2024年11月22日( 金 )

シーサイドももちの土地をめぐる、所有権確認訴訟の行方は?

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 1989年に開催されたアジア太平洋博覧会にともない開発が進められた、埋め立てウォーターフロント開発地区「シーサイドももち」。ここには福岡タワーをはじめ、福岡市総合図書館、福岡市博物館や、RKB毎日放送・テレビ西日本の社屋、情報関連企業や情報技術研究開発機関、高層ビルやマンションが立ち並んでいる。
 このシーサイドももちの一角、百道浜2丁目の3,968m2の土地をめぐって現在、福岡市が裁判を抱えている。場所は、ちょうど福岡タワーの西側真横に位置する土地で、現在は駐車場として利用されている。現在、同地の所有者となっているのは、百道浜プロパティ特定目的会社(東京都港区)だ。この土地をめぐって百道浜プロパティが福岡市を相手取り、所有権の確認を行う訴訟を提起。現在も係争中だ。

 発端は、2006年10月23日付で福岡市が「シーサイドももち開発計画公募要綱」に基づき公募を行ったことによるもの。この公募に応募した業者のうち、SBIホールディングス(株)が買主に決定。07年5月に土地売買契約を締結した。その後、SBIホールディングスは事業会社として、百道浜プロパティを設立。同年7月に、百道浜プロパティに買主を移転した。開発の指定期日は土地の引き渡しから3年以内とされ、指定期間は所有権移転から10年間。同地に対しては、10年間の買戻特約が設定された。
 その後、同地は百道浜プロパティの主導のもとで、シーサイドの立地を生かした高質ホテルとしての開発が行われるはずだった。だがその後、開発計画は何度も変更・修正を余儀なくされ、現在も依然として駐車場としての利用がなされているのみ。ホテルの姿は、影も形もない。これはいったい、どうしたことだろうか――。

 実は、同地においては契約の締結からこれまでの間に、3度にわたって指定期日延長が行われている。

 1度目は、百道浜プロパティがホテル事業を行ううえで、オペレーターとしてメドをつけていた業者が、親会社の民事再生にともない履行不能になったため、10年7月31日付で福岡市に対して、13年3月31日までの指定期日延長願を提出したもの。ただし、このとき百道浜プロパティは、今後の事業の見通しが立たないため、違約金を負担してでも本件事業から撤退すべきと判断し、福岡市に対し撤退の申し入れも行っていた。ところが、福岡市の担当者からは「何年かけても構わないので、事業化に取り組んでほしい」との要請があったため、百道浜プロパティは事業撤退を諦め、指定期日延長とともに、再度ホテル事業での開発に向けて動くことになった。
 2度目は、1度目の期日延長後、百道浜プロパティはホテルオペレーターを模索したものの、ちょうどリーマン・ショック後の不動産市況の低迷もあって、思うように確保できなかった。そのため12年7月3日付で、16年3月31日までの指定期日延長願を提出。このときも福岡市から承認を得ていた。
 3度目は15年の春ごろ。このときも前回のときと同様に、17年3月31日まで指定期日延長願を提出し、福岡市の承認を得た。

 こうして3度にわたって指定期日の延長を繰り返してきた同地におけるホテル開発だが、今年に入って福岡市の態度が急変した。福岡市の言い分としては、契約締結から10年が経過しようというのに開発の進展が見られない――というもの。今年3月に福岡市から百道浜プロパティに対して「福岡タワー西側用地におけるホテル建設について」という通知が送られ、その後4月には同じく福岡市から百道浜プロパティに「土地売買契約の解除」が告げられた。

 とはいえ、これまで2回にわたって百道浜プロパティ側が撤退申し入れを行うも、そのたびに「何年かけても構わないので、事業化に取り組んでほしい」との要請を行ってきたのは福岡市だ。
 また、今年3月時点での打ち合わせで、福岡市は百道浜プロパティに対し、(1)「ホテル開発に関して、ゼネコン業者との間で設計施工契約締結」、(2)「金融機関からの融資確約書の取得」、(3)「スポンサーによる連帯保証」の3つを要請。急な要請ではあったが、百道浜プロパティ側はこれらすべてに応じた。にもかかわらず、福岡市は一方的に先の通知の送付および土地売買契約の解除を行ったのだ。

 この対応に納得のいかない百道浜プロパティは、今年6月に福岡市に対して百道浜2丁目の土地に関する所有権を主張する訴訟を提起。現在、係争中という流れである。
 福岡市側の態度が急変した理由や、市側の要請を満たしたにも関わらず、百道浜プロパティに対して土地売買契約の解除を行った強硬な姿勢など、不可解な点は多い。どちらの言い分が正しいのか、まずは裁判の行方を見守りたい。

【坂田 憲治】

 

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