生鮮特化型のスーパーを目指し悪戦苦闘(後)~(株)新鮮マーケット
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(株)新鮮マーケット 木本 泰雄 代表取締役社長
リテールパートナーズ傘下の(株)マルミヤストアが事実上の救済合併を行い、再出発した(株)新鮮マーケット。「新鮮市場」の(株)オーケーから店舗を承継し、昨年7月の稼働から1年が経過した。これまでの取り組みとこれからについてうかがった。
――リテールパートナーズの子会社の事業会社という立ち位置ですが、リテール側から何か要請されることはありますか?
木本 それはありません。独立性が保たれていますね。仮に何かをするから許可をもらわないといけないこともありません。グループのなかでもそうですが、業態がそれぞれ違うから独自性が保たれている側面もあるかと思います。我々の店舗の売場面積は300~1,000m2と小型店舗が多いので、いかにして特長を出して行くか。売場における生鮮の比率は60%以上ありますね。多いお店では64~65%あります。以前と比べて上がったのかもしれないですね。
――あとは、生鮮の良さをどのようにして消費者に知っていただくかですね?
木本 そうですね。強いて言えば企画を重視してきまして、今、少し芽が出てきたかと思います。多くのスーパーは客足の落ち込む火曜日に安売りイベントなどを行いますが、あえて火曜の激戦にチャレンジし、弊社では95円市場を行っています。前も企画はよくやっていたようですが、うまくいかなかったようです。ですから我々は、より力を入れて取り組みました。すると昨年7月の稼働時と比べて、95円市場の企画は前年対比150%で伸びています。コンスタントに結果が出せるようになりました。
――企画がうまく行った要因は、どのような点にあると思われますか?
木本 毎月29日の「肉の日」はオーケーさんのころから非常に集客力がある企画でした。10日は「魚魚(とと)の日」をテナントさんに協力をしていただいております。15日は「シルバー感謝デー」として、お年寄りの方は会員カードを用いて8%引きにし、前年比120~130%で推移していますね。さまざまな企画を行う賜物なのかもしれません。6月1日よりラジオCMを取り入れたほか、7月中にはホームページも立ち上げます。今まで予算がなくて取り組むことができなかったことに、取り組めるようになりました。
社長になって理解できる宮野氏の言葉
――他のグループ店との連携はどのようにされていますか?
木本 4店舗を承継したアタックスマートは「新鮮市場AX」として、新鮮市場とは差別化した売場をつくっていました。同店はアタックスに生鮮売場が入った店舗となります。生鮮の売場が半分になり、グロサリーがその分増えたりしたのですが、消費者にとっては何がどう違うのかよくわかりにくかったのかもしれません。そのため日田の花月の店舗は4月1日、アタックスにリニューアルしました。売上高は順調に伸びているようです。
――最近は、ディスカウントストアやドラッグストアなども生鮮を取り扱うようになり、本当に業界の垣根がなくなったような気がしますね。
木本 それ以上に、我々が生鮮のことを勉強しないと将来取り残されるという危機感は、常に持っています。それを実現するためにも人材教育に力を入れているのですが、業界全体の課題でもある人手不足は、とても深刻な問題ですね。
――それは喫緊の課題ですね。そのためには魅力的な会社、店舗にする努力を重ねられているのだと思います。現在、さまざまな努力をされていると思うのですが、今後、どのような計画をお考えでしょうか?
木本 3カ年計画で売上100億円、経常利益1.5%を目指しています。改装が一巡すれば新店を出したいですね。1,000平方メートルのモデル店をつくりたいと考えています。そのためには、原点に帰ることが必要だと。生鮮特化型の原点は、当日仕入当日売切りです。消費者の方に、冷蔵庫に買い置きしなくてもよいですよ、という店にしなければなりません。原点に戻るうえでどのようにすればよいか、まずはこれを理解することが大切ではないでしょうか。従業員は生鮮特化型の特性を理解し、マルミヤのスーパーの特性を理解する。これをうまくミックスできれば、強みになるはずです。
――競合が多くて勝ち残るのは本当に大変だと思います。木本社長はマルミヤの創業者の宮野会長から薫陶を受けられたと思いますが、社長に就任されてさまざまな厳しい局面に直面されると思います。昔の経験が今生きているという点があれば、教えてください。
木本 グローバルな物の見方ですかね。たとえば私は開発などを行っていたので、店舗を改装するときは、極力投資を抑え、店の負担を軽くしなさいと言われてきました。店の負担を軽くすることは、会社の負担を軽くすることにつながります。店の負担を軽くして、利益を残し、会社の自己資本を手厚くすることで会社を強くする考え方です。店の負担を軽くするためには、改装に莫大な費用をかけることはできませんが、お客さまに新しいお店になったことを理解していただくためには、売場や商品構成を変えていくしかありません。お金をかけずに頭を使って変えていく。そのためには、お客さまが求めていることを理解して、品ぞろえをしていくことだと思います。たとえば、若い主婦層の7割が求めている商品を取りそろえれば、残りの3割はその店の特長や文化を生かす。お客さまの声に聞き耳を立て、それを理解することがとても大事だと思います。
――それがあるから、厳しい局面でも明るく前向きに仕事に取り組めるのですね。
木本 「我々はもう失うものはない。思い切ってやっていこう」とスタッフには常に声をかけています。運営する本部は、今後もスタッフに対してさまざまな情報を開示していきます。会社をスケルトンにすることで、従業員のやる気や積極性を引っ張っていくことができればと考えています。
(了)
6月1日に改装した南大分店は、青果売場の前に入口を移動した。店内に入ると広々とした青果売場が目に飛び込んでくる。朝採れのキャベツや地場の農家が生産した野菜などが陳列され、青果の取り扱いの豊富さに驚く。以前は青果の種類が少なくてグロサリーを並べていた棚にも青果が並べられ、消費者の購買意欲を掻き立てる。青果は、改装前と比べて売上構成比が14%から16%に増えたとのこと。内外装に重きを置くのではなく、売場を変え、見せ方を変えるということなのだろう。予算がないから頭を使うことは、まさに現場で働くスタッフの英知を結集することである。そこが大手とは大きく異なる点である。ディスカウントストアやドラッグストアなどが積極出店攻勢をかけるなか、今後、どのようにして差別化を図っていくか。今後が楽しみなスーパーであることは間違いなさそうだ。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:木本 泰雄
所在地:大分市大分流通団地2-2-2
設 立:2016年4月
資本金:5,000万円
売上高:(17/2)約56億円(実働8カ月)<プロフィール>
木本 泰雄(きもと・やすお)
1953年7月23日大分県生まれ。95年6月(株)マルミヤストア入社。2005年11月マルミヤストア執行役員となり、10年8月取締役店舗運営部長・開発部長を経て、16年4月(株)新鮮マーケット代表取締役社長に就任した。関連キーワード
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