周波数オークションはなぜ導入されないのか?(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
私たちは、スマホ(スマートフォン)で音声通話をはじめ、インターネット検索、動画の閲覧など、いろいろなことを楽しんでいる。このようなサービスは無線によって実現されているが、実は電波が高容量の音声や動画、テキストなどのデータを迅速に運んでくれるために可能なことである。工場を建てようとする場合に、まず土地を確保しなければならないように、無線サービスを実施するためには、まず周波数の帯域を確保する必要がある。
なお周波数とは、電波が空間を移動する際に1秒間に振動する回数である。1MHzは100万回の振動を、1GHzは10億回の振動を表す。ところで、テレビやラジオなどの放送で実際に電波を利用している放送局や、携帯電話会社などは、国から周波数を割り当てられて事業を営んでいる。その見返りとして、放送局や携帯電話会社は、電波利用料というものを納めている。
日本では、放送局も携帯電話会社も許認可事業であり、ほとんど新規参入がない状態のため、一般国民にとって「電波利用料」はあまり縁のない言葉かもしれない。電波法と総務省の資料などによると、電波利用料は違法電波による混信障害などから電波環境を守るための経費を徴収する目的でつくられた制度である、としている。しかし現在、世界の多くの国は、限られた共有の資産である電波を入札にかけ、最も高い金額を提示したところに落札される「周波数オークション」を実施している。
それでは、周波数オークションとはどのような制度で、それはなぜ必要なのかを、今回取り上げて見よう。周波数オークションを初めて導入したのは、ニュージーランドである。しかし、1990年代の半ばにアメリカがこの制度を導入することになると、その後、ヨーロッパなどでも次々に導入されるようになった。韓国も、国が審査をして電波を割り当てる「電波割り当て制」を実施していたが、2011年から周波数オークションにシフトしている。
ところが、日本では民主党政権時代に周波数オークションを導入しようとする動きはあったが、その後、安倍政権になり結果的には導入されなかった。周波数オークションを導入したアメリカには、「FCC(Federal Radio Commission)」という組織がある。ここは電波に関する行政を行う組織であり、時の権力から電波の行政を切り離し、独立的に運営する行政委員会である。
一方、日本はというと、電波を管轄する独立した組織はなく、総務省でこのような行政を担当している。日本では今でも電波割り当てにこだわっており、周波数オークションをまだ行っていないが、それは世界的なトレンドからすると、先進国のなかでは数少ないケースに当たる。日本の電波行政は、民間の活力を活かしていないだけでなく、電波という国民の共有の財産を有効に活用していないのが現状である。現在、世界ではモバイル通信とインターネットの技術進歩が盛んであり、今後もこの分野は大きな成長が見込まれている。周波数オークションは、このような流れのなかで、限られた資源にさまざまな企業が参入できるようにし、競争を促し、産業を活性化させる大きな武器となり得る。
(つづく)
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