2024年12月22日( 日 )

先人の知恵こそ未来図を知る鍵となる

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NPO法人 福岡歴史研究会 副理事長・事務局長 村上 啓資

歴史の再考

NPO法人 福岡歴史研究会副理事長・事務局長 村上 啓資 氏<

NPO法人 福岡歴史研究会
副理事長・事務局長 村上 啓資 氏

 現在の発展する福岡は、先人たちの営々たる努力の上に成り立っている。幕末から明治へと漸く近代日本の黎明期を迎えた頃、すでに国を憂う国士がいた。アジアに目を向け、革命に奔走する孫文を支援し、辛亥革命の成功に貢献した国際派がいた。女性の時代の先駆けとして光り輝く女性たちがいた。そして、自由民権運動のなかで誕生したのが玄洋社であり、専制を打破すべく国会開設を全国に先駆けて建白したのも福岡の先人であった。高場乱、頭山満、平岡浩太郎、箱田六輔、奈良原至、福本日南、杉山茂丸、末永節…これら福岡の先人たちの功績が語り継がれることなく不当に封印され続けることは、現在にとどまらず未来にわたる損失であり、不幸である。

 敗戦後GHQにより押された一面的な烙印を投げ返し、歴史的事実に光を当て生き生きと蘇らせたい。大谷理事長の強い想いから、1998年に起ち上げられた福岡歴史研究会。その実務を担い、会の発展に尽くしているのが事務局長の村上啓資氏である。

 村上氏はもともと(株)村上建材店の社長であったが、65歳を迎えたことを機に会社を清算し、現役を引退。そして以前から興味のあった福岡の歴史、とくに奴国・伊都国など、古代国家がすでに紀元前後に存在した福岡県に着目。2世紀後半からの邪馬台国連合につながったのではないかと興味を抱き、この国の成り立ちや文化の形成を考え、学ぶべく九州大学の史学科に聴講生として入学。弥生時代からの日本史、朝鮮史、中国史を学び東アジア全体の関連のなかで福岡の歴史的な位置付けを考察しようと思った。我が国草創にかかる『歴史』が必ずしも解明されていない原因は、「邪馬台国」問題が解き明かされていないことにも大きな原因があるのではと村上氏は言っている。

 中国の文献「魏志倭人伝」に書かれた邪馬台国までの方位と距離は、誠に理にかなった記述であり、永年の天文学からすでに暦を持って国家を運営していた中国の郡使一行が方向を極端に間違うことはないと思われるし、行く先々の里数をまず書いてから総距離を記し、その行程は船と陸行で何日かかると三重の方法で説明しているわけで、行先は『北部九州である』と倭人伝は明快に書いている。また考古学的にもこの頃の埋蔵遺物(鏡・鉄製品等)の発掘状況から見ても、当時の文化的最先端地域は北部九州であったことは確実で、これらのことからも村上氏は「九州説」を熱心に説く。興味を引かれる納得のいく説明である。

底知れぬバイタリティ

 衰え知らずの村上氏の探究心は、地場産業の復興、人材流出の阻止といった、地方再生に関わる問題を、郷土愛を含む先人の知恵から解決できないかという、新しい選択肢の提示につながっている。

 福岡の未来を担う次世代に地場の歴史を広め、福岡が持つ魅力を単なる地理的な優位で語られるアジアの玄関口としてでなく、福岡に住まう1人ひとりがルーツを知ったうえで胸を張り、「よかとこ」と言えるようにするため、村上氏は晩秋の時を燃やしている。

 福岡でも、多くの団塊の世代が第2の人生を歩み始めている。もちろんこれまでの労をねぎらい、ゆっくりするのもいい。しかし、その持てる知識、経験、時間を、地元・福岡の未来のために役立てることにも考えてほしい―。学び直す機会は福岡歴史研究会を始め、用意されている。
 途切れることなく語る村上氏は、福岡の未来を指し示す尊敬できる先達としての存在感に満ちている。

※記事内容は2015年8月31日時点のもの

<INFORMATION>
NPO法人 福岡歴史研究会
理事長:大谷 賢二
所在地:福岡市早良区西新4-4-5
設 立:1998年12月
TEL:092-833-7576
URL:http://www.geocities.jp/fukureki05

<プロフィール>
murakami_pr村上 啓資(むらかみ けいすけ)
村上建材の社長を務め上げた後、65歳を機に歴史を学び直し、現在では福岡歴史研究会副理事長・事務局長を務める。

 

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