惜しまれつつ閉店、タイ料理専門店「サラ リム ナム」
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1994年、まだ福岡にエスニック料理レストランが普及していなかった頃、福岡市のけやき通りに本格的なタイ料理専門店「サラ リム ナム」がオープンした。
店主の川邊眞理さんは、航空会社の客室乗務員として勤務していた頃タイに魅せられ、「タイ料理を通じてタイの魅力を伝えたい!」「アジアの玄関口・福岡に作る店を、物の交流と共に、人の交流(日本人とタイ人)ができる場所にしたい」との想いで同店を始めた。
「好きだから」という情熱をモチベーションにして起業できる川邊さんは、「こんなに大胆なことができる女性が福岡にいたなんて!」と世間の関心を集めた。料理もさることながら、店内装飾、食器など、細部にわたりタイ色満載の同店は、間もなく知る人ぞ知る名物店となった。「今日は『サラ リム ナム』で食事なの」という言葉は、エスニック料理好きの間では、“素敵な晩餐”を意味するものでもあった。
あれから20数年、2015年12月に耳にした「サラ リム ナム」閉店の予告は、ファンにとってまさに青天の霹靂。川邊さん自身、「苦渋の決断だった」そうだから、よっぽどの事情があったと察せられる。「移転による存続の可能性はなかったのか」という声もあったが、あのけやき通りの佇まいが、同店にはふさわしかったように思える。
閉店を告知してからの2カ月間は、遠方から馴染み客が来訪し、元スタッフも応援に駆け付けるなど、心温まる日々が続いていたようだ。1月には福岡でも積雪があったことから、仕入れ先取引業者の協力も得て1日だけ追加営業を行い、16年1月29日をもって営業終了した。
弊社では1998年夏に同店を訪れ、経営情報誌「IB」に取材記事を掲載している。取材では、「言葉じゃうまく言えないけれど、タイならではの雰囲気が好きです」と当時の川邊さんが応じている。たしかに「好き」という感情は言葉ではなかなか表現しづらいもの。弊社にとっても、懐かしい思い出だ。
【黒岩 理恵子】
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