建造中の豪華客船で3度の火災、混乱する現場の声~三菱重工長崎造船所
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上層部の秘密主義に高まる不満
2度あることは3度というが、それだけ続けばもはや偶然とは言い難い。三菱重工長崎造船所で建造中の豪華客船「アイーダ・プリマ」において、今年1月だけでも3度の火災があった。すでに2度にわたって納期が延期され、これ以上の遅れが許されないなかでの出火について、「過重労働が強いられている作業員による嫌がらせではないか」との声もある。
だが、最も火の回りが大きかった1度目の火災においても、警察の現場検証は事件翌日の午前中に終了しており、午後から作業に取り掛かることができたという。工事のスケジュールには大きく影響せず、しかも電装工事の作業が急ピッチで進められている現場であったことから、復旧も容易であった。船の中にはすでに完成された区画があり、作業員の1人は「もし、そこで火災が起こっていたら取り返しがつかなかった」と話し、妨害工作ではないとの見方を示す。
その一方で、3度の火災が招いた現場の混乱は大きい。火災はいずれも夜間担当の作業員が働く午後8時過ぎに発生。三菱重工長崎造船所のセキュリティは厳しく、入場者は厳重にチェックされている。しかも、不審火を受けて船内には防犯カメラを設置済。現場には、“犯人”もすぐ見つかるのではないかという期待があるというが、まだ“犯人”につながる情報は発表されていない。それどころか、現場には、不審火に関する詳しい説明すらなされておらず、上層部への不満も高まっているという。
相次ぐ仕様変更と2つの命令系統
そもそも現場の混乱は、不審火騒ぎ以前から生じている。1回目の納期であった2015年3月時点で工事の進捗状況は半年以上遅れており、その遅れの原因はレストラン区画の電装工事にあった。下請け業者の作業班長は、「(発注者の)ドイツの会社から次々に仕様変更され、そのたびに工事がやり直しになる」と嘆く。発注者であるアイーダ・クルーズ社に対して強く出ることができない三菱重工長崎造船所に対して、現場は強い不満を抱いているという。また、工事には同社から派遣された外国人作業員が加わっており、2つの命令系統が存在しているという。このこともまた作業の遅れを招く原因の1つかもしれない。
アイーダ・クルーズから発注した豪華客船は2隻建造されている。火災が起こったのはその1番艦で、昨年末に納期の延長が発表された。2番艦の納期はもともと1番船の3カ月後に予定されており、1番艦nの3カ月納期延長はつまり2隻の納期が同じになることを意味する。4月に2隻の引き渡し式が行われるのだが、それについてはまだ不透明な状況だ。
三菱重工長崎造船所の下請け会社の関係者によると、「護衛艦の改修工事だけで十分採算が取れる」という。護衛艦の改修は定期的に行われるため、下請けとしては安定した収入の確保に繋がる。しかし「アイーダ・プリマ」の工事に作業員を割かなければならず、工期の相次ぐ変更は下請けにとっても経営計画に大きな影響をおよぼしてしまう。秘密主義の三菱重工長崎造船所が情報を出さないことについて、下請け、孫請け会社は不満を抱いている。
【平古馬 豪】
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