2024年11月27日( 水 )

安倍首相、アジア諸国の大戦犠牲者への追悼を忘れるな

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、日本がポツダム宣言を受諾し無条件降伏することが日本国民に告げられた1945年8月15日から71年がたった今、平和憲法破壊へと進む安倍晋三首相を痛烈に批判した、8月15日付の記事を紹介する。


71年前の8月15日、日本がポツダム宣言を受諾して無条件降伏することが日本国民に伝えられた。この内容は「大東亜戦争終結ノ詔書」に記され、昭和天皇による朗読音声が8月15日に放送された。日本のポツダム宣言受諾を受けて、9月2日に東京湾上のアメリカ戦艦ミズーリ前方甲板上で日本政府による降伏文書への署名が行われた。

したがって、終戦の日は9月2日であって8月15日でない。また、正確に表現すれば「終戦の日」ではなく「敗戦の日」である。8月15日に開催された戦没者追悼式で安倍晋三氏が内閣総理大臣として式辞を述べた。安倍氏は

「あの苛烈(かれつ)を極めた先の大戦において祖国を思い、家族を案じつつ、戦場に斃(たお)れられた御霊(みたま)、戦禍に遭われ、あるいは戦後、はるかな異郷に亡くなられた御霊、皆様の尊い犠牲の上に、私たちが享受する平和と繁栄があることを片時たりとも忘れません。衷心より、哀悼の誠を捧げるとともに、改めて敬意と感謝の念を申し上げます。いまだ帰還を果たされていない多くのご遺骨のことも、脳裏から離れることはありません。おひとりでも多くの方々が、ふるさとに戻っていただけるよう、全力を尽くします。」

と述べた。また、「戦争の惨禍を決して繰り返さない」と述べて不戦の決意を強調した。
しかし、アジア諸国への加害と反省を述べなかった。アジア諸国への加害と反省に触れないのは4年連続のことだ。昨年8月14日に安倍首相が発表した「戦後70年談話」では、次の表現が用いられた。

「何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実。」
「我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。」
「こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。」

「日本の加害責任」、「痛切な反省」と「心からのお詫び」が明記され、「歴代内閣の立場は揺るぎがない」とした。「戦没者追悼式」であるなら、その「戦没者」には、日本がアジア諸国に与えた「何の罪もない人々」への、「計り知れない損害と苦痛」による「戦没者」が含まれているはずである。
「戦没者追悼式」で、アジア諸国への加害と反省、お詫びに言及しないのは適正でない。

安倍首相は昨年の70年談話で次のように述べた。

「日本では、戦後生まれの世代が、今や、人口の八割を超えています。あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。しかし、それでもなお、私たち日本人は、世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。」

支離滅裂である。根本的矛盾があると言わざるを得ない。「私たち日本人」が、「世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合」う必要があるなら、過去の加害責任に真正面から向き合うべきである。

「真正面から向き合う」ということは、歴史を直視し、痛切な反省を示し、心からの謝罪をすることである。歴史の事実を直視し、反省し、謝罪する行為は、反省し、謝罪する本人が過去の過ちを犯したということではない。
国の先人による過去の行為に対して、その国の子孫として反省の念を持ち、謝罪するということなのである。

ドイツの場合、ナチスの犯罪に対する責任が明確に処理されてきたが、日本の場合には戦争責任が明確に処理されてこなかった。そのために、歴史に向き合うという姿勢がおろそかにされてきたのである。そのおろそかにされてきた結果として、歴史の事実が歪曲され、過去の行為そのものに対する正当化の論理が首をもたげている。

日本は過去の反省に立って、戦争を放棄し、戦力の不保持、交戦権の否認を定めた。これが日本国憲法である。そして、憲法は国の基本法であるからこそ、公務員に憲法尊重擁護義務を負わせた。安倍政権は歴史を直視することを忌避し、憲法を破壊する方向に突き進んでいる。

「戦没者追悼式」では、日本が加害責任を負うアジア諸国の人々の犠牲者に対して、痛切な反省と心からのお詫びを明示して、その御霊を追悼するのが適正である。平和主義を否定し、戦争への道を突き進む安倍政権を可能な限り早く退場させなければ、この国は再び道を誤ることになるだろう。

※続きは8月15日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1514号「歴史から目をそらし自己正当化する弱き者」で。


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・植草一秀の『知られざる真実』

 

 

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