NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、10月23日付の記事を紹介する。
2026年現在、世界の現役国家元首・首脳の中で最高齢の政治指導者は、カメルーンの大統領、ポール・ビヤ氏です。黒柳徹子さんと同い年の1933年生まれの彼は現在93歳であり、82年から40年以上にわたりカメルーンのトップを務め続けています。
長寿の秘訣に関しては、若い頃からの質素な生活や自己管理が挙げられることもありますが、実はビヤ大統領は「スイスの高級ホテルに年間数ヶ月単位で滞在する」ことでも非常に有名なのです。
カメルーン国内の貧弱な医療インフラとは対照的に、彼は数十年前からスイスのプライベートクリニックに通い、世界最高峰の医師団によるアンチエイジング治療や持続的なリスク管理、最先端のヘルスケアを極秘裏に受けているとされています。
更に、「元気に見える」背景には、政権側による徹底した情報コントロールもあります。高齢のため、国際会議を欠席したり、しばらく公の場に姿を現さなかったりするたびに、国内外で「重病説」や「死亡説」が飛び交います。
そのたびにカメルーン政府は「大統領はヨーロッパで短い私的な滞在をしているだけで、非常に健全に職務を遂行している」と発表し、健在ぶりをアピールする映像などを公開することで、権力の空白が生じていないことを演出してきました。
結論として、彼が93歳になっても最高権力者の座を維持できているわけです。
ご存じない方も多いと思いますが、カメルーンは、アフリカ中部(ギニア湾に面する位置)に佇む、「アフリカの縮図」と呼ばれるほど多様な大自然と文化を持つ国です。南部の熱帯雨林から北部のサバンナ、標高4,095メートルのカメルーン山にいたるまで、アフリカ大陸で見られるほぼすべての気候や地理的特徴がこの1国に凝縮されています。
面積は47.5万km2で、日本の約1.3倍、人口は約3,000万人です。過去にフランスとイギリスの双方に統治された歴史から、アフリカでも珍しい英語とフランス語2つの公用語を使用しています。
また、豊富な天然資源に恵まれ、原油が輸出の約4割を占めるほか、木材、カカオ豆、綿花の栽培・輸出が盛んです。
実は、日本との意外な繋がりもあります。日本の伝統建築である「興福寺中金堂」が再建された際、柱として使われた巨木はカメルーンから輸入されたものでした。
更に言えば、日本で「カメルーン」という国名が最も広く知れ渡ったきっかけはスポーツです。サッカーカメルーン代表の愛称が「不屈のライオン」であり、アフリカを代表する最強チームの一つで、アフリカネイションズカップで5回の優勝を誇ります。
2002年の日韓ワールドカップの際、カメルーン代表チームがキャンプ地とした大分県の中津江村(現・日田市)との心温まる交流は、今でも日本で語り継がれているほどです。
というのも、カメルーン代表は、選手へのボーナス支払いなどを巡るトラブルにより、予定されていた来日スケジュールから5日も遅れて大分に到着。過疎化の進む人口約1,300人の小さな村では、皆が首を長くして待ち続け、メディアも連日この「遅刻騒動」を大々的に報じました。
5月24日の午前3時20分、ようやく村のスポーツセンターに到着した選手たちを、村民は真夜中にもかかわらず温かい拍手と歓声で迎えたのです。この温かさに感動した選手たちは、練習の合間に地元の高校生と交流試合をしたり、住民との壮行会を心から楽しんだりして、またたく間に相思相愛の関係となりました。
W杯本戦でカメルーンが試合を行う際、中津江村からは人口の約3分の1にあたる400人が緑のレプリカユニフォームを着てスタジアムへ応援に駆けつけたのです。そんなサッカーのご縁で、中津江村はカメルーンのメヨメサラ市と友好都市協定を締結し、その後20年以上が経過した今でも深い国際交流が続いています。
著者:浜田和幸
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