素振りのように打つ
-
寒い日が続くと練習場からもついつい足が遠のきますよね。でも冬の練習は、春によい結果をもたらしてくれます。今回は練習場に行かなくても出来る素振りの話。
僕は高校1年生の秋にプロゴルファーになりたいとゴルフを始めました。指導を仰いだのは当時香椎スポーツガーデンに所属していた吉武敏郎プロ。初めて会った日、吉武プロから1本のアイアンを渡されました。クラブの底には3という数字が書いてあります。握り方と構え方を教わり、簡単にスイングの指導を受けると吉武プロは言いました。「これからそのクラブで毎日素振りをしなさい。いいと言われるまでボールは打っちゃだめだぞ」
その日から僕は500~600スイングを一日のノルマに、毎日素振りをしました。まだ1球もボールを打ったことがなかったので、ボールがどんな感じで飛んでいくかというイメージも分かりません。ただひたすら目一杯のスピードでクラブを振るだけ。前後の打席で気持ちよさそうにボールを飛ばすおじさんたちに挟まれての「エアーゴルフ」は全く面白くありませんでしたが、プロの教えを守りクラブを振り続けました。初めてボールを打ったのは素振りを始めてから1か月後のこと。あの日のことは今でも忘れていません。1球目はトップしてゴロ。しかし2球目!僕が打ったボールは大きな弧を描いて真っすぐ飛んでいき、ネットの200と書かれているところに当たりました。3球目も4球目も同じように飛びました。振り返ると吉武プロがニコニコしながらお客さんたちと話しています。
「この子、今日初めてボールを打っているんですよ。しかも3番アイアンで!」吉武プロがそう言うと「えー!初めてで3番アイアン?すごいね!天才や!」お客さんの驚く声が耳に届きました。確かに真っすぐ飛んで気持ち良かったのですが、僕自身はなぜ真っすぐ飛ぶのか、どこがすごいのかまったく分かりませんでした。ただいつもの素振りと同じように全力でクラブを振っていただけだったのです。ゴルフでは素振りの練習をする人は少ないですよね。ほとんどの人が道具を揃えるとすぐに練習場へ行きボールを打ちます。コーチについて基礎的な動きから習うならまだしも、クラブもろくに振れないのにいきなりボールを打って真っ直ぐ飛ばすのは難しいです。何度打ってもちゃんと当たらないので、その内にボールに当てようとする。このボールに当てようとする動きは右肩が突っ込むアウトサイドインの軌道を誘発するゴルフでは一番ダメな動作です。ボールを当てようとするのではなく、自分を中心に円を描くようにクラブを振る。つまり素振りと同じように振ることがとても大事なのです。
ちなみに初心者なのに「3番アイアンで真っすぐ200ヤード飛ばす、信川竜太=天才説」は3日間ほどで崩れました。4日目に少し曲がりはじめ、1週間後にはミスショットのほうが多くなりました。もっと真っすぐ、もっと遠くへという気持ちが芽生え、素振りと同じ気持ちでボールを打てなくなったからだと思います。いつも素振りのように打てるように、春のゴルフシーズンに向けて寒い冬の練習はぜひ素振りを取り入れてみてください。
▼関連リンク
・NBFスポーツ塾<PROFILE>
信川 竜太 (のぶかわ りゅうた)
1971年3月27日生まれ。(株)スリーバーズ代表取締役。スポーツキャスター、DJ、MC、リポーターとしてスポーツを中心にテレビ、ラジオなどで活躍中。その一方で、ゴルフコーチとしても活動している。信川氏がゴルフの道を志したのは福大大濠高校1学年時。卒業後、フロリダ州ブロワードジュニアカレッジに入学(のち、フロリダ・リン ユニバーシティーに編入)。在学中、トーナメントでタイガー・ウッズの上位に入る結果を残した。2006年1月に(社)日本プロゴルフ協会 PGAゴルフティーチングプロの資格を取得。10年10月、福岡市東区多の津にスポーツ塾を開講した。関連キーワード
関連記事
2024年11月20日 12:302024年11月11日 13:002024年11月1日 10:172024年11月22日 15:302024年11月21日 13:002024年11月14日 10:252024年11月18日 18:02
最近の人気記事
おすすめ記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す