2024年11月26日( 火 )

安保法施行、廃止求める市民連合が福岡にも結成される

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市民連合ふくおか結成後、アピールする参加者ら<

市民連合ふくおか結成後、アピールする参加者ら

 集団的自衛権の行使を可能とした安保法(安全保障関連法)が3月29日施行された前日、安保法廃止などを目指す市民連合が福岡県内でも結成され、「野党は共闘」「市民は連合」の声を上げた。学生団体SEALDsのメンバーや学者らでつくる市民連合は、全国組織が結成され、全国各地に広がっている。27日には、37都道府県57団体が参加して意見交換会を開いた。福岡でも、その波がうねり始めた。

 会の名称は、「市民連合ふくおか」。福岡県内の個人、団体有志で構成する。学者、弁護士らが呼びかけ人代表となって、結成準備を進めてきた。呼びかけ人には80人以上が名を連ねた(3月19日時点)。

 28日の結成集会には、学者、法律家、市民、学生ら約200人が集まり、「安倍政治の暴走を止めなければ、次の世代に禍根を残す」「今こそ市民の出番。安保法反対の議員を送り出して、憲法改悪を阻止し、立憲主義と民主主義を市民の手に取り戻そう」「私たちは、自分たちのやり方で、自分の色で、周りを照らすことができる存在だ。地方から中央へ逆照射して、(政治を)突き動かそう」などの挨拶・発言が相次いだ。

 市民連合ふくおかの理念と戦略は、これまでの市民運動にない特色がある。市民運動が直接、国会での多数派形成に関わることだ。目的には、(1)安全保障関連法の廃止を目指す、(2)立憲主義を回復し、憲法を尊重し、一人一人の個人が大切にされ、暮らしを守る政治の実現を目指す、(3)上記の目的を達成するため、衆参両院においてこれに賛同する議員が過半数に達することを目指す――の3つを掲げた。

 結成までは、準備会を4回開き、意見交換を繰り返してきた。3項目の目的は、机上の理論で整合性をとったのではなく、運動に取り組んできた市民、女性、学生らの活動や経験、実感を踏まえた議論を積み上げたものだ。
 結成集会では、安保法に反対するママの会@福岡の宮下彩代表は「選挙にどう関わったらいいか模索して、市民連合にたどり着いた」と話した。選挙に関わるようになったのは、「平和な生活がいつまでも続けられるように、平和な生活が世界のどこでもできるように」という想いがある。
 学生の熊川果穂さんは、安保法案に反対してデモや集会に参加した昨年夏以降を、「自分は声を上げられるのに声を上げないのかと思い、昨年の7月、声を上げるという次のステップにいこうと思った」と振り返る。それでも「選挙というと『ちょっといいや』という思いがあり、どうしたらいいか自分の中で定まっていない」。自分たちの社会をどうしたらいいかという考えを共有しながら、安保法廃止を目指したいという。

 市民連合ふくおかの目的には、憲法改正阻止や、自民・公明の国会議席数3分の2阻止の言葉はない。これは、安保法を廃止するため国会議席の過半数を目指す以上、必然的に自公の3分の2を阻止することになるからだ。また、立憲主義を回復し、憲法を尊重する政治を目指せば、憲法改正阻止はその中に含まれる。新自由主義やアベノミクスによってもたらされている格差と貧困、年金や医療・介護・保育の危機、TPPなどの課題も「一人一人の個人が大切にされ、暮らしを守る政治」という目的の中に含まれるという。

 当面の方針の1つとして、「安倍政権NO」の声を大きく広げていくと掲げているように、呼びかけ人らは、市民連合の目的が「伝統的な自民支持者や伝統的な公明支持者」にも届くととらえている。一党一派、特定の政治団体を応援するのではなく、立憲主義の回復などを目指す意味で、2015年夏の国会前に出現した「市民革命」の壮大な延長につながる運動といえる。

 呼びかけ人代表の1人、出水薫・九州大教授は「私たちは、残念ながら少数派だが、無力ではない。憲法が憲法として力を持つのは、市民が立ち上がることによってだ。去年の夏、憲法を守らせる力が見える形で立ち現れた」と指摘。少数派と多数派が入れ替わる糸口をつくるため、市民が姿を現し、政党や政治家を“ビビらせる”ことが必要だと呼びかけた。

【山本 弘之】

 

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