ガルシアとワッグルの数
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今年のメジャー初戦、マスターズゴルフはスペインのセルヒオ・ガルシアが優勝しました。若いころからゴルフの才能を開花させ「神の子」と言われたガルシアも37歳。これまで何度もメジャータイトルを掴むチャンスはありながら、あと一歩のところで逃してきました。ガルシアの特徴は何といっても切れ味の良いショットにあります。ドライバーからショートアイアンまで、ガルシアほどフィニッシュが決まるゴルファーはそう多くはいません。もう少しショートパットの安定性があればメジャータイトルの数はもっと増えていたでしょう。
そんな稀代のショットメーカーのガルシアですが、彼のゴルフにはもう1つ大きな特徴がありました。それは“ワッグル”の数。ワッグルとはゴルフスイングをする直前に行う動作のことです。手首を上下や左右に何度か動かしたり、脚踏みをして左右の重心バランスを整えたり、アドレスで力が入りすぎた筋肉の緊張を和らげるために行うものとされています。
普通は2~3回のワッグルをした後にバックスイングを始めるのですが、ガルシアはこのワッグルの数が異常なほど多かったのです。ひどいときで16回もワッグルをしたのちにボールを打っていたこともありました。そのせいで自分のプレーリズムを乱された同伴競技者もいたでしょう。ギャラリーから「早く打て!」とヤジを飛ばされたこともありました。テレビ中継を担当するスタッフからも悪評でした。映してもなかなか打たずひたすらワッグルを繰り返すのですから画が持ちません。そのワッグル癖はかつての恋人からの助言でかなり改善されたようです。ただしそれは「みっともないから少なくしなさいよ!」という、助言というよりは命令に近いものだったようですが。そもそもワッグルという動作自体に罪はありません。むしろワッグルはショットを打つ際にとても重要な動きです。先ほども述べたとおりワッグルはアドレス中に体が固くならないように、スムーズにバックスイングを始めるために行います。またワッグルにはスイングする前にクラブの軌道が通る道の確認やヘッドの入射角のイメージ作りなどの大事な要素も入っています。つまりワッグルは小さな素振りのようなものなのです。スイング前にワッグルを行うことでスムーズにイメージ通りのスイングができるようになります。
また、ワッグルのやり方はどんなスイングをしようとしているのかで変わってきます。大きなアークでゆったり振って飛ばしたいならゆっくりとし、鋭くヘッドを効かせて打ちたいのなら素早くします。ワッグルはナイスショットを打つためには欠かせない動作なのです。
ただし昔のガルシアみたいに多くやるのはいただけません。スロープレーに繋がりますし、同伴者に不快な思いをさせることにもなります。ゴルフではたとえスコアが悪くても、心地よく感じるラウンドがあります。それは同伴者と自分のプレーリズムが合っているときです。何度もワッグルをしてなかなかボールを打たないプレーヤーとはリズムが合わせにくく、ストレスを感じるゴルフになります。▼関連リンク
・NBFスポーツ塾<PROFILE>
信川 竜太 (のぶかわ りゅうた)
1971年3月27日生まれ。(株)スリーバーズ代表取締役。スポーツキャスター、DJ、MC、リポーターとしてスポーツを中心にテレビ、ラジオなどで活躍中。その一方で、ゴルフコーチとしても活動している。信川氏がゴルフの道を志したのは福大大濠高校1学年時。卒業後、フロリダ州ブロワードジュニアカレッジに入学(のち、フロリダ・リン ユニバーシティーに編入)。在学中、トーナメントでタイガー・ウッズの上位に入る結果を残した。2006年1月に(社)日本プロゴルフ協会 PGAゴルフティーチングプロの資格を取得。10年10月、福岡市東区多の津にスポーツ塾を開講した。関連キーワード
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