【特別インタビュー】地元に根ざした劇団活動で商店街の魅力アップに貢献

劇団ショーマンシップ劇団ショーマンシップ
座長 仲谷一志 氏

仲谷一志氏

 福岡市中央区の唐人町商店街。その西側の入り口に「甘棠館(かんとうかん)Show劇場」がある。この劇場では劇団ショーマンシップの公演のほか、各種イベントが行われており、商店街や周辺地域の活性化に貢献するといった大きな役割を担っている。劇団の座長、そして商店街連合会の理事長として活動している仲谷一志氏に、劇団活動や商店街の在り方について聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス代表取締役会長 児玉直)

一人芝居を経て劇団創設

──仲谷さんの演劇活動の原点について教えてください。

 仲谷一志氏(以下、仲谷) 1984年ごろに「テアトルハカタ」という劇団に入団したことがキャリアの始まりで、10年ほど在籍していました。在籍中には在福のラジオ局でパーソナリティの仕事もしており、ローカルタレントとしての認知度が先立つなか、「やっぱり自分は芝居がしたい、舞台に立ちたい」という想いが抑えきれなくなりました。

 そこで同劇団を退団して中央区大名のホールで一人芝居を披露するようになりました。ただ、当初は好評だったものの、次第に集客に苦戦するようになってしまいました。その理由を自分なりに分析し気づいたのは、私自身が自分の都合だけで芝居をやっていた、ということでした。

 つくり手側のひとりよがりの都合でお芝居をつくっていて、お客さまの立場にまったく立てていなかったんですね。お客さまがより喜んでくれる芝居を披露するため、演出家とタッグを組んでしっかりとした劇団をつくろうと決意しました。当時一緒に一人芝居をつくってくれていた演出家と、2人で劇団を立ち上げたのが、現在の「劇団ショーマンシップ」の始まりです。

 当初は中央区港で活動していたのですが、稽古場・劇場としていた建物の上階が普通の住宅で、音の問題などで悩んでいました。そんなときに、唐人町に現在のビルが建設され、多目的ホールをつくる計画を知ることになりました。そこで直談判しに行ったところ、商店街の皆さんが私のラジオなどを聴いて知ってくださっていたため、話はトントン拍子に進みました。

 当時、商店街の方々は「箱」をどう運営していけばいいのかわからないという課題を抱えていましたが、私たちは劇場運営のノウハウがありましたから、お互いの利害が合致しました。「事務所も安くお貸ししますから、その代わりに劇場は仲谷さんたちが多少の運営費を得ながら、自主運営していってください」ということで、劇団の拠点を唐人町商店街のなかに置くことになったのです。

地元の歴史物を上演

 ──劇団では地元の歴史物語を次々と舞台化してきました。

 仲谷 それがほかの劇団には絶対に真似ができない、私たちだけの強みです。劇場のある場所は、かつて江戸時代に福岡藩の学問所(藩校)であった「甘棠館」の跡地。初代館長を務めた亀井南冥(かめいなんめい)先生は、志賀島で発見された「金印」の歴史的価値を最初に見出した人物です。ですから、私たちの最初の歴史劇として、亀井南冥先生の生涯を描く舞台をこの場所でつくりました。

 亀井先生の学問の流れを汲んだ人々のなかには、広瀬淡窓や高場乱、頭山満といった傑物たちがいます。彼らの系譜は、さらに中野正剛先生、後の総理大臣である広田弘毅先生といった、近代日本の礎を築いた福岡の偉人たちに続いています。近代日本の国づくりに貢献したすばらしい人材が、この唐人町の甘棠館の系譜から数多く輩出されているのです。

 地元の歴史物を舞台化することで、さまざまな広がりが生まれました。広田弘毅先生の生涯を描いたお芝居を上演したのですが、広田先生の母校である大名小学校が統廃合でなくなる際に、小学校の体育館のほか、修猷館高校の講堂、そして私たちの劇場の3カ所で行うこととなりました。

「藍あやめ紅つばき」公演中の様子
「藍あやめ紅つばき」公演中の様子

 『藍あやめ紅つばき』という高場乱の物語を上演した際には、お芝居に登場した武部小四郎という志士のご子孫の方が新聞記事を見つけて、わざわざ劇場に足を運んでくださって、「うちのご先祖さまのお話を演じてくれてありがとう」と、涙を流して喜んでくださって。地元の歴史を演じることで、魂のバトンをつなぐことができる。これは僕たちの大きな誇りです。

「藍あやめ紅つばき」公演後に行われた舞台挨拶の様子
「藍あやめ紅つばき」公演後に行われた舞台挨拶の様子

新たな劇団経営を模索

 ──劇団経営について聞かせてください。

 仲谷 当劇団の経営は、これまで大きく「学校公演」「主催公演」「あしや夢リアホール(福岡県遠賀郡芦屋町)の指定管理業務」が収益の柱となってきました。

 ただ、学校公演は近年の少子化や教員の働き方改革により、公演の数は減少傾向にあります。さらに、主催公演もコロナ禍の3年間で、お客さまとの物理的・精神的な距離が離れてしまいました。コロナ融資の返済が始まり、経営改善の必要に迫られていたところ、現在親会社となっている企業との出会いがあり、2025年10月に同社のグループに参画することになりました。その支援を受け、最近は主催公演に注力しており、そのなかで役者の充実にも力を入れています。

看板俳優のソフィアさん
看板俳優のソフィアさん

    象徴的なのが、看板俳優であるソフィアの存在です。コロナ禍で俳優さんたちの活躍の場が失われていた時に、ある演出家が紹介してくれたのが、当時モデル事務所に所属していたソフィアです。彼女に声をかけたところ快諾してくれ、当劇団の専属俳優として契約を結ぶことができました。

 ソフィアは博多区出身で、劇団の主役を張る一方で、テレビやラジオなど福岡のメディアでも頭角を現しています。彼女の加入で若い役者たちのレベルもぐっと上がりました。

 ──劇団の今後の展望はいかがですか。

 仲谷 まず、12月12日(土)と13日(日)に、博多座で「すんまっせん~西島伊三雄の世界~」の公演を行います。西島先生は博多座のロゴマークをはじめ、福岡市地下鉄のロゴ、「うまかっちゃん」のパッケージデザインなど、福岡の街のあらゆる場所にその作品が息づいている偉大な芸術家です。

 公演を成功させるためには2日間で2,600人ものお客さまの動員が必要で、これまで私たちの博多座公演では客席の8割ほどまでしか入ったことがなく、完全な満席を達成したことはまだありません。今回は「完全満席」を何としても達成したいと考えています。そして、さらに先の目標として、一から福岡でつくられたオリジナル作品を、完全にプロの商業演劇として上演し、さらに全国上演につなげていきたいと考えております。

すんまっせん~西島伊三雄の世界~

元気な商店街を目指して

 ──唐人町商店街連合会の理事長としての顔もお持ちですが、その経緯はどのようなものだったのでしょうか。

 仲谷 私たち表現者が成立するためには、私たちが暮らす街が元気でなければならない、というのが大前提にあります。実は数年前、この唐人町商店街の振興組合が破産してしまうという出来事がありました。各個店は元気だったのですが、「破産」という風評被害に晒され、商店街の皆さんから相談を受けました。

 そこで、チラシを握りしめて70店舗を1軒1軒回り、新しい組合を立ち上げるために動いていたところ、最終的に理事長を任されることになり、現在も実働部隊のトップとして走り回っています。そんな活動から、唐人町商店街を取り巻く状況の変化や課題を強く感じるようになりました。

 たとえば、近年は観光の形態が変わって、有名な観光地を見るよりもそこに住んでいる人たちの生の生活や日常を体験したいという旅行者が増えています。昭和の面影を残す唐人町商店街は格好のスポットで、土日には韓国などアジアからの海外旅行客も非常に多くなっています。

 しかし「日曜日にお店が開いていない」「閉店が早く、夜に楽しめる場所が少ない」などという課題も見えてきました。そこで、10月17日から12月27日まで「日曜にぎわい市」を開催し、閉まっている店舗の前のスペースにさまざまなマルシェを出店してもらうなどの取り組みをしています。

 従来からの大きな課題の1つが、みずほPayPayドームを訪れる人たちの誘客です。そちらについても、10月から12月の土日を中心に「キャリーバッグ一時預かり事業」をスタートいたします。

 これまでにも「辛いものイベント」などを開催してきましたが、こうした取り組みも行いながら商店街を盛り上げていきたいですね。高層マンションが完成するなど、商店街の利用者もかつてとはずいぶん変わってきました。彼らのニーズに合う商品やサービスを提供するお店も増やす必要がありそうです。

 そして、老朽化で撤去する商店街が増えている「アーケード」の価値を守り抜きたい。アーケードがあるからこそ生まれる一体感や、雨の日でもイベントができるメリットは計り知れないからです。劇団と商店街が共存するまちは全国的にも珍しく、そうした魅力を次の世代に残していきたいですね。

【文・構成:田中直輝】


<COMPANY INFORMATION>
(有)ショーマンシップ

代 表:仲谷一志
所在地:福岡市中央区唐人町1-10-1
    カランドパーク203
設 立:1994年10月
資本金:300万円
TEL:092-716-3175
URL:https://www.showman.jp


<PROFILE>
仲谷一志
(なかたに・ひとし)
福岡県出身。劇団テアトルハカタに約10年所属後、独立。フリーで一人芝居の上演を行うなどした後、1994年に劇団ショーマンシップを旗揚げ。RKBラジオなどでタレントとしても活躍している。劇団座長として、ほとんどの作品の制作にプロデューサー・演出家・役者として携わる。日本児童・青少年演劇劇団(協)理事。唐人町商店街連合会理事長として地域振興にも携わる。

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