トランプ氏の北方領土カジノ構想 日米ロ3カ国のベンチャービジネスとなるか(4)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
ところで、70歳という史上最高齢で大統領に就任したトランプ氏ですが、とても70歳には見えません。実は、彼は健康にはとても気を使っています。彼は大統領選挙時、「オバマ・ケア」の廃止に言及しました。オバマ・ケアとは低所得者層でも安く医療ケアを受けられる医療保険制度でしたが、国家財政を破綻させるものとして批判されていました。トランプ氏は「国に頼らず、一人ひとりが自分の健康を管理すべきだ」と提唱しています。
実は、「マインドフルネス」という考えがあります。ハーバード大学の学者達が実践したもので、自分の肉体、精神の状態を自分が確認した上で、健康を管理するという取り組みです。「自分が健康でいられるのは医師ではなく、自身の力である。国民も一人ひとり健康を管理すれば、国の医療保険に頼らずとも生きて行けるのではないか」と、トランプ氏は言っています。彼の実年齢は70歳ですが、気持ち的には50歳です。
選挙期間中はハードスケジュールで、対立候補のヒラリー・クリントンさんは途中で倒れ、彼女の影武者が出てくる騒動も起こりました。その点、トランプ流の健康管理術は2年間に及ぶ過酷な選挙戦で、その効果が立証されたようなものです。更に注目すべきは、彼は知りたい事があれば、直接相手に聞きます。インターネットを使う事は「時間の無駄だ」と言い切るほど。その意味では、体力を使った情報収集に長けています。
最高齢で大統領になりましたが、「好きでなったのだから、2期8年の任期を全うする」と彼は盛んに言っています。彼の側近達は、「彼の言う事とやる事は違うから、彼の言う事を鵜呑みにしない方がいいよ」とよく言いますが、できそうにないことでも公言することで発奮し、あれよあれよという間に実現してしまう。それがトランプ流というわけです。
以前、彼はテレビ番組「The Apprentice」のホストを務めていました。この番組ではさまざまなビジネスプランを持ってきた若者達が、トランプ氏の前でプレゼンを行い、納得すれば彼の会社に雇われ、資金も出ますが、そうでなければ「You're fired!(貴様はクビだ!)」と怒鳴られ追い払われます。
彼の基本的な考えは、直接相手と会って、相手の真意をうかがい、見極めることです。だから自分が興味を抱いた、限られた人物としか会いません。米国のマスコミも彼の実像にアクセスすることはできず、想像の中でしか彼の事を伝えません。その結果、彼に関する報道は、一部のことだけを過激に煽るセンセーショナルなものになってしまいがちです。
対日関係の発言で注目された「在日米軍の撤退」は、ある意味では平和ボケの日本人に対する警鐘になったと思います。彼の発言は「勝つ為には手段を選ばぬ」に尽きると思います。彼は軍需産業、ロッキード・マーティン社に対し「F35は高すぎる」とツイッターでコメントすると、ロッキード社は大幅な値下げに応じました。このようなディール(交渉)のやり方はこれまでの米国の政治家とは違います。
一番効果的な方法で自分の狙った敵を落とす。これは彼の父親から教えられたビジネスのやり方であり、相手の立場を慮る、「win-win」な関係を目指す日本的なやり方とは全く違います。彼のマインドをきちんと踏まえた上で、日本は今後の対米関係を考えるべきでしょう。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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