英EU離脱と世界経済への影響(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
それでは、イギリスのEUからの離脱は、世界経済および韓国経済に、どのような影響をおよぼすだろうか。
韓国におけるイギリスとの交易量は、韓国の全体交易量の1.4%に過ぎない。イギリスの比重が小さいだけに、貿易の面ではそれほど韓国経済に大きな影響はなさそうだ。
しかし、イギリスだけを考えると、そのような話も成立するが、世界経済はつながっている。そのため、今回のEU離脱による世界経済の悪影響は、貿易依存度の高い韓国経済にとって、もっと大きな影響をおよぼすだろう。それから、今年1月から4月の外国人投資のなかで、イギリスの資金は15%を占めていたが、この資金は今後流出する可能性が高いだろう。それに、韓国は今までヨーロッパへの輸出の拠点としてイギリスを活用してきたが、その戦略の見直しも迫られることになるだろう。
さらに、イギリスはユーロ決済の40%以上を処理しているが、イギリスがEUを離脱することになると、イギリスの金融ハブとしての機能は、今後どこに移ることになるのかも焦眉の関心である。
それだけでなく、イギリスのEU離脱で、スコットランド、北アイランドなどはイギリスから独立したいという動きもあり、それが実現すると、イギリス経済の弱体化にもつながる。
一部の専門家はブレグジット(Brexit:Britain Exitの造語で、英国のEUからの離脱を意味する)で円高が進み、それはむしろ韓国経済には好材料になると言う指摘もある。ところが、今回のブレグジットの最大の被害者は、中国であるとも言われている。中国はイギリスにかなりの投資もしているし、人民元を国際化するために、今まで多大な努力をしてきた。その結果、ロンドンは香港に次いで2番目に大きい人民元の流通市場であったのだ。
そのため、イギリスのEU離脱は、中国政府に戦略の修正を迫ることになる。また中国はヨーロッパ国家との交易の比重もかなり高いので、イギリスのEU離脱は中国経済にかなり影響がある。アメリカの場合は、イギリスを通じて、EUに影響力を行使してきた。しかし、イギリスがEUから離脱すると、EUに対するアメリカの影響力の低下は免れないだろう。
また、ドル高が進むことによって、米国の輸出が減少すると、アメリカ経済の減速をもたらすことになるので、予定していた金利上げを延期するか、むしろ金利を下げる可能性すらあるという。今回のイギリスのEU離脱は、それがいつ収まるのか、またどのような連鎖反応を起こすかなど、不確実な要因が多い。
イギリスの国民投票で離脱が決まったとしても、国民投票は強制力がないという解釈もあるし、2年間の交渉の過程で、どのようなことが起こるかわからないという意見もある。離脱することを脅しの材料に、党内の離脱派を抑えると同時に、EUへの交渉を有利に進めようとした狙いがキャメロン首相にはあったようだが、国民投票の実施は軽率な判断であったという意見が支配的である。
一部では、今回のイギリスの離脱は、ショック療法であって、いろいろな問題点を抱えているEUの結束を強くするための方便に過ぎないという意見もある。各国政府は協調することによって、早期にこの問題に対する不安を取り除き、世界経済を安定させてほしい。
(了)
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