2024年12月24日( 火 )

福岡市4百貨店のうち3百貨店が増収~インバウンド消費が明暗を分ける(後)

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1m2当たりの売上高は鹿児島の山形屋がトップ

elevator 百貨店がどれだけの競争力を持っているのか、売上高を比較するだけではわからない。小売りの業績の目安となる指標が、1m2あたりの売上高である。日本百貨店協会の資料によると、全国百貨店の1m2あたり売上高は、1991年(暦年)の192万円が最高だった。バブルの余韻にひたっていた時期だ。その後は右肩下がりを続けたが、15年(暦年)はインバウンド効果で102万円に回復した。

 日経MJの調査には、店舗別の売上高と店舗面積は載っているが、1m2あたり売上高の記載はない。そこで日経MJのデータをもとに、九州地区百貨店の1m2あたり売上高を算出した。その順位をまとめたのが下記の表だ。rank 1m2あたり売上高で全国一は、伊勢丹新宿本店の387万円である。
 九州の百貨店で1m2あたり売上高のトップは、鹿児島の山形屋の147万円。2位は岩田屋本店の146万円で、インバウンドの追い風を受けて激しく追い上げた。3位が博多大丸の128万円。老舗百貨店である熊本の鶴屋百貨店は80万円、大分のトキハ本店は73万円、北九州の井筒屋本店は69万円と、全国平均を下回り苦戦した。

インバウンド特需が消えても博多阪急は増収

 15年度で、インバウンド特需は終わった。中国政府は“爆買い”を規制するため、今年4月から、海外で購入した商品を中国国内に持ち込む際の課税を強化する措置を実施した。品物によっては、最大で60%の税金が加算された。これで“爆買い”が消えた。

 日本百貨店協会がまとめた、16年7月のインバウンドの売上シェアは2.6%。購買客数は13.7%増と拡大傾向にあるが、売上高は21.0%減と大きく落ち込んだ。高額商品を買わなくなったからである。

 訪日観光客で潤っていた福岡の百貨店は、今年に入ってからインバウンド特需が剥げ落ちた。
 外国人に知名度が高い「三越伊勢丹」ブランドの岩田屋本店と福岡三越を経営する岩田屋三越が、インバウンド商戦で一人勝ちした。その岩田屋三越と博多大丸とも、売上高の前年割れが続く。7月は猛暑の影響で、紫外線(UV)対策を施した日傘、スカーフの売れ行きが好調で、前年を大きく上回ったが、消費が完全に回復したわけではない。

 一人気を吐いているのが博多阪急。11年3月にJR博多駅のターミナル百貨店として開業して以来、4期連続の増収(12年度0.5%増、13年度8.0%増、14年度4.5増、15年度3.7%増)。インバウンド消費の効果は薄かったが、今年に入っても4月を除いて売上高は前年を上回っている。「ターミナルデパートは強し」を改めて見せつけた。

hyakkaten

(了)
【森村 和男】

 
(前)

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