2024年12月22日( 日 )

看板商品と店舗再編に注力し、来たるべきHD化に備える(後)

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(株)如水庵

官兵衛効果の揺り戻しは想定。上昇軌道に乗せる営業戦略を構築中

 同社では大河ドラマにあやかり、「官兵衛の赤合子」の他に2点の新商品を企画した。実際、ドラマの影響は絶大だったようで、放送前後の18カ月間には関連商品まで販売量を伸ばし、売上を3億2,000万円も押し上げた。
 放送終了の翌年には増額分が2億5,000万円まで下降し、本年度はドラマ放映以前の正常値に戻ると予測する。ただ、業績推移については、森社長がドラマ化の時点である程度想定しており、来年度は再び上昇軌道に乗せるべく、新たな営業戦略で年商30億円超えに挑む。

 一昨年11月には、福岡城址内の舞鶴中学校跡地に開発された三の丸スクエアに「如水庵福岡城店」を出店した。福岡城址、大濠公園一帯は、福岡市が進める「セントラルパーク構想」の一環で整備が進められており、三の丸スクエアには市から出店要請を受け、応募15社のなかから同社が選ばれたという。店舗は約500万円を投資した50坪ほどの和カフェ業態で、菓子や抹茶の他に軽食(うどん、そば、カレーライス)が楽しめる。
 「さくらまつりなどのイベント時を除き、集客はまだまだ多くありません。市の計画では観光客を誘致するとのことでしたが、駐車場は天神を訪れるマイカー客や待機の観光バスに利用されるケースの方が多いようです。目下のところはのぼりを立ててアピールしたり、経費面を削減したりしている状況です」。

 和カフェは昨年5月に出店した藤崎店の2階でも展開。こちらは「甘味処藤茶寮」として、お客自身が抹茶を点てることもできる。直営店展開では年商5,000万円を出退店の分岐点とし、全体の売上を下げないようにビルド&スクラップを進める計画だ。

数年後をメドに持株会社へ。次男と四男が事業を引き継ぐことに

tukusimoti 如水庵では、新商品の売上目標を年間1品1億円程度に想定している。幸い、最中「黒田五十二萬石」は、売上を3倍増させた。パッケージを刷新するなどの官兵衛効果で、定番商品にスポットが当たったかたちだ。
 もっとも、同社の顔となるのは、「筑紫もち」だ。戦略的にも単品を伸ばすのが一番収益をもたらすことから、マーケティング戦略を見直した。その際に実施したアンケート調査では、「あれほど面倒で、手が汚れ、食べづらいお菓子はない」との意見があがった一方、「だから、食べるのが楽しい」という意見もあったという。

 そこで、森社長は新たな需要喚起を促すために、休止していたテレビCMを再開した。企画にあたっては、アンケート結果と子息から聞いた「筑紫もちをとことん語れる友人がいる」との話をベースに、CMはマニアが動画サイトに投稿するような面白い内容に仕上げた。ファン流のマニアックな食べ方を「博多作法」という流議で括り、「三段流」、「蜜の池流」、「別添流」とシリーズ化。思わず吹き出してしまいそうな作風で、昨年暮れにはスポットで集中投下する一方、YouTubeでも流している。

 「筑紫もちは昨年7月に10年間据え置いた価格を120円(税込)に値上げしました。販売個数は15%程度落ちていますが、12%ほど値上げした分、粗利益は改善しています」。

 事業継承も現実味を帯びて来ている。数年後をメドに如水庵グループを持株会社にして、(株)五十二萬石本舗、(株)如水庵、 (株)味蔵を傘下入りさせる。専務である二男が代表に就き、四男とともに事業を支える。
 「日本一のお菓子屋になれ」は、森社長の父正美氏の遺志だ。子息らはこれを受け継ぎ、「品格と風格ある世界一の老舗菓子舖を目指す」ことになる。

(了)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:森 恍次郎
所在地:福岡市博多区博多駅前2-19-29
設 立:1962年6月
資本金:6,100万円
TEL:092-940-0052
URL:http://52-net.com

<プロフィール>
mori森 恍次郎
1947年11月、福岡市生まれ。九州大学経済学部卒業後、70年にガンで他界した父・正美氏の跡を継ぐ。77年には「筑紫もち」を売り出し、同社を代表するお菓子に育て上げる。89年、黒田如水への深い尊敬の念から、販売会社を如水庵と改名する。

 
(前)

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