2024年11月18日( 月 )

韓国経済ウォッチ~韓国経済の綱渡り(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 筆者が小学生の頃には、韓国でバナナは、とても高価な果物であった。めったに食べられない果物で、子供心に「何でこんなにおいしい果物があるだろうか」と思った記憶が今でも鮮明に残っている。当時バナナの価格は、りんごの4~5倍もしていて、お金持ちではない限り、なかなか手の届かない果物であった。筆者が日本に留学するため福岡に行った時、大学の先生の奥様が「韓国ではバナナは高いと聞いたので持ってきた」といってバナナを1房持って来てくれた。

banana しかし、いつからかバナナは韓国でも安くなった。今では、バナナは、りんごよりも安くなっている。このようになったのは、熱帯地方から貿易でバナナを安く輸入できるようになったからだ。貿易はお互いに安いところからものを買うことによって、両国が得をすることによって成り立っている。たとえば韓国はフィリピンに自動車を輸出し、フィリピンからはバナナを輸入しているといった具合である。しかし、上記のように比較優位の分野が明確に違う場合には問題ないが、世の中はそれほど単純ではない。得意分野が同じである場合もあるし、相手国から買うのが仮に安くても輸入ばかりしていると、いつまで経っても自国産業は発達しないので、輸入よりも自国の産業育成に力を入れることになることも十分ありうる。

 それから貿易は経済論理だけではなく、政治・外交的な要因も絡んでくる。今、韓国はご承知のように経済的には中国との関わりが深くなりつつある。今の状況では韓国が中国より一歩進んでいる分野があって、韓国と中国はお互いが必要になっていて、今のような流れが形成されている。しかし、今の関係がいつまで続くのか誰も予想できない。中国において、規模の経済を実現した中国企業が、価格などを武器に、いつ韓国市場を飲み込んでしまうかわからない。

 それに韓国は、政治的には米国と緊密な関係にある。一番大事な経済面においては中国と段々関係を深めながら、今まで長年お付き合いをしていた米国との経済関係は薄くなる一方で、北朝鮮問題などをめぐっては中国よりも米国と利害関係が一致している。そのようななか難しい舵取りが韓国に要求されている。

 理屈では、上記のような状況におかれている韓国であるが、身近なところでは中国の観光客をはじめ、中国との関係は日に日に深まっている感じだ。私の知人がブログに、次のような文章を掲載した。「韓国で若者がよく集まる江南(ガンナム)のあるカフェに行ってコーヒーを飲んでいたら、隣の座席の人が『中国でいい投資案件があるので、チャンスを逃さないように』という会話をしていた。また、別の隣の座席の人は、『北京に一緒に行ってみよう。北京に行くと、私の言うことがよくわかると思うよ』と話していた。周囲に偶然3組も中国の話をしていて、驚いた」。

 実はブログを書いている私の知り合いも最近中国進出に関係する仕事をしている。このように貿易の統計だけでなく、中国は日常においてもとても身近になっている。一時期、日本に足しげく通っていた別の知り合いも、最近は日本にはたまに行くが、中国には頻繁に行っている。彼曰く、「日本で要求される条件はとても厳しく、時間がかかるだけで、その反面、収穫はすくない。中国はサンプル発注も半端な数字ではない。これから大きく儲けようとすると、中国とやるのが正解だよ」と言う。

(つづく)

 
(後)

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