2024年11月27日( 水 )

北朝鮮問題で独自の強みを発揮するプーチン大統領(後編)

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、9月22日付の記事を紹介する。


 習近平は2013年、モスクワ大学の講演で次のように述べている。

 「中ロ関係は世界で最も重要な2国関係であり、しかも最も良好な大国関係である。双方の20年以上の絶えまない努力によって両国は全面的な戦略協力パートナーシップを築いてきた。歴史が残した国境問題を徹底的に解決し、中ロ善隣友好協力条約に調印し、長期的な発展に強固な基礎を固めた。中ロ関係は終始、中国外交の優先方向である」。これ以上ないと思えるような中ロ関係礼賛の言葉のオンパレードだった。

 プーチン大統領も「ロシアは繁栄かつ安定した中国を必要としている。一方、中国も強大かつ成功したロシアを必要としている」と阿吽の呼吸で応えている。更に、プーチン曰く「中国の声は世界に響き渡っている。我々はそれを歓迎する。なぜなら、平等な国際社会を作るという視点を共有しているからだ」。

 しかも、注目すべきは、その協力のあり方をアピールする際に、共通の敵としての「日本」を持ち出すという「歴史カード」を切っていることである。何かと言えば、抗日戦争における旧ソ連のパイロット、クリシェンコ氏のことだ。日本では無名の存在だが、彼は中国軍兵士と共に戦い、戦死した軍人に他ならない。彼の残した言葉を今更のごとく繰り返すのである。

 曰く「私はわが国の災禍を体験するかのように、中国の働く人々が今被っている災難を体験している」。習近平はこのロシア人パイロットのことを「中国人は英雄として忘れていない」と持ち上げる。その上で、「中国人の親子が半世紀にわたり彼の墓を守り続けている」と紹介しているのである。

 こうした中ロの政治的蜜月関係や国民レベルでの交流は安全保障の分野にも広がりを見せている。2015年には、地中海はもとより、ウラジオストク周辺の日本海においても、中国とロシアの共同軍事演習を実施。その背景には、この2人の指導者の強い軍事力信奉傾向と、アメリカ主導の戦後体制に挑戦し、新たな政治、経済の仕組みを形成しようとする強い意志が隠されている。

 そのため、特に中国は日本やアメリカが主たる出資者となって誕生させたアジア開発銀行(ADB)や、戦後世界の金融体制を形成してきた世界銀行や国際通貨基金(IMF)に代わる、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)の影響力拡大に余念がない。加えて、現代版の陸や海のシルクロード計画にも着手。いわゆる「一帯一路計画」である。はたまた「サイバー空間におけるシルクロード」計画も提唱しているほどである。これらも「シルクロード」という歴史的遺産に新たな価値を吹き込もうとする中国的なアプローチに他ならない。

 他方、ロシアは「ユーラシア同盟」を提唱し、ロシアの極東やシベリア方面の開発に、中国も巻き込み、海外からかつてない規模での投資も呼び込もうと躍起になっている。プーチンは「ロシア極東は協力したい人々にすべて開放する」と語気を強める。実はロシアの極東地域は中国との国境線地帯を中心に石油、天然ガス、石炭、木材が豊富に眠っている地域である。また、ロシアの漁業資源の7割を占めているわけで、まさに「資源の宝庫」そのものである。

 但し、それだけ資源には恵まれているが、開発に従事する人がいないのが悩ましいところであろう。何しろ、極東地域の人口はロシア全体の5%以下で、常に労働力が不足している。国内の他の地域からも優遇策で労働力を確保しようと工夫をしているが、思うような成果は得られていない。そのため、中国、モンゴル、韓国、北朝鮮といった国々にも働きかけを強め、労働力の確保に必死で取り組んでいるわけだ。

※続きは9月22日のメルマガ版「世界最新トレンドとビジネスチャンス」第82回「北朝鮮問題で独自の強みを発揮するプーチン大統領(後編)」で。


著者:浜田和幸
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