞り込んでいたのであろう。この先見性には感服する。
第2の点からは批判である。野党、すなわち民主党系議員たちへの気配りは凄かった。30~40%の議席を確保するほどしか力がない野党に、毎年、任期1年の副議長ポストを与えていた。このポストを与えられた野党議員たちは恩義を感じ、蔵内会長への公的批判を展開しない。海外“旅行”の特権も甘受しているから、批判どころではないのであろう。思い当たる野党県議の方々、福岡県民のために厳しい批判を展開できないのか。
第3の点である。福岡経済界では、蔵内氏と同世代の1953年生まれが、七社会の社長に就任したことがある。福岡銀行、JR九州、九州電力などである。「華の1953年組」の到来ということだ。
ところが、民間の移り変わりは早い。実質的な権限をもつ方々は、すでに少なくなった。同世代の蔵内勇夫さん、見苦しいですぞ。即刻、引退しなさい。
蔵内勇夫氏の経歴
蔵内勇夫氏は、福岡県筑後市選挙区選出の福岡県議会議員で、自民党県議団に所属している。53年12月7日生まれ。県議会議員としての当選回数は10回に上り、現在は第74代福岡県議会議長を務めている。県議会では、警察委員会、ワンヘルス・地方分権等調査特別委員会にも所属している。事務所は筑後市和泉698-1に置く。
蔵内氏は、72年3月に福岡県立八女高等学校を卒業し、79年3月に日本大学農獣医学部獣医学科を卒業した。大学卒業後は臨床獣医師として活動し、80年7月からは国会議員秘書を務めた。その後、県政の道に進み、87年4月に福岡県議会議員に初当選した。なお、2010年3月には九州大学大学院博士課程を修了している。
県政では、筑後市選挙区を地盤に長く活動してきた。01年5月には第54代福岡県議会議長に就任。さらに25年4月には第74代福岡県議会議長に就任し、2度目の議長職を担っている。長年にわたり県議会の中枢で活動してきた人物であり、県政運営において大きな影響力をもつ。
自民党関係では、自民党福岡県議団会長、自由民主党福岡県支部連合会会長などの要職を歴任した。現在は、自民党福岡県連常任相談役として紹介されている。また、蔵内氏は政治家としてだけでなく、獣医師・畜産分野でも重要な役割を担ってきた。現在、日本獣医師会会長、アジア獣医師会連合(FAVA)会長を務めている。さらに、2026年から2年間、世界獣医師会(WVA)会長に就任する予定であり、日本人として初めての就任と報じられている。
このほか、中央畜産会常務理事、福岡県畜産協会会長、福岡県馬術連盟会長など、畜産・関連団体の要職も務めてきた。獣医師としての専門性を背景に、畜産振興やワンヘルスの推進にも深く関わっている。25年には、全国都道府県議会議長会会長にも就任した。福岡県議会議長としての経験に加え、全国の都道府県議会を代表する立場も担うことになり、地方議会全体の課題にも向き合う立場にある。
主な経歴
1953年12月7日 生まれ
1972年3月 福岡県立八女高等学校卒業
1979年3月 日本大学農獣医学部獣医学科卒業
1979年4月 臨床獣医師
1980年7月 国会議員秘書
1987年4月 福岡県議会議員初当選
2001年5月 第54代福岡県議会議長
2010年3月 九州大学大学院博士課程修了
2013年 日本獣医師会会長
2022年 アジア獣医師会連合(FAVA)会長
2025年4月 第74代福岡県議会議長
2025年6月 全国都道府県議会議長会会長
2026年~ 世界獣医師会会長就任予定
蔵内氏は、県議会議員として長く福岡県政に関わる一方、獣医師としての専門性を生かし、畜産、獣医療、ワンヘルス分野でも国内外の要職を担ってきた。地方政治と専門分野の双方で活動してきた点が、同氏の経歴の大きな特徴である。
【児玉直】








