NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、9月11日付の記事を紹介する。
ウクライナへの軍事侵攻によって、世界から制裁を受けているプーチン大統領ですが、現在、日本や欧州に頼らない「ロシア独自の武道・柔道帝国」を国内に建設し、自身の権力基盤と愛国主義教育に利用するようになっています。
プーチン氏の故郷に建設された超巨大な柔道クラブ「ヤワラ・ネヴァ」は、プーチン氏の最側近である新興財閥のローテンベルク兄弟(少年時代の柔道仲間)が巨額の資金を出して建設したものです。
ここは単なるスポーツ施設ではなく、「プーチン氏を崇拝するロシアの政財界エリートが密会する最高級サロン」としての役割を果たしています。プーチン政権は、国内に次々と新設した武道センターにおいて、子供たちに柔道やサンボを教え込んでいるのです。
しかし、そこでの教育は日本本来の「平和のための武道精神」ではなく、「強靭な肉体を作り、国家、即ち、プーチン氏に忠誠を誓う愛国的な兵士を育てるための基礎訓練」として完全に変質し、国威発揚の道具として利用されていると言っても過言ではありません。
残念ですが、本来の武道精神は変質した形でロシアに継承されることになってしまいました。とはいえ、プーチン氏の日本への愛着は変わっていません。大統領専用の厨房(クレムリンの料理部門)には、最高水準の寿司や和食を調理できる選りすぐりの専属シェフが複数配属されています。
かつてプーチンの専属ケータリングを一手に引き受け、「プーチンの料理人」と呼ばれたエフゲニー・プリゴジン氏(2023年に航空機墜落で死亡)の時代から、クレムリンの宴会部隊は世界中のあらゆる高級料理に対応できるスタッフを抱えていました。
モスクワの一般市民の間では、クリームチーズやマヨネーズを多用した「ロシア風寿司」が定着していますが、プーチン氏がプライベートや公式晩餐会で口にするのは、日本の高級店と変わらない極上の刺身や伝統的な江戸前寿司です。
経済制裁により日本からの直接の食材輸入は制限されていますが、中国や東南アジアの第三国を経由した「裏の流通ルート」を使って、日本の最高級わさび、醤油、米、さらには新鮮な魚介類がクレムリンの厨房へ定期的に空輸・密輸され、専属シェフたちが腕を振るっています。
ウクライナ侵攻直後の2022年、世界中のスポーツ組織がロシアへの制裁を敢行しました。プーチン氏が長年心の拠り所にし、名誉会長を務めていた国際柔道連盟(IJF)はその「名誉会長および大使」の地位を停止しました。
かつて「日本の講道館に来ると、我が家に帰ってきたような安らぎを覚える」と語るほど柔道を愛していたプーチン氏ですが、この国際社会からの“お家芸”を通じた制裁に対し、冷静な姿勢を保っています。
プーチン氏本人は、国際柔道連盟からの役職停止や、テコンドーの黒帯剥奪について、公式の会見や声明で反論したり、怒りを露わにしたりすることは一切していません。 西側諸国が主導する国際機関による決定を「不当な政治的圧力であり、相手にする価値もない」というスタンスを貫き、完全に無視を決め込んでいます。
実は、世界テコンドー連盟が名誉黒帯を剥奪した一方、日本の講道館が2000年に授与した「講道館柔道六段」の段位は剥奪されていません。講道館側は当時、国内外からの「剥奪せよ」という激しい抗議に対し、段位は当時の実力と実績に対して授与されたものであり、たとえ後に犯罪を犯した場合でも、過去の段位を遡って剥奪する規定はない、として、現在も籍を残しています。プーチン氏もこの事実を知っており、日本の武道精神へのリスペクトは、西側の政治組織とは別物として捉えている模様です。
西側のスポーツ界から排除されたことを受け、プーチン氏はロシア国内、および中国や中央アジアなどの友好国(BRICS体制)だけで完結する「独自の武道大会」やスポーツイベントの開催を強化しています。
自身の誇りである「武道家のイメージ」が傷つくのを防ぐため、国内の柔道クラブを視察して子供たちと畳の上で触れ合う様子を国営メディアで積極的に放映させるなど、「国際連盟に拒絶されても、私の柔道精神は不変である」というプロパガンダに利用する彼の強かさに他なりません。
プーチン氏にとって「和食」や「柔道」は、彼がどれほど西側諸国と激しく対立し、地政学的な敵対関係になろうとも、「個人の趣味嗜好」および「自身の肉体・精神を誇示するためのツール」として完全に割り切って維持し続けているのが実態です。
著者:浜田和幸
【Blog】http://ameblo.jp/hamada-kazuyuki
【Homepage】http://www.hamadakazuyuki.com
【Facebook】https://www.facebook.com/Dr.hamadakazuyuki
【Twitter】https://twitter.com/hamada_kazuyuki









