2024年08月15日( 木 )

城ガールが巡る日本の名城~真田十万石のお膝元・松代城(7・後)

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 長閑な町にひっそりと佇む信州・松代城(長野県長野市)。今は静かなこの城も、川中島の戦いの重要拠点として、武田信玄の命で築かれた歴史を持つ。松代藩初代藩主となった真田幸村の兄・真田信之(信幸)により、松代の地は真田十万石の城下として栄えた。
 今回は“信州のお城レポート”第三弾として、松代城編をお届けする。

松代城との別れ

matusiro0 一通り城下を巡ったあと、松代城に戻ってきた。松代を経つ時間が迫っていたので、見納めとしてまずお堀沿いに松代城をぐるっと一周していると、二の丸から女性の歌声が聞こえてきた。「おお~さ真田の心意気~」とこぶしが入った歌声につられ、声がする方に歩いていく。

 実はこの時松代城では春まつりが開催され、二の丸にステージや出店が設けられていた。二の丸は3mほどの高い土塁の囲まれており、一部のお堀も復元されている。土塁には階段が設けられており、上に登ることができた。櫓跡などの石垣の上に立ったことはあるが、お城を囲む土塁の上に立つのは初めての経験だ。
 私は石垣が好きなので、お城を見るときは真っ先に石垣を確認する。そのため建物や土塁を見るのは石垣を堪能し終わったあとだった。しかし、今回の松代城めぐりでその考えが少し変わった。松代城にはいくつもの土塁が復元され、お城の形をより鮮明に伝えてくれる。今までただ眺めるだけだった土塁に実際登り、触れてみて、“土塁って面白い”という気持ちが生まれたのだ。
 新しいお城の楽しみ方を教えてくれた松代城。本当はいつまでも眺めていたいが、時間切れを迎えてしまう。名残惜しく感じながら、松代の町を後にした。

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川中島の戦いの舞台

 松代駅前からバスに乗り込み、川中島古戦場に到着した。
 この地は武田信玄と上杉謙信との長きに渡る合戦において、一番激しい戦いが繰り広げられたとされる場所だ。八幡原史跡公園という名前だったが、バス停の名前は川中島古戦場。正直この気遣いは有り難い。

singen_kensin バスの車窓から見えた古戦場跡は高い木に覆われ、中を伺うことができない。頭のなかで「鬱蒼と生い茂る草木の向こうに枯れ果てた荒野」という妄想をしながら、古戦場の中へと入った。すぐに八幡社(はちまんしゃ)の2つの社と、武田信玄と上杉謙信と一騎打ちを模した銅像が見えてきた。
 一騎打ちの銅像はどちらも厳しい表情をしているが、座った姿勢の信玄と、馬に乗った謙信とでは謙信が優勢に見える。頭のなかでは、“そういう見方をするものじゃない”とわかっているが、ふふっと笑ってしまう。
 銅像のすぐ横には、首塚(屍塚)があった。信玄は6,000人程の戦死者を、敵味方問わず葬ったといい、この塚もそのうちの1だ。「敵に塩を送る」という言葉は、この信玄の行動に感銘を受けた謙信が、恩返しとして塩不足に悩んだ武田に塩を送ったことが由来になっている。

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 「川中島代合戦図」という大きな看板を見つけたので、現在地を確認してみる。この古戦場跡が戦場の中心かと思いきや、実際はずっと下の方、武田軍の一番後ろ端だった。合戦図を見る限り、海津城(松代城)と古戦場跡とのちょうど中間地点に信玄の陣があったようだ。“思っていたのと何か違う・・”と思いながら古戦場跡を歩いていると、木々の向こうにとても大きな広場が見えた。花見をするカップルややキャッチボールをする親子、首塚があった場所は暗く静かだったが、この場所は明るく賑やかだった。徒歩3分ほどしか離れていない場所の温度差に驚きつつ、広場を見て回るもとくに遺構などは見つけられなかった。周囲が賑やかに楽しむなか、一人カメラ片手に足元を見渡す女性。“もしかして私不審者?”と気づき、広場から退散した。

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信州のお城巡りの終わり

 今回信州で巡った松本城・上田城・松代城は、どれも実戦を生きた城だ。どのお城も魅力的で、九州のお城とは異なる無骨さと気高さを感じた。高島城に小諸城、信州にはたくさんのお城があり、時間の都合上断念せざるを得なかった。しかし心残りがあればあるほど、“また来よう”という気持ちになるので、残念な気持ちはそのまま心に留めていくことにする。

 信州の地はどこも大河ドラマ・真田丸で沸きとても活気を感じた。真田の居城である上田城、幸村の兄が城主を務めた松代城、お城にあまり興味がないという方も、是非足を運んでほしい。

(了)
【城野 円】

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(中)

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