真の100億円企業へ 変化の時代を見据えた経営基盤づくり|三共電気

三共電気(株)
代表取締役社長 木原和英 氏

 独立系電材卸商社として、かねてより売上高100億円の大台を目標に掲げてきた三共電気(株)。資材価格の高騰や大型案件などの追い風もあり、同社はついにその水準に到達した。インフレやインフラ・防衛投資の波を捉えた「額面の100億円」を冷静に見つめながら、変化する市場環境のなかで、持続的な成長を支える経営基盤づくりを進めている。 
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役会長 児玉直)

三共電気の本社社屋
三共電気の本社社屋

「額面100億円」を
どう実力に変えるか

 ──かねてより目標として掲げられていた売上高100億円をついに達成されました。現在の心境はいかがでしょうか。

 木原和英氏(以下、木原) 目標としていた100億円という数字をクリアできたことは、代表が代わってから11年間、これまで手探りで進んできたなかでの1つの成果ではあります。ただ、これがすべて当社の実力だけで積み上げた数字かというと、そこは冷静に見ています。

 現在の急速なインフレ、つまり電気資材全体の価格高騰が全体の額面を大きく押し上げた側面が多分にあります。加えて、他地域での大規模なスポット案件なども一時的に重なった結果であり、いわば市場の追い風によるものです。この数字に甘んじることなく、いかに事業基盤を強固にし、中身のともなった「本物の100億円企業」として定着させるかが、次なる重要な舵取りとなります。

 ──足元の市場では、どのような領域で電材の需要がとくに高まっていますか。

 木原 現在、とくに動きが出ていると感じるのは、防衛関連工事にともなう電材需要です。九州エリアや周辺の離島を含め、各地の自衛隊基地や関連施設において大規模な拡張・整備工事が進められています。

 これにともない、施設内の収納庫や付帯設備向けに、強電から弱電に至るまで、多種多様な電気資材の供給要請が非常に活発化しています。国家予算が毎期拡大している背景もあり、この防衛関連のインフラ整備にともなう電材需要は、今後数年間にわたり確固たる特需として推移していくと見込んでいます。

変化する現場で高まる電材卸の役割

 ──顧客である電気工事業者やサブコンを取り巻く環境はいかがでしょうか。

 木原 職人不足や施工管理者不足はかなり深刻です。案件はあっても、人員が足りずに受けきれないという話も聞きます。以前のように、とにかく価格を叩き合うというよりも、今は「必要な資材をいかに早く、確実に手配できるか」が重視される場面が増えています。

 資材価格も短期間で変動しますし、納期も読みにくい。そのため、決めるべきことを早く決め、現場に間に合わせることが重要になっています。流通を担う立場として、スピードと安定供給の役割は以前より大きくなっていると感じます。

 ──業界全体の働き方改革や休日拡大の動きは、資材流通にどう影響していますか。

 木原 施工業界やゼネコン各社において、大型連休(年末年始やゴールデンウィーク、お盆など)に長期の連休を設定する動きが定着しつつあります。年間休日数が大幅に増加した工事業者も増えており、採用面では良い効果が出ているようです。

 一方で、これにともなう現場管理の変化もあります。大手施工会社が週休2日を推進するために交代制で休みを導入しても、現場そのものは稼働を続けているケースがあり、そこへ電材を納入する物流・供給のスケジュール管理には高度な柔軟性が求められます。

 幸いにも、顧客側においても週末や夜間の無理な資材発注・突発的な現場対応を抑制する意識が浸透してきたため、旧来のような不条理な突発対応は着実に減少しており、サプライチェーン全体で環境改善が進みつつあることは好ましい傾向といえます。

三共電気(株) 代表取締役社長 木原和英氏
三共電気(株)
代表取締役社長 木原和英氏

    ──電材業界の流通構造や、周辺の競争環境の動向で注視している点を聞かせてください。

 木原 大手メーカーの動きは気になります。一部の事業を売却したり、組織をスリム化したりする動きが見られます。メーカーの方針転換は、我々のような卸売業者にも影響します。

 また、地域によっては同業者同士の統合や買収が進み、市場の勢力図が変わりつつあります。これまで地場で強い存在感をもっていた会社や経営者が第一線を退いたことで、県外業者や広域展開を狙う企業が入りやすくなっている面もあります。独立系としてやっていく以上、自社の営業基盤や顧客との関係をしっかり守り、広げていく必要があります。

AIと人材活用で進める
個が伸びる組織づくり

 ──これからの変化に対応するため、具体的にどのような取り組みを進められていますか。

 木原 まず考えているのは、AIを含めたデジタル技術をどう使えるかを理解することです。正直にいえば、私自身もまだ十分に分かっているわけではありません。だからこそ、まずは役員を含めて研修を受け、何ができるのかを知るところから始めようとしています。

 売上が70億円規模だったころと、100億円規模になった現在とで、従業員数は大きく変わっていません。この状態を続けるには、今まで3人でやっていた仕事を2人、あるいは1人で回せるようにする工夫が必要になります。AIがどこまで使えるかはこれからですが、使える領域を見極め、業務効率化につなげていきたいと考えています。

 ──組織面ではどのような変化を進めていますか。

 木原 最近は優秀な女性社員が増えています。そこで、営業を支える組織としてアシスタント部をつくりました。まずは営業担当者の後方支援や顧客対応をチームで共有し、個人に負担が集中しないかたちをつくっています。

 営業担当者が少ないなかでも、女性社員が複数で顧客対応を分担することで、より多くのお客さまに対応できる体制を目指しています。将来的には、女性社員が営業面でもより前に出られるようにしていきたいという思いもあります。実際、覚えが早く、人あたりの良い社員も多く、顧客対応の面で力を発揮できる可能性は大きいと感じています。

 ただ、建設・電気工事の現場にはまだ荒い部分も残っており、会社としてハラスメントなどから社員を守る体制は必要です。無理に前に出すのではなく、本人が安心して力を発揮できる環境を整えながら、少しずつ広げていきたいと思っています。

次世代へつなぐ真の100億円企業

 ──次世代の組織体制づくりについては、どのように考えていますか。

 木原 長く会社を支えてくれた役員が退任する時期にも入っており、若い世代をどう育てるかは大きなテーマです。私の息子たちもまだ経験を積んでいる段階ですが、それぞれが自分たちの人間関係や経験を通じて、新しい人材を会社に連れてきています。

 とくに、スポーツを通じてつながった仲間など、社会人経験を持つ若い人材が営業の現場で力を発揮し始めています。会社は同じ人だけで固まっていても強くなりません。組織を次の世代へつないでいくには、新しい人材が入り、若い世代が自分たちで仲間をつくっていくことが大切です。

 ──経営トップとして、若い世代の動きをどのように見守り、導いていきますか。

 木原 私は、彼らの日常的な実務や手法に対して多くは口を出しませんが、一貫して言ってきているのは、「自分たちのブレーンをつくれ」ということです。

 経営は1人ではできません。自分の考えを共有し、苦しい時にも一緒に考えてくれる仲間が必要です。やり方については、昔の方法を押し付けても意味がありません。今の若い人たちは、デジタルツールを使いながら、私たちの世代より早く答えにたどり着くこともあります。大枠の方向性は示しますが、具体的な進め方は若い世代が自分たちで考えればよいと思っています。

 答えに早くたどり着ける道具や方法があるなら、それを使えばよい。大事なのは、結果として会社が良い方向に進むことです。責任は経営側がもちながら、現場のやり方は次の世代に任せる。その積み重ねが、会社の新しい力になると考えています。

 ──今後の目標と展望を教えてください。

 木原 今の電材業界は、インフレや投資需要の追い風を受けています。ただ、こうした状況がずっと続くとは思っていません。資材価格の上昇や大型案件の影響で売上は伸びやすい環境にありますが、市況が変われば、同じ水準を維持することは簡単ではありません。

 だからこそ、今後は売上規模だけでなく、利益体質や業務効率、人材の層をどう厚くしていくかが重要になります。100億円という数字は1つの節目ですが、そこに満足するつもりはありません。市場環境が変わっても安定して利益を出せる会社であり続けるため、足元の体制を見直し、変化に対応できる経営基盤を整えていきたいと考えています。

【文・構成:松下森音】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:木原和英
所在地:福岡市西区福重1-14-25
設 立:1976年6月
資本金:7,200万円
売上高:(26/5見込)約103億1,000万円
TEL:092-883-8588
URL:http://sdkk.jp


<PROFILE>
木原和英
(きはら・かずひで)
1968年2月生まれ、福岡市出身。87年に三共電気(株)に入社。その後、2003年5月に取締役営業部長、10年7月に取締役常務を経て、13年7月に代表取締役社長に就任。趣味はゴルフ。

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