最大手の韓進海運が法廷管理になった背景(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
韓国海運業の最大手である韓進(ハンジン)海運は、結局8月31日に、法廷管理に入ることになった。その間、韓進海運の経営再建をめぐって、業界関係者、政府、債権団の間では意見が分かれていたが、債権団からこれ以上の支援は難しいという決定があった翌日に、韓進海運は法廷管理を申請した。
「法廷管理」というのは、日本の会社更生に当たるもので、今後、会社の存続価値と清算価値を比較し、会社を立て直すか、それとも清算するかを決定する。ところが、韓進海運は課題山積で、おそらく清算になるだろうという意見が多数を占めている。
韓進海運は、1977年に朴正照元大統領の薦めで設立された会社である。創業者は、大韓航空を創業したことでも有名な趙重勲(チョウ・ジュンフン)氏で、今は趙氏の長男の趙亮鎬氏(チョウ・ヤンホ)が会長を務めている。韓進海運は、韓国の輸出の増加とともに、順調に成長し、92年には売上高1兆ウォンを記録した。
ところが2002年、創業者の趙重勲氏が死去。長男の趙亮鎬氏は大韓航空の経営を任され、韓進海運の経営は3男の趙秀鎬(チョウ・スホ)氏が任せられた。ところが05年、韓進海運の経営を引き継いだ趙秀鎬氏は持病でなくなり、夫人である崔恩瑛(チェ・ウンヨン)氏が代わりに韓進海運の会長に就任する。
ある意味で韓進海運は、このときから変調をきたしている。海運業は当時順調に伸びていた時期でもあり、「韓進海運を誰が経営をしても問題ない」という驕りがあったのかもしれない。
さらに、08年にはリーマン・ショックが発生し、取り扱い貨物量が急激に減少。市況が下落する。経営難に陥った韓進海運はこのとき、経営権を今の趙亮鎬氏(チョウ・ヤンホ)氏に譲っている。その後、韓国海運は、今年の上半期も4,730億ウォンの赤字を計上している。現在の負債は5兆6,000億ウォンで、負債比率は約1,000%に達している。業績不振が続いているなかで、韓進海運に短期的に必要な資金は、1兆~1兆3,000億ウォンとされている。
この流動性危機に対して、業界では「海運業は国の基幹産業で、これを失うと損失はもっと膨らむので支援すべきだ」と主張している反面、債権団では「韓進グループとオーナー一家の積極的な協力が前提条件で、税金を注ぎ込むことには慎重を期するべきだ」と正反対の主張をしていた。
債権団は支援をするにしても、限度額を設定したうえで、これ以上は応じないとしていたが、双方の溝は埋まらず、結局、韓進海運は法廷管理になったのである。(つづく)
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