韓国経済ウォッチ~2次電池産業の勝者は?(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
前回で見てきたように、電気自動車はこれから本格的な普及が期待されている。
2015年の電気自動車向け電池の市場規模は3兆ウォンであったが、2020年には20兆ウォンに成長すると予想されている。14年の電気自動車向け電池の出荷量は9.7GWhであったのに対して、15年は58%以上の成長で 15.4GWhになっている。
電気自動車向けの電池市場では、日本は世界をリードしている。
パナソニックは、テスラモーターズと設立当初から強固な関係を維持しているし、電気自動車に力を入れている日産などがあり、技術だけではなく、大きな市場を持っていることも日本の強みである。とくに電池のコア部品である正極材、負極材、セパレータ、電解質の製造関連の特許を、ほとんど抑えているのは日本企業で、世界上位ランキングに数社も入っている。小型電池で経験した失敗を繰り返さないようにするため、日本企業は必死である。
ところが、電池の技術の壁は高く、よそが簡単にキャッチアップできるものではない。一方の中国はと言うと、中国はまだ技術的には少し遅れていることは否めない。だが、中国の強みは、原料を持っていることと世界一の大きな市場を持っていることである。電池の主素材は黒鉛だが、黒鉛は中国で生産されている。それから、中国は電池の材料においてもリン酸鉄を主力にしている。自動車の場合、安全性が優先されるので、重量を犠牲にしてリン酸鉄を選んでいる。リン酸鉄は鉄の一種なので、釘で貫通しても爆発しないほど安全な材料である。中国の電気バス、商用車の今年の電池市場規模は1万8,500MWhもあるが、補助金を中国政府はリン酸鉄系に限定しているので、韓国企業は中国で苦戦を強いられている。今現在、中国のBYDは、電気自動車向けの電池分野では、世界2位になっている。しかし、中国企業の躍進はこれからであろう。
それでは韓国企業は、どのような状況に置かれているだろうか。韓国には、去年まで小型電池において世界1位をキープしているサムスンSDIと言う会社があるし、その他にLG化学という世界的な電池会社もある。今まで LG化学はサムスンSDIに押されて、国内2位の座に甘んじるしかなかった。だが、今年からは様子が変わりそうだ。
LG化学は1947年に釜山に設立された会社で、LGグループの母体になった会社である。90年~2000年は、LGグループを牽引してきたのはLG電子であったが、2010年以降ではLGグループを牽引しているのは LG化学である。LGグループはグループの主力事業として電池事業を選定し、総力を上げている。LG化学は、売上高の半分にも相当する6,000億ウォンを研究開発に投資している。このような投資比率は、独BASF、米ダウケミカルくらいしかやっていない水準である。LG化学は、中国の上位10社の自動車会社のなかから半分の会社と契約を結んだり、現代、KIAだけでなく、GM、フォード、フィアットとも契約をしている。LG化学は、今年の売上高の目標を4兆ウォンに設定し、それに向けて邁進している。LG化学のこのような目標は、今年はクリアできそうだ。米ナビガントリサーチの評価によると、LG化学は電池会社の評価で世界一の点数を取っている。それに価格競争力においても、一番競争力を持っているとの評価だ。
もちろんサムスンSDIも、手をこまねいているわけではない。しかし、電気自動車向けの電池市場をめぐって、日本、中国、韓国の熾烈な戦いは、これから起こりそうだ。この市場の勝者はどこになるのか、世界が注目している。
(了)
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