子宮頸がんワクチン被害者、国と製薬会社に損害賠償求め提訴
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子宮頸がんワクチンの副反応によって健康被害を受けたと訴える被害者63人が7月27日、国と製薬会社2社を相手取って総額約9億4,500万円の損害賠償を求める訴訟を東京、大阪、名古屋、福岡の4地裁に提訴した。福岡地裁には、16歳から22歳の女性13人が総額約1億9,500万円の損害賠償を求めて提訴した。
被害者らは、体の痛み、頭痛、睡眠障害、けいれん、激しい生理痛などの症状を訴えている。症状は固定していず、後遺症の有無や程度が確定していない。そのため、今回の提訴では、現時点で生じている精神的苦痛に対する慰謝料として1人あたり1,500万円の賠償を求め、将来請求額を増額する予定。
原告・弁護団は、裁判を通じて、責任を明らかにし、被害者の救済、原因究明、治療法の確立などにつなげたい考えだ。訴状によると、国が有効性・安全性を確保せずに子宮頸がんワクチンを承認し、情報提供に不備があったにもかかわらず、緊急促進事業や予防接種法上の定期接種として積極的勧奨をしたなどとして、国家賠償責任を追及している。製薬会社のグラクソ・スミスクライン(株)=以下、GSK社=、MSD(株)=MSD社=に対しては、子宮頸がんワクチンの承認当時、「重篤な副反応の危険性を冒しても使用するほどに有効性が認められない」のに製造販売したなどと指摘し、損害賠償を求めている。
子宮頸がんの主な原因とされるウイルス(HPV)に感染してもがんを発症する確率が極めて低く、検診によって早期発見し予防できる病気であり、有効性に乏しいワクチンだと原告らは主張している。国は、子宮頸がんワクチンとして、GSK社の「サーバリックス」を2009年に承認し、MSD社の「ガーダシル」を2011年に承認。同ワクチン接種への公費助成が国家予算化され、緊急促進事業として全国の自治体で接種が実施された。2013年3月に予防接種法の定期接種とされたが、同年5月、厚労省は都道府県知事に対し積極的な接種勧奨を控えるように勧告している。
福岡地裁に提訴した13人は、10代が10人、20代が3人。ワクチン接種した時期は、12歳~17歳。2011年1月から13年5月にかけて、GSK社の「サーバリックス」やMSD社の「ガーダシル」を接種した結果、過剰な免疫反応を中心とする多様な副反応被害を受けたと訴えている。原告の居住地は、福岡県5人、山口県1人、熊本県2人、長崎県2人、沖縄県3人。
提訴後、原告らが福岡市内で記者会見した。
福岡県の梅本美有さん(18)は、中学3年から高校1年にかけて3回、ワクチンを接種した。3回目の接種後、激しい痛みに襲われ、吐き気や頭痛、全身の倦怠感などが続き、朝起きることができず、高校に通い続けることができなくなった。肩や腰など体中に痛みやしびれがあり、強い光で目が痛むので室内でもサングラスをかけている。
「今も痛みを我慢してここにいる。毎日杖がないと歩けない。変な目で見られることがある。身の置き所がない」と訴えた。ギターが好きなので軽音楽部のある高校を選んだが、ギターが重くて弾くこともできない。高校も転校せざるを得なくなり、単位制の高校を今年春卒業したが、希望だった大学進学をあきらめた。保育士志望だったが、「この体では、保育士になれない」と夢を奪われた。「ワクチン接種前の体を返してほしい」と求めた。
福岡県の別の原告(18)の母親(45)は、娘にワクチン接種後の頭痛や倦怠感が現れ、進学した高校を休学・退学したと訴え、「原因の究明、治療方法が確立するように思い、提訴した」と語った。厚生労働省は、取材に対し、「訴訟については、訴状が届いていないのでコメントを差し控える」「ワクチン接種と因果関係が明確でない有害事象によって苦しんでいる方に寄り添いながら支援を行っていきたい」と述べた。
GSK社は「訴状を受け取っていないので、コメントは差し控える」、MSD社は「訴状を受け取ったら、MSDは法廷で証拠を提出する考えだ」との声明をそれぞれ公表した。弁護団は7月28、29の両日、子宮頸がんワクチン被害の電話相談窓口(ホットライン)設置し、被害者の相談に応じる。ホットラインは、電話092-409-8333、HPVワクチン薬害訴訟九州弁護団(はかた法律事務所内)。受付時間は、午前10時から午後4時。両日以降も、ホットラインを継続する。
【山本 弘之】
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