手かざしアースハートの後継団体「セントマザー」 建物の違法使用で市が指導
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正月気分もようやく抜けようかという1月9日、福岡市東区の一角、傾斜が急な細い坂道を、続々と車が登っていった。
タクシー、自家用車、大型バス。乗っているのは「一般社団法人セントマザー」の会員たちで、その数およそ1,000人。向かう先は、坂を登りきったところにある老人ホームの建物である。
得体の知れない集団が、そこでやっていることとは――。アースハート事件
手かざしの「アースハート」といえば、ご記憶の読者もいらっしゃるだろう。患部に手をかざし、念じるだけで病気や痛みを和らげる、いわゆる「ハンドパワー」を取得できるとして、70万円のセミナー代を集め、社会問題化した会社だ。
平成23年には、同社に会費を騙し取られたとする元会員らを救済するため被害対策弁護団が結成され、順次、損害賠償訴訟を提起。最高裁まで争われた第一陣訴訟は昨年11月、原告側勝訴となり、アースハート側が原告47名に約6,500万円を支払っている。第二陣訴訟もアースハート側が原告側の主張を受け入れる形で和解が成立。約2億1,000万円余りが被害者側に支払われている。
手かざしアースハートの問題は、刑事事件にまで発展する。2013年1月、同社の元社長で実質的な指導者である女性ら3人が、福岡地検特別刑事部に逮捕、起訴されたのである。容疑は法人税法違反(脱税)。買い取った宗教法人に寄付する形で、会社の利益数十億円を隠したというもの。結局、刑事事件は1審・2審とも有罪。執行猶予がついたものの、昨年、元代表の女性には逮捕された3人のうちで最も重い懲役3年(執行猶予5年)の判決が下っている。
アースハートから「セントマザー」に
そのアースハートが拠点にしていたのが、冒頭に登場した福岡市東区の老人ホーム。車列を作った人たちが参加している一般社団法人セントマザーとは、アースハートの事業を丸々引き継ぎ、「手かざし=ハンドパワー」の取得セミナーを行っている団体なのである。
セントマザーの設立は2014年。設立後、アースハートの事業を約3億円で継承しており、事実上アースハートの後継団体。名前を変えて、同じ行為が繰り返されている状況だ。セミナー代金は、アースハート時代(70万円)より安くなっているというが、セントマザーのホームページ上で確認してみると、次のように設定されている。
(1)ハンドヒーリングセミナー受講料 540,000円(税込)
(2)ハンドヒーリングセミナー特別受講料 324,000円(税込)セミナーの回数は、12回となっており、1回あたり27,000円もしくは45,000円。ハンドパワーの効用があるのか、ないのかについての議論は別稿に譲るとして、決して安い受講料ではあるまい。
1月9日の集会は、セントマザーの会員のなかで、ハンドパワーを持つ人だけが加入できるという「つくしの会」の催し。『有志会』と呼ばれており、会員の体験発表とアースハート元代表の女性の講話があるのだという。
建物使用で問われる違法性
問題は、この集会を開くこと自体に“違法”の疑いが生じることだ。会場となった建物があるのは市街化調整区域のなか。都市計画法の適用を受け、福祉施設であるにせよ、建設にあたっては、市の許可が必要となる。その際、一定の条件が付けられるのだが、セントマザーが本拠にしている建物は、「老人ホーム」「医療施設」の目的でしか利用することができない約束になっているのである。
金銭のやり取りが絡む「セミナー」や「有志会」で建物を使用することは、すなわち都市計画法に抵触する行為。度が過ぎれば、許可そのものを取り消されても文句は言えない。
セントマザーが「有志会」で市内東区の建物を使用するのは、違法ではないか?
福岡市の所管課に見解を求めたところ、セントマザーに対してはこれまで、セミナーの開催を止めるように指導したほか、今回の有志会の集まりも違法性が高いとして、今後は同様の会合を行わないよう申し渡しているという。市はさらに「今後も厳しく監視し、指導を続ける」としている。NET-IB取材班は、アースハート=セントマザーの動きを追跡取材。今後も、徹底追及していく予定だ。
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