韓国経済ウォッチ~北朝鮮の核実験と南北統一(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
それでは、このような情勢をめぐって、各国の立場はどんなものであろうか――。
まず、アメリカの立場である。韓国は、政治や安保の面においては、依然としてアメリカとは強固な関係にある。しかし、経済的には最近、中国に傾斜しつつあるのが現実である。外交と経済の狭間で綱渡りをする韓国政府に、アメリカはもどかしさと一抹の不安も抱えていた。
それから、オバマ政権になってからアメリカ政府の財政問題で、海外の軍事費負担を減らすような傾向にある。しかし、アジアは今後成長が見込めるとても大事な地域で、アジアで中国が台頭し、下手をすると中国にアジアの覇権を取られてしまうのではないかという焦燥感も米国にはあった。
そのような時期に北朝鮮の核実験は、アメリカにとっては待っていたような喜ばしい事態かもしれない。朝鮮半島での緊張によって、アメリカは韓国に武器の販売ができる。それからこれを機に、韓国と日本に軍事費用の一部を負担させる方向に動く可能性も高い。
日本には集団的自衛権を暗黙のうちに了承することによって、日本に軍事費用の負担を担わせることにはすでに成功している。また北朝鮮の核脅威に共同に対応することによって、米日韓の結束を高める効果もある。中国の立場はどうだろうか。中国は、北朝鮮に対する制裁に慎重な立場である。韓国とは経済的にいくら密接な関係であっても、政治・外交は別の問題であるというスタンスである。中国は、北朝鮮とは関係が冷え込んでいるとは言っても、政治・外交的には最も親密な関係を維持している。今回のことでもわかるように、韓国は中国とは1つになれないことが明白である。それは今後も変わりはないだろう。
それでは、最後に韓国国内の反応はどういうものだろうか。
筆者はよく韓国で、「日本は放射能問題で大丈夫ですか」「日本で日常生活は全然問題ないですか」などといった質問を受ける。おそらく、日本は放射能問題で大騒ぎになっていて、社会全体に変化があることを期待した質問であろう。しかし、あまりにも平穏としている日本の日常生活の実態に驚く人も多い。
同じことが、韓国にとっての北朝鮮の核問題ではないだろうか。海外のマスコミでは北朝鮮の核問題が大きく取り上げられ、海外の親戚などから安否を問う電話などがかかってくる。しかし、韓国では誰も核実験で驚いていないし、騒然ともしていない。これは良いとか悪いとかを別にして、本当の一般市民の反応である。
筆者は高校時代に、北朝鮮が攻めてくるような戦争の夢もよく見た。その当時は金日成書記が還暦のパーティをソウルで開くという噂もあり、幼子心にも戦争が起こったらどうしようと心配していた時期もあった。しかし、北朝鮮と韓国との国力の差が開くにつれて、韓国では全面戦争になるとは誰も思っていない。もちろん局地的に北朝鮮の挑発はあるかもしれないが、一般国民としては、北朝鮮の核実験で日常が脅かされると思ってはいない。とはいえ、北朝鮮の行為に何の手も打てない現実に、無力感を感じているのも事実である。北朝鮮のこのような現実を踏まえたうえで、北朝鮮の核問題は解決していく必要がある。
(了)
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