2024年11月25日( 月 )

サントリーサンゴリアスの本物の強さとは

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rugby1 1月29日(日)、「第54回日本ラグビーフットボール選手権大会」の決勝が、秩父宮ラグビー場(東京都港区)で開催。ジャパンラグビートップリーグ(TL)1位のサントリーサンゴリアスと、同3位のパナソニックワイルドナイツが対戦した。結果は、15-10でサントリーが勝利し、4季ぶり7度目の優勝となり、TLとの2冠を達成した。サントリーは、TLリーグ戦と日本選手権を通して、無敗での有終の美を飾った。

 今シーズン最後の大一番である日本選手権決勝。その大一番にふさわしい、高いレベルのラグビーを両チームとも披露した。
 サントリーはノートライ、パナソニックは1トライという、堅守が光ったゲームであった。規律が高いチームディフェンスと同時に、1人ひとりのタックルスキルの高さも目を見張った。ディフェンス網が破られても、カバーし、タックルで仕留める修正能力の高さ。何よりも、きちんと体を当ててタックルするという、お手本のようなプレイが多く見られた。
 当然、日々のトレーニングにおいて、ウエイトトレーニングや体幹トレーニングなどのフィジカル系の鍛錬を積み重ねているという前提で、ディフェンス・タックルのトレーニングを基本からきめ細かく、スキル・テクニックとも実施していることがわかった。両チームとも、ディフェンスとしての力は出し切ったのではないか。

 勝負の分かれ目となったのは、フォワードのハードワークにおいて、わずかながらサントリーが優っていたようにみられた。それはノーサイド直前、パナソニックが連続攻撃でサントリー陣右22mライン付近まで攻め込み、一瞬ボールがイーブンになったときに、サントリーのジョージ・スミス選手が“身を挺して”イーブンボールを確保し、サントリーがボールキープしたのだ。このプレイを、ラグビーでは「セービング」と呼ぶが、近年、どのカテゴリーでもあまり見ることができない。このセービングはとても地味なプレイだが、このプレイが常にできるプレイヤーは、一流になれる素養がある。
 ジョージ・スミス選手は、ラグビー関係者なら誰もが知る世界的な選手で、オーストラリア代表111キャップ(テストマッチへの出場数)保持者であり、南半球やフランス、イングランドのプロリーグで経験を積んだ、百戦錬磨のプロプレイヤーである。その世界的なプレイヤーが、ラグビーの基本であるセービングをしてボールを確保したところに、サントリーの本物の強さを確認できた。
 ジョージ・スミス選手を手本に、サントリーのフィールド上の15人全員が、簡単に倒れることなく、また倒れてもすぐに立ち上がって次のプレイに備え、参加しているハードワークは、どこよりも優れていた。サントリーのプレイヤー全員(メンバー外含め)が、トレーニング時より自身のすべきことを地道に実践し、常に準備していたことがわかる。

 ある強豪チームの指揮官によると、「サントリーは、全員がアグレッシブ・アタッキング・ラグビーのチームスタイルを理解し、ゲームのいかなる局面でも、それを完遂する姿勢が明瞭であった。また、戦略・戦術をシンプルにして落とし込んでいた。そしてベースとなるスクラムとラインアウトが強くかつ安定し、全員がスペースへのアタック能力がどこよりも長けていたことに加え、エラーしても修正する能力がどこよりも高かった」と、サントリーの強さを分析している。

 一方、パナソニックのプレイヤーも、80分間にわたる効果的なキックやパントを使ったアタックと、献身的でかつ緻密に連動したコミュニケーション豊かなディフェンスで、サントリーの攻撃を封じ込みノートライとしたが、自陣でのペナルティが少々多かったのが悔やまれる

 サントリーの強さは、来期もより進化していくことが予想される。
 それは、沢木敬介監督が自らを厳しく律して仕事を行っていること。また、厳しいマネジメントのなかでも、各々のプレイヤーを尊敬した姿勢で日々チームビルディングを行っていること。そして、プレイヤー各人が自らを律してラグビーに打ち込み、高いモティベーションでチーム内の競争に挑んでいること。そうしたことに表れている。今後も、サントリーのさらなる飛躍を期待する。

 最後に、紹介しておきたいプレイヤーとして、サントリーの中靏隆彰選手を挙げてみよう。彼は、西南学院高から早稲田大へと進んだ、福岡市出身のプレイヤーである。身長177cm、体重83kgと恵まれた体格ではないが、豊かなスピードとしなやかなボディバランスで、幾度も相手ディフェンスを切り裂く走りを披露していた。ほとんどのマーク(相対するプレイヤー)が中靏選手より大柄であったが、高いスキルでのタックルで、再三ピンチを救ってきた。今後、日本代表にも選出されるであろうプレイヤーだと確信した。

【河原 清明】

 

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