TOTO、利益面ではすでに半導体企業~800億円投資で強まる“静かな傾斜”
売上高1割弱で利益の過半を稼ぐ「新領域事業」
TOTO(株)(北九州市小倉北区、田村信也代表)が半導体製造装置向け部材事業に、今後5年間で800億円規模の投資を行う方針であることが分かった。
同社は一般にはトイレや浴室、キッチンなどの住宅設備メーカーとして知られる。しかし、2026年3月期の有価証券報告書を見ると、同社の収益構造はすでに大きく変わっている。TOTOは事業を大きく「グローバル住設事業」と「新領域事業」に分けており、新領域事業の中心が「セラミック事業」である。このセラミック事業が、半導体製造装置向け部材を担っている。
注目すべきは、売上規模ではなく利益構成である。26年3月期のTOTOの連結売上高は7,374億4,100万円だった。このうちセラミック事業の売上高は674億1,400万円で、売上構成比は1割弱にとどまる。つまり売上面では、TOTOはなお圧倒的に住設会社である。
一方、利益面ではまったく違う姿が現れる。26年3月期の連結営業利益は537億5,900万円だったのに対し、セラミック事業のセグメント利益は289億4,300万円に達した。単純計算で、全社営業利益の過半をセラミック事業が稼いだことになる。
グローバル住設事業のセグメント利益は279億2,100万円であり、セラミック事業は住設事業全体を上回った。TOTOは売上では住設の会社だが、利益ではすでに半導体製造装置向け部材の会社としての性格を強めている。
利益率43%の高収益事業
利益率の差も大きい。セラミック事業の売上高に対するセグメント利益率は約43%に達する。一方、グローバル住設事業の利益率は約4%にとどまる。住設事業が巨大な売上基盤を抱えながら薄い利益を積み上げているのに対し、セラミック事業は小さな売上規模で大きな利益を生む高収益事業となっている。

一方で、この構図はTOTO内部における資本効率の断層ともいえる。セラミック事業を支える中核製造子会社の1つTOTOファインセラミックス(株)は、大分県中津市を拠点にセラミック製品の製造を担う連結子会社である。有価証券報告書によると、同社のセラミック生産設備の帳簿価額は177億100万円、従業員数は450人である。TOTOグループ全体の規模から見れば、決して巨大な設備・人員を抱える部門ではない。
にもかかわらず、セラミック事業は全社利益の中心に近い位置を占める。これは、同事業が単なる「新規事業」や「補完事業」ではなく、すでにTOTOの企業価値を左右する中核事業になっていることを示している。
この流れをさらに強めるのが、今回報じられた800億円規模の投資だ。TOTOは半導体製造装置向け部材事業で、今後5年間に700億~800億円規模を投じる方針とされる。研究開発面では神奈川県茅ケ崎市の拠点で技術高度化を進め、生産面では福岡県豊前市の工場でセラミックの焼成棟を増設中だとされる。AIの普及にともなうデータセンター増設、先端半導体需要の拡大が、同社の投資判断を後押ししている。
有価証券報告書上では2026年度のセラミック事業の投資予定額は76億円とされている。これは同年度のグループ全体の投資予定額527億円のうち約14%にあたる。現時点の投資配分だけを見れば、なお住設事業への投資が大きい。しかし、中期的に800億円規模の投資が進めば、利益面で先行していた半導体傾斜が、設備投資や資産配分にもおよぶ可能性がある。
【寺村朋輝】








