【検証】八幡物産『北の国から届いたブルーベリー』届出撤回の顛末(6)
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日本アントシアニン研究会(矢澤一良会長)が昨年5月9日付で裁判所に提出した答弁書では、八幡物産(株)との過去のやり取りを「公開する」との警告を同社に対して発するに至った経緯をつぶさに記している。その内容は、すでに本稿(1)から(4)に詳述したとおりだが、答弁書ではさらに、八幡物産が公開の阻却要因として挙げた「公共性」「公益性」「真実性」「相当性」に対して、最高裁の判例を示し、債権者が研究会の表現行為を差し止めるためには、以下の4要件をすべて満たす必要があるとして反駁した。
1.公共の利害に関する事項に係るものといえないこと、2.専ら公益を図る目的のものでないことが明白であること、3.その内容が明らかに真実ではなく、あるいは、明らかに論評としての相当性を逸脱していること、4.被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあることについて疎明した場合についてのみ例外的に認められるべきである。
日本アントシアニン研究会は上記の4要件について、以下のとおりに「公開すること」の正当性を主張している。
研究会は債権者とのやり取りについて公開しようとしていた内容が健康食品の機能性、安全性、品質管理に関するものだとした上で、食品安全委員会が2015年12月8日の第587回食品安全委員会で取りまとめた「いわゆる『健康食品』について」とする報告書を引用し、健康食品のリスク情報を公開する必要性を訴えている。以下に要約して紹介する。
食品安全委員会は「国民の皆様へ」と題するメッセージを発しており、そのなかでは「今や国民のおよそ半分の方々が、こうした『健康食品』を利用されているという調査もあり、『健康食品』市場が拡大しています」と、健康食品が国民に広く利用されている旨を述べた上で、「『健康食品』で健康を害することもあります。しかも、そのような情報は皆様の目に触れにくいのが現状です。消費者は、『健康食品』のリスクについての情報を十分に得られないまま、効果への期待だけを大きくしやすい状態に置かれていると言えます」、「『健康食品』については、多くの人での何年にも及ぶ長期間の科学的研究が少なく、安全性や有効性が確立しているとは言えません。『健康食品』を利用するかどうかはあなたの判断次第です。信頼のできる情報を基に、あなた自身の健康に役立つ選択をしてください」と述べ、消費者が健康食品のリスクに関する情報を十分に得られない状況について強い懸念を表明している。
また、(「健康食品」についての19のメッセージの)17番目のメッセージとして、「『健康食品』を摂るかどうかの選択は『わからない中での選択』です。以上のように、『健康食品』は安全性、品質、有効性などいずれの点でもわかっていないまま販売されているものが少なくありません。『健康食品』を摂るかどうかを決めることは、そういったわからないことが多い中での選択と言えます。効果についての情報だけではなく、健康被害についての情報も得て、自分の状況をよく考えた上で選択することが大切です」と書かれており、消費者が健康食品を選ぶ上では、あらゆる情報が重要であることを強調されている。
このような社会情勢下においては、本件健康食品という健康食品の機能性、安全性、品質管理に関する情報は、公共の利害に関する事実に該当することは明らかである。
(つづく)
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