NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、6月26日付の記事を紹介する。
医学博士でもあるマハティール氏は、100歳を超えた現在でも鋭い頭脳と体力を維持しており、独自の健康哲学を徹底した自己規律で実践しています。
同氏の食生活の基本は、日本の「腹八分目」に近い考え方ですが、「食べ物が美味しいと感じた瞬間に食べるのを止める」というものです。「肥満は心臓に最大の負担をかける」と指摘し、食事量を制限して適正体重を維持すれば、心臓は100年超えも可能というのが彼の持論で、その通りになっています。「ルックイースト」を掲げ、日本から学ぶという政策を推進したマハティール氏は天ぷらなど和食が大好きですが、「量は控えめ」というのが原則。
「人間は使わない機能から衰える」として、高齢だからといって過度に休養することを嫌うのもマハティール流そのもの。週末も含めて毎日仕事に出かけ、読書、執筆、人々との議論を欠かしません。また、朝のランニングマシンでの運動や軽いウォーキング、自転車乗りなどを習慣にしています。
しかも、彼にとって車の運転(特に高速走行)は、高い集中力と動体視力を必要とする、脳と身体の究極のトレーニングとなっていると言い、現職のカーレーサーとして時速200キロもいといません。脳も筋肉と同じであり、使わなければすぐに認知能力が退化すると考えています。常に政治や社会の課題について考え、発信し続けることで、脳の神経ネットワークを刺激し続けているわけです。
周囲が「お年寄りだから休んで」と過保護にすることは、かえって老化を早めると警鐘を鳴らしています。感情の起伏、特に「怒り」や「過度な興奮」は血圧を上げ、血管や心臓に多大なストレスを与えると述べ、医者としての冷静な分析を欠かしません。問題が起きた時は怒るのではなく、医師が病気の原因を突き止めるように「なぜこれが起きたのか」と冷静に根本原因を探ることを習慣づけています。「怒っても問題は解決しない」と、時間をかけて感情をコントロールする術を身につけたそうです。
マハティール氏は、間もなく100歳を迎えるハスマ夫人との「夫婦共通の習慣」を大切にしています。毎朝6時半頃に起床し、イスラム教徒としての朝の礼拝を行うことで、精神を落ち着かせ、1日の集中力を高めているそうです。7時にはランニングマシンを使って、軽いウォーキングや運動を行います。高齢になっても筋肉や心臓を弱らせないため、毎朝「身体を覚醒させること」を義務付けているというわけです。
運動後の朝食は7時30分頃ですが、ごく少量で、腹一分目を心がけています。通常、「食パン1枚」のみで、たまにチーズを乗せ、カレーソースに少し浸して食べるとのこと。飲み物はインスタントコーヒー1杯で、マレーシアでは甘いコーヒーが主流ですが、彼は血糖値を上げないためにブラック、あるいはノンシュガーを貫いています。
朝食後はすぐに身支度を整え、8時30分には自身のオフィスへ向かうとのこと。午前中の最も頭が冴えている時間に、陳情に来る人々の話を聞き、書類を読み、脳の筋肉をフル回転させます。
妻のハスマ夫人(現在99歳)もまた、マハティール氏と同じ大学の医学部で学んだ「マレー系女性初の医師」の一人です。医師夫婦である二人の結婚生活は70年近くに及び、お互いを支え合う共通の習慣を持っています。
政治の世界で激しい闘争を続けてきたマハティール氏ですが、家庭内ではハスマ夫人と常にユーモアを交えての会話を心がけているようです。夫人は「夫が外でどれほど批判されても、家に帰ってきたらリラックスできるよう、私は常に彼の最高の友人であり続けた」と語っています。この強い精神的絆が、長寿の大敵である「孤独」と「慢性的なストレス」を排除しているに違いありません。
また、夫婦共通の趣味として、音楽の演奏や鑑賞、読書を日常的に行っています。夫人は高齢になってからバイオリンを本格的に習い始め、マハティール氏は執筆や議論を続行する毎日です。お互いが別の方法で「脳を刺激し続ける姿」を見せ合うことで、夫婦で認知機能の低下を防いでいるように思われます。
要は、マハティール夫妻のライフスタイルは、「引退してのんびりする」のではなく、「死ぬまで心身のギアをニュートラルに入れない(常にローギアでも動かし続ける)」という強い意志を共有することによって成り立っているわけです。
我々も大いに参考にすべきではないでしょうか。
著者:浜田和幸
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