
経営者や営業責任者は、社内で考える時間が増えがちです。会議に出て、数字を確認し、部下から報告を受け、次の施策を決める。もちろん、どれも必要な仕事ですが、社内にいる時間が長くなるほど、顧客との距離が離れていく危険があります。
営業アプローチ手法は、オンラインと対面に大きく分けられます。見積もりや条件確認、既存商品の説明であれば、オンラインで十分です。移動時間もかからず、効率良く話を進められるでしょう。
ただ、営業の現場には、資料や画面には映らない情報があります。何に不満を感じているのか。誰が最終的に発注を判断しているのか。競合会社の提案と、どこを比較しているのか。顧客自身も、課題を明確に説明できるとは限りません。「とくに困っていません」と言いながら、実際には面倒な作業を当たり前のように続けていることもあります。
現場を見れば、その違和感に気づけます。私は、こうした訪問を営業担当者だけの仕事にしてはいけないと考えています。社長や役員、営業部長こそ、顧客の声を直接聞くべきです。営業担当者から上がってくる報告は、どうしても整理された情報になります。結論や数字は伝わっても、顧客の表情、言葉の間、会話のなかで感じた小さな不満までは伝わりません。
さらに、経営側が考えている自社の姿と、顧客から見えている姿が違うこともあります。自分たちは「専門的な提案ができる会社」だと思っている。しかし顧客からは、「頼んだものを納品する会社」としか見られていない。こうした認識のズレは、社内会議を何度重ねても発見できません。
少し厳しいことをいえば、新しい事業のヒントは、経営者同士の集まりや懇親会だけでは見つかりません。同業者から聞けるのは、主に業界の常識です。しかし、事業を変えるヒントをもっているのは、その商品やサービスを実際に使っている顧客です。社員数が増えても、会社の方向性を決めるのは最終的には経営者です。だからこそ、経営者が現場から離れると、会社全体の判断も現実から離れていきます。
過去に成功した方法を守ることが、いつの間にか目的になっている。顧客が変化しているのに、自社だけが過去のやり方を続けている。そうして時代に取り残された会社を、私は見てきました。会社の未来を考えるなら、まず顧客のもとへ行くことです。
会議室で仮説を立て、現場でたしかめる。そして聞いた話を、商品やサービスに反映する。会社が時代に合っているかどうかを判断する材料は、社内の資料よりも、顧客の言葉と現場の風景のなかにあります。
<プロフィール>
山本啓一
(やまもと・けいいち)
1973年生まれ。大学に5年在学し中退。フリーターを1年経験後、福岡で2年ほど芸人生活を送る。漫才・コントを学び舞台や数回テレビに出るがまったく売れずに引退。27歳で初就職し、過酷な飛び込み営業を経験。努力の末、入社3年後には社内トップとなる売上高1億円を達成。2004年、31歳でエンドライン(株)を創業。わずか2年半で年商1億2,000万円の会社に成長させる。「エッジの効いたアナログ販促」と「成果が見えるメディアサービス」でリアル店舗をモリアゲる「モリアゲアドバイザー」として、福岡を中心として全国にサービス展開中。

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