重く圧し掛かるTHADD経済報復の余波(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
数年前までは韓国では中国の話で持ち切りであった。時間がかかるばかりで何も決まらない日本よりは、中国とビジネスをしたほうがこれから儲かるとか。実際中国にマスクパックなどを輸出し、売上高数十億ウォン規模の会社が一夜にして数百億ウォンの売上高を達成したなどの話は実に多くあった。数年前から日本では中国バブルが崩壊するかもしれないと警戒し、日本は中国への投資を減らして行く中で、韓国だけは逆に中国への投資を増やしていった。それから、中国の経済が豊かになるにつれて、韓国を訪れる中国人観光客はどんどん増え、中国人観光客1千万人時代の到来が予見されていた。済州島、明洞など韓国の有名観光スポットは中国人観光客であふれ、免税店などでは、爆買いをする中国人の応対に追われ、韓国人は相手にもされない珍しい風景が見られるようになった。筆者は数十年ぶりに仕事で済州島を訪問し、予想外の風景に済州島の空港でびっくりしたことを今でも記憶に鮮明に覚えている。空港は中国人観光客でごった返し、聞えてくるのは中国語ばかりであった。
一瞬ここは中国ではないかと錯覚を起こすくらい、空港は中国人で埋め尽くされていた。中国人観光客の影響で、ホテルは空室がなく、私は泊まるところを探すのに大変苦労した。韓国は中国との経済関係が深まり、ピーク時には韓国輸出の4分の1を中国への輸出で占めるようになっていた。内需が冷え込んでいる韓国経済にとって、中国人観光客はありがたい存在で、韓国経済に活力を与えてくれた。中国観光客が増えて、ホテルが足りなくなると、韓国政府は規制を緩和し、一般ビルを改造してホテルとして営業できるように、法律を改正したほどであった。それだけではない。中国から美容整形手術をしに韓国に来る中国人観光客の需要を満たすため、江南には多くの美容整形外科が林立するようになった。
ところが、韓国政府が高高度防衛ミサイル(THADD)の配備を決めたことによって、このような状況は一変している。中国政府は公式には否定しているが、韓国への団体旅行などを規制し、その影響はじわじわと韓国経済に陰を落としている。最初は中国の経済報復はそれほど長期化するものではなく、両国の関係はすぐ元に戻るだろうと観測する専門家もいた。しかし、そのような予想とは裏腹に、韓国企業に対する中国の経済報復は長期化している。それに中国の経済報復はいつ終わるかも定かでない。
まず、THADDミサイル配備後の韓国国内の状況を見てみよう。中国人観光客でごった返していた済州島の空港は、閑散としている。中国人観光客が激減したことによって、免税店などは赤字が続き、店をたたむところも現れて始めている。明洞などでも同じような現象が起きている。中国語表示の看板だけが目立っていて、中国人観光客が以前のように道にあふれているような光景は見られない。今年7月の中国人観光客の韓国訪問者数は前年同期に比べ、70%も減少している。中国人観光客は今年の3月には40%減少、4月には66%減少、5月には64.1%減少を記録している。中国人観光客で商売が繁盛していた免税店は、売上の急激な減少で大きなダメージを受けている。免税店だけでなく、ホテル、旅行会社など関連産業は打開策を模索しているものの、これといった解決策は見つかっていない。中国人観光客の代わりに、東南アジアからの韓国訪問を積極的に推進したが、北朝鮮の核の脅威で朝鮮半島に緊張が高まることによって、それもうまく行っていない。
以上見てきたように中国の経済報復で韓国経済はじわじわと窮地に陥っている。(つづく)
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