外国人が「日本語」を学ぶ理由~ビジネス日本語とは!(後)
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(公財)日本漢字能力検定協会 執行役員・BJT普及部長 高木純夫氏
ビジネス現場における日本語運用能力を測る出題
――ご担当の「BJTビジネス日本語能力テスト」とはどのようなものですか。
高木 日本語を学習する外国人が挑む検定・テストは大きく分けて2つあります。1つは、(独)国際交流基金と(公財)日本国際教育支援協会の主催する「日本語能力テスト」(JLPT)で、もう1つは、私たち(公財)日本漢字能力検定協会が主催する「BJTビジネス日本語能力テスト」(BJT)です。JLPTが日本語の知識における基礎能力の測定をするのに対し、BJTはビジネス現場における日本語運用能力の測定をします。
一般的にはJLPTは文法・語彙の知識が正しく習得できているかを問う問題が多く“アカデミックジャパニーズ”と呼ばれる一方で、BJTはビジネス現場における日本語運用能力を測る問題が多く“ビジネスジャパニーズ”と呼ばれています。
JLPTは年間約75万名、BJTは年間約7,000名が受験しています。(2016年実績)JLPTは外務省、BJTは、元は経済産業省が関連団体です。日本(19ヵ所)を含む世界14カ国で実施する
――BJTはどのようにしてできたのですか。国内・外の受験はどのように行われているのですか。
高木 BJTは1996 年に(独)日本貿易振興機構(JETRO)が実施を始めたテストで、昨年20周年を迎えました。2009 年から当協会が事業を継承しています。
国内では東京、横浜、名古屋、京都、大阪、福岡、大分など19カ所で実施しています。
海外では中国(瀋陽、北京、西安、南京、上海、杭州、成都、広州、深圳など16カ所)、香港、台湾(台北、台中、高雄)、韓国(ソウル、釜山)、タイ(バンコク)、ベトナム(ハノイ、ホーチミン、ダナン)、マレーシア(クアラルンプール)、インドネシア(ジャカルタ)、ミャンマー(ヤンゴン)などで実施、最近は新たにブラジル、インド、シンガポール、メキシコ、フランスも加わりました。現在は全世界14ヵ国で実施されています。アジアでの日本の立ち位置やプレゼンスが低下
――BJTの普及には、日本の経済力や科学技術力など日本そのものの魅力が大きな影響を与えると聞いています。日本は2000年には国民1人あたりのGDPが世界第4位でしたが、その後下がり続け、2016年は第22位です。BJTの普及に各国を回った率直な感想はいかがですか。
高木 国内、そして東アジア、アセアン諸国、さらにインド、シンガポールなどをかなり回っています。率直に申し上げますと、10年以上前にはアジア諸国の目指す輝く星であった日本は、今アジアの一部に埋没しています。アジアの中の日本の立ち位置、プレゼンスが大きく低下していることを実感しました。
例えば、日本人はアジア諸国の最低賃金ばかりに目を向けています。しかし、どの国も中間所得層は着実に増加、企業の経営者層は高給をとっています。特に東アジアなどは教育熱も高くなっています。アジアはすでに貧乏ではなく日本に追いついています。現地企業の中には、優秀社員に対しては、日本企業より高給の支払いをする会社も珍しくありません。
留学生に寄り添い、教育・就活に取り組む必要
日本、韓国、台湾、中国では少子高齢化が進み、人材の争奪戦が始まっています。現在、アジア諸国から日本に留学する学生はグローバルな資質を備えた有能な人たちです。
そこで、留学生問題(教育の充実~就活の成就)についてもっと真剣に、彼らに寄り添って取り組んでいく必要があると私は思っています。それは、日本の経済力の低下と比例して、どんどん留学生が減って行くことを危惧しているからです。今BJTは留学生の就活や企業での社員育成に使われ出しています。企業によっては立派な成績をとった社員には多額の報奨金を出しています。そのことは、企業にとってプラスになることはもちろんですが、彼・彼女らの生活の安定にもつながっていきます。
今年から、BJTは指定会場にあるコンピュータを使っていつでも受験できるCBT(Computer
Based Testing)方式に切り替わりました。原則毎日が受験日です。従来は2カ月待ちだった結果も受験後すぐに受け取れるようになります。今の若者に海外は憧れと言うよりも日常です
――最後に日本の読者にメッセージをいただけますか。最近は国内から出て行かない若者も多くなったと聞いています。恐らく高木さんの世代からすると隔世の感があると思います。
高木 私も大学などで講演後、彼・彼女らと意見交換をすることがあります。最初は、「日本は安全なので、海外に行きたくない」という声を聞いた時、正直驚きました。
それは、私たちの世代は、海外は“憧れ”で終わっても特に問題はありませんでした。しかし、今の若者にとっては、海外は憧れでなく“日常”だからです。日本に来ている留学生はかなりグローバルでアグレッシブです。逆に心配なのは日本だけに閉じこもっている日本人学生です。私の若い読者に対するメッセージは2つです。1つは、英語の他に何か1つ外国語をマスターして欲しいと思っています。私の場合は中国語でしたが、そのことで可能性が大きく拡がりました。
商社マン生活40年で戦争、内乱、天災を経験
もう1つは、どんどん海外に積極的に出て行って欲しいと思っています。私は商社マン生活40年のうち、20年強の歳月を中国、台湾、イランなどで過ごしました。その間、奇しくも先にお話した、戦争(「イラン・イラク戦争」)の他に、内乱(「天安門事件」)、天災(「台湾中部大地震」)という大きな3つのできごとに遭遇しました。特に、台湾中部大地震の時は台湾伊藤忠の危機管理の責任者でしたので、社員の安全確認に細心の神経を払い、緊張の連続でした。しかし、それも今思えば、私の人生の大切なひとコマとなっています。
最後に、全ての読者の皆さんに、私の好きな井上靖の言葉「努力する人は希望を語り、怠ける人は不満を語る」を贈ります。
――ー本日はありがとうございました。
(了)
【金木 亮憲】<プロフィール>
高木 純夫(たかぎ・すみお)
1949年 神戸生まれ。1973年 神戸大学経営学部卒業後、伊藤忠商事に入社。75年中国語研修生として台湾に留学。87年北京事務所 機械部長、93年~95年 東京本社(中国化工プロジェクト室長~アジア・中国・大洋州室 室長代行)99年台湾伊藤忠商事有限公司 副総経理(台北)、2002年NGK環保陶瓷有限公司 副総経理(蘇州)、04年伊藤忠商事 瀋陽事務所長兼哈爾濱事務所長(瀋陽)、11年帰国して(公社)関西経済連合会国際部に出向。13年に(公財)日本漢字能力検定協会に転身して現在に至る。関連記事
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